池田光穂
シティズンシップ(citizenship)とは、
主権国家における法的成員や国民国家に帰属する者としてのメンバーの位置づけのことをさす。市民であること、市民の資格(権利と義務)などを含意するの
で、市民性・市民権とも翻訳可能である。シティズンシップ=市民性は、法的に付与されたり、政令等を通して規定されるために、各人が国民国家に帰属しているという
意識性や、その表象を表現するナショナリティ(国民であること、国籍)よりも、さらに法的権利と法的義務による〈付与性〉の意味が強い。
"Citizenship is
the status of a person recognized under the custom or law as being a
legal member of a sovereign state or belonging to a nation. A person
may have multiple citizenships and a person who does not have
citizenship of any state is said to be stateless." -Wiki, Citizenship.
カースルズとミラー
(2011:59-60)によると、シティズンシップには、次の5つのモデルがあるという。
- 1.帝国モデル:帝国の版図にある臣民が無条件に包摂されること。:例)大英帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国
- 2.民俗(フォーク)モデル、あるいは民族(エスニック)モデル:特定のエスニシティと出自を基準にして、それ以外のものを排除するモデル:例)日本、2000年までのドイツ
- 3.共和制モデル(→「国民国家」における「同化主義」を採用する):在住の人でも新参者(移民)でも、政治的秩序や国民文化を受容する宣誓をもとに帰属を可能にするもの:例)アメリカ合衆国、フランス共和国
- 4.多文化モデル(→「多文化主義」):同一国家内に多様な民族や複数の文化があり、それらの自律的共存を理念とするモデル:1970-1980年代のカナダ、オーストラリアなどで採用された。
- 5.トランスナショナルモデル:複合的で多焦点的な帰属アイデンティティをもつ。多国籍企業の一流エリートや国際的な移動をする技術者などの中産階級にみられる。(→「トランスナショナリティ」)
■グローバル市民について(On
Professors James Tully's work, "Global Citizenship," 2014)
ジェームズ・タリー教授の『グローバル市民(On global citizenship)』(2014)は、教授の同名
の論文と、応答という7本の討論者による論文、そして、最後にいま一度タリー教授が応答するという構成になっている。それぞれの執筆者を掲げておこう
- On Global Citizenship James Tully
【Lead Essay】
- The Authority of Civic Citizens
Anthony Simon Laden
- James Tully’s Agonistic Realism
Bonnie Honig and Marc Stears
- Pictures of Democratic Engagement:
Claim-Making, Citizenization and the Ethos of Democracy Aletta J. Norval
- To Act Otherwise: Agonistic
Republicanism and Global Citizenship Duncan Bell
- Civil Disobedience as a Practice of
Civic Freedom Robin Celikates
- Modern versus Diverse Citizenship:
Historical and Ideal Theory Perspectives Andrew Mason
- Instituting Civic Citizenship Adam
Dunn and David Owen
- On Global Citizenship: Replies to
Interlocutors James Tully 【Reply】
リンク
文献
- On global citizenship : James Tully in dialogue / James Tully,
Bloomsbury Academic (2014)
- スキナー、クウェンティン(1999)『思想史とはなにか』半澤高麿・加藤節 編訳、岩波書店(抄訳・初出:Meaning and
context : Quentin Skinner and his critics / edited and introduced by
James Tully, Cambridge : Polity , 1988.)