生物心理社会モデル
biopsychosocial model
解説:池田光穂
最もバランスのとれた医療の研 究は、人間の存在を「生物・心理・社会性」(Bio-Psycho-Sociality)として統合的に見ようとする立場である——この理念はどんな医学 関係の授業でもリップサービスのように語られるが、それを実際の研究に援用する人は驚くほど少ない。人間の身体の成り立ちは、生物(医学)・心理・社会的 な要素がそれぞれ分離しているのではなく、相互に作用し、かつ総合的な性質をもつとみるのである。したがって、人間の不調や病気は、生物・心理・社会の複 合的な問題からなり、それぞれの側面における対処を試みるだけでなく総合的に人間をみる必要がある[→出典]。
生物心理社会モデル(biopsychosocial model)は、ジョージ・エンゲル(George Engel, M.D. ,1913–1999)が1977年に論文:The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine, Science, New Series, Vol. 196, No. 4286 (Apr. 8, 1977), 129-136. で提唱したモデルで、生物医学(Biomedicine)モデルになり代わる、新しい医学観の提唱である。ただし、上述の文献では、生物医学モデルの批判 が中心となり、全体論的(holistic)ないしは一般システム論(general system theory, L. von Bertalanffy, Problems of Life (Wiley, New York, 1952); General Systems Theory(Braziller, New York, 1968).)を含意するものに留まっている。当該の論文の最後は、以下のような文章で締めくくられている。
The proposed biopsychosocial model provides a blueprint for research, a framework for teaching, and a design for action in the real world of health care. Whether it is useful or not remains to be seen. But the answer will not be forthcoming if conditions are not provided to do so. In a free society, outcome will depend upon those who have the courage to try new paths and the wisdom to provide the necessary support (Engel 1977:135)./提案されている生物心理社会的モデルは、研究のための青写真、教育のためのフレームワーク、そしてヘルスケアの現実世界での行動の ためのデザインを提供する。それが役に立つかどうかはまだわからない。しかし、そのための条件が整わなければ、答えは出てこないのだ。自由な社会では、新 しい道に挑戦する勇気と、それを支える知恵を持った人たちが結果を出すことになろう。
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