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サイバー・ロジスティクス

Cyber logistics


池田光穂

サイバーロジスティクス(Cyber logistics)は(サイバースペース上におい て)「調査研究をおこなっている〈現場 in situ〉に情報資源すなわち書籍や論文や参考資料、ときには研究維持のための 食糧や栄養剤、さらにはリラックスのための音楽[配信]、さらには情報その ものであるスタッフなどを送り、逆に〈現場〉からすでに利用した後の書籍や論文や参考資料を引き取り、それを必要とするところに再配分するためのストッ ク・プールを用意し、〈現場〉でおこなう調査研究を効果的に継続させるための補給手段ないしは実践行為、ひいては、それらについて調査研究する学問であ る」(→出典「情報ロジスティクス」)。情報ロジスティクス(Information logistics)ともいう。

ロジスティクス(logistics) とは、もともと軍事用語で兵站(へいたん)のことである。つまり、戦争をおこなっている前線に武器や兵士や食糧、医 療品やスタッフなどを送り、逆に前線から疲弊した兵士や戦えなくなった傷病兵さらには、降伏した敵の兵士などを輸送し、前線でおこなう戦争を効果的に継続 させるための補給手段のことである。 近年ではロジスティクスの見直しがすすみ、オックスフォード辞典だと「多くの人間と装備(装置)が関与する場合に、複雑な作戦(計画)を成功するために必 要とされる実際的な機構(組織)」であり、米陸軍用語辞典では「物資の取得(調 達)・貯蔵、配分、輸送など、人員の移動・輸送・治療など、施設の建設・維 持・解体処分など、さらにそのための労役(役務)の供給などに関する業務全般を指す」といわれている(ともに江畑謙介による訳:2008: 11-12)。 ロジスティクスは、効率よく物資の流通(=物流 physical distribution)を管理運営する学問であるので、この研究はやがて、平和時における物資の流通の研究にスピン・オン(=民生に転用される)する ことになった。

ロジスティクスは、物流を効率よく的確に 運用する学問であるので、その発想の基本は「ぶつ・モノ=物質」の移動に関する学問であるといっても過言ではな い。そこにシステム論的アプローチが加味されたものである。 したがって、ロジスティクスにおける「情報」とは、物流のために不可欠なコミュニケーションテクノロジーの問題を主にさすのである。例えば、コンビニに効 率よく商品を配送するためのPOS(point of sales)システムなどである。 それに対して、物質性を持ち得ない情報のみを取り扱うと連想される情報ロジスティクスは、物質というものと「切り離して」ほんとうにロジスティクスたる考 察対象になりえるのだろうか?

サイバーロジスティクスの学としての重要 性を主張する人の間には、

1. 情報もケーブル、電波などを介して 「流通・分配される」

2. 分配された情報は、それ自身で物質的な意味を発揮し始める (=例えば、POSにおける情報の有用性は、それによって商品が効率的に売れる、つまり利潤があがるという唯物的な波及効果を生む)

という2点を強調する。しかし、それは情 報ロジスティクスという新しい学問を示唆するのではなく——システムエンジニア系の会社などは、この用語を流行語 のように使ってその雰囲気を消費者にあおり立てるが研究者に対しては学問的インスパイアーさせるものは何もない——従来のロジスティクスの情報論的な知見 による内的改革以上の示唆を与えない。

したがって、私がサイバーロジスティクス の名前で言わんとすることは、物質性の根拠をもつことをそれほど重要視しない、純粋な——この用語が気に入らなけ れば 単純と言いかえてもよい——情報の流通の合理的戦略的な運用についての学問をことをしめすのである。 そのような学問や、その存在を証明する事実はあるだろうか?サイバーロジスティクスという大層なジャーゴンを弄しなくても、それは情報学やインターネット 学——通信のためにバケツリレーという比喩を使うことを典型例と して示唆する——のことではないのか? 「電気通信に関する諸学」そのものがサイバーロジスティクスなのだと言ってしまえそうだ。

しかし、私がわざわざそのようなケッタイ な用語ほうをあえて主張するのは、サイバーロジスティクスとは、水道管から喉の乾きを癒す人がいるように、さまざ まな 理由でインターネットという水道管から流れてくる情報に、精神の癒しを得たり、それにもとづいて「知的 生産」——これもサイバーロジスティクスにおける大いな るメタファーである——をおこない、業績をあげ、職場でのポジションを上昇させ、最終的に給料を上げる、よりよい職場にヘッドハントされる、情報労働人間 (ホモ・インフォ=ファーベル)に必要不可欠な学問であると言いたいのである。 知的生産、そう梅棹忠夫(『知的生産の技術』)のそれが、何か鉄工所の燻銀のような板金職人を連想させるのに対して、サイバーロジスティクスは、鉄工所の 中で 板金の金型をコンピュターに造らせようとして、苦心をしてソフトウェア開発において、金型の素材や圧力をかけたときの実験をシュミレーションでおこなうた めのデータをインターネットで集めているような現代の職人を連想するのである。すくなくとも私は・・・。(→「問題にもとづく学習」「IoT(アイオー ティー)とは?」) そのような情報ロジスティクス(Information Logistics)を私は構想するのである(→「情報ロジスティクス入門」より)。

A warehouse implementing a pallet rack storage system/ Logistics Specialist inventories supplies in a storeroom aboard the aircraft carrier USS George H.W. Bush/Punjab Regiment uses mules for carrying cargo in Burma during WWII. Animals have been used for logistic purposes by different people throughout history; the Roman army in particular preferred mules over donkeys for their moving capacity./Punjab Regiment uses mules for carrying cargo in Burma during WWII. Animals have been used for logistic purposes by different people throughout history; the Roman army in particular preferred mules over donkeys for their moving capacity

【上掲の写真の説明】パレットラックの保 管システムを導入した倉庫/空母ジョージ・H・W・ブッシュの倉庫で物資の棚卸しをするロジスティクスのスペシャリスト/第二次世界大戦中、ビルマでラバ を使って貨物を運んだパンジャブ連隊。特にローマ軍は、その移動能力の高さから、ロバよりもラバを好んで使った。動物は歴史を通じて様々な人々によって物 流目的で使用されてきた。特にローマ軍は、その移動能力からロバよりもラバを好んだ。

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