Social Innovation
大阪大学は、異なる領域の人と知識をつなぎ、社会課題の解決や新たな価値の創造に向けて専門的知識を役立てることのできる高度汎用力(課題発見
力、課題解決力、社会実践力)を備えた人材を養成するために、2016年7月にCO
デザインセンター(Center for the Study of Co*Design)[読み方は「こ・でざいん・せんたー」
である]を設立した。学部生・大学院生の社会への幅広い関心と課題発見のための多様なスキルを学ぶ横断型高度教養・高度汎用力基礎教育プログラム「コミュ
ニケーションデザイン科目」、Problem-Based Learning
(PBL)も含む高度汎用力発展科目「COデザイン科目」からなるカリキュラムの開発・実施を段階的に進めている。社会イノベーション部門は、課題解決の具体化に向けた産官学民のあいだの共創と
協奏をつくりだすための研究教育を探究するセクションである。とりわけ2018(平成29)年度からは、部門全体が一丸となって「SDGs達成に向けた高度汎用力教育開発」に取
り組んでいる。
「では、ソーシャル・イノベーションとはなにか?」。
それについては、まず、いきなり結論を述べて、僕が、どうして、そのような結論にいたったのかについて、説明しよう!
結論はこうである:ソーシャル・イノベーションすなわち社会イノベー ションは、デザイン可能であり、それが実現されるためには、さまざまな実証実験が試みられ、また、安心安全な管理技術 として確立され、そして、人びとが実際に使うことで、以前よりも「びっ くりし、わく わくするような新しい出来事」だと認知されるようになれば、私たちはそれを社会イノベーションと呼んでもよいだろうと言うことだ。
では、その結論にいたった道を説明しよう。
ソーシャル・イノベーションとは社会的イノベーションのことでもある。そのために、まず「イノベーション」の意味から繙いてみよう!
イノベーションはしばしば技術刷新や技術革新と呼ばれることが多 いが、こ れは間違いである。イノベーションは単に「刷新」や「革新」だけで よく、技術だけに限定しなくてもよい。現代用語としてのイノベーションとは「事前に 予想が不可能な、その時 代の社会の人たちに驚きをもたらす、実現可能な事態や概念のこと」である(→「イ ノベーション・デザイン」)。したがってイノベーションに適切な訳語をつけるとすると「びっくりするような新しい出来事」である。あるいは「びっくりし、わくわくするような新しい出来事」である。
英語のイノベーションの初出の事例は1553年だが、フランスでは1297年に登場。これがイノベーションの語源(イノベーション=イノ ベートする行為)になっている。
innovation (ɪnəʊˈveɪʃən)
: [ad. L. innovātiōn-em, n. of action f. innovāre to innovate: cf. F. innovation (1297 in
Hatzfeld-Darmesterの言語学事典よると.).] (一番最初の意義定義)1. a.1.a The action of
innovating; the introduction of novelties; the alteration of what is
established by the introduction of new elements or forms. †Formerly
const. of (the thing altered or introduced). (英語での初出とその引用文例)1553 Brende
Q. Curtius 221 b, Perdicas, whose ambicious mynde desirous of
innouation, was (he sayde) to be preuented in time.
ちなみ、イノベートとは、イン+ノヴァーレ(「新しく」「すること」:意味の配置は逆です)[f. L. innovāt-, ppl. stem of innovāre to renew, alter, f. in- (in-2) + novāre to make new, f. novus new. Cf. F. innover (1322 in Godef. Compl.).] 。
それでは、お待ちかねの、ソーシャル・イノベーション(社会イノベーション)の定義である。
ウィキのソーシャル・イノベーションは、こうなっている。
"Social innovations are new strategies, concepts, ideas and organizations that meet the social needs of different elements which can be from working conditions and education to community development and health — they extend and strengthen civil society. Social innovation includes the social processes of innovation, such as open source methods and techniques and also the innovations which have a social purpose — like online volunteering, microcredit, or distance learning."
つまり、こういうことである。ソーシャル・イノベー ションは、社会の刷新(刷 新)という意味である。より具体的には、社会のさまざまな関係性や、先行する社会問題に対して、それまでなかった独自の視点と実践原理を通して、社会の関 係性の変化や問題の解決にむけた社会のあり方の編成をもたらすことをいう。
スタンフォード・ビジネス・スクールの、ソーシャル・イノベーショ ンはSoule, Malhotra, Clavierを引用して次のようにしている。
“Social innovation is the process of developing and deploying effective solutions to challenging and often systemic social and environmental issues in support of social progress....
ソーシャル・イノベーションは、「チャレンジングな効果的解決への開発や展開のプロセスのことであり、社会の進歩を支えるシステム的な社会的お よび環境的諸課題のことである」と。
それに引き続き、そうではないという内容を示し、ソリューションがなにをもって求められるのかについて書いている。
“Social innovation is not the prerogative or privilege of any
organizational form or legal structure. Solutions often require the
active collaboration of constituents across government, business, and
the nonprofit world.” —Soule, Malhotra,
Clavier
ソーシャル・イノベーションは「どんな組織的形態でも法的構造の特権ないしは優先事項でもない。解決というものは、政府・ビジネス・非営利団体
の世界の連続的関係のなかの活動的な協働というものが必要なのだからである」とのべている。
***
さて、このソーシャル・イノベーションは、別の言い方をすると社会イノベーションということになる。先に、イノベーションとは「びっくりするような新しい出来事」あるいは「びっくりし、わくわくするような新しい出来事」であると新しい定義を与えておい た。したがって、ソーシャル・イノベーションあるいは社会イノベーションとは「びっ くりするような新しい社会的出来事」である。端的にいって、エスカレーターや動く歩道は「びっくりするような新しい社会的出来事」であった。自動改札システムや、さらに は非接触の自動改札システムも「びっくりするような新しい社会的出来事」 であった。
ちなみに、僕(池田)は、このことを社会イノベーションという用語を、企業活動のコンセプトデザインにされている「日立製作所 社会イノベーション事業推進本部」に直接、ウェブとメールで聞いてみた!(2017年5月)。御親切なことに同社から連絡をいただき、社会イノベーション を定義していると教えてもらった。ここでは公開することができないが、簡潔で素敵な定義であった。ちなみに、同社によると、より公開された形で の「社会イノベーションの表現」は次のように公式に表現されているので、そちらのほうを使ってほしいとのことだった(ちなみに日立では「日立コンサルティ ング」 が定義する「社 会イノベーション」などもある)。
●ソーシャル・イノベーションのアイディア集
以下は、ソーシャル・イノベーションのアイディア集です(順不同)。
ソーシャルデザインとは、文字通り「社会」を「つくること/デザインすること」です(Our "social-design" is
"design for the good
society")。大阪大学の池田光穂(垂水源之介)が、中学生以上の子どもたちにもわかるように、説明します。上映時間18分チョットです!!!
「びっくりし、わくわくするような新しい出来事」 ことは、技術革新によって成し遂げられ、また、それによるそれまでの課題に解決が与えられ、いわゆる問題は解決されたり、また、軽減されたり、コントロー ルされてきた。もちろん、それがすべて(=αでありΩであるわけ)ではない。
結論を急ごう。
ソーシャル・イノベーションすなわち社会イノベーションは、デザイン 可能 であり、それが実現されるためには、さまざまな実証実験が試みられ、また、安心安全な管理技術 として確立され、そして、人びとが実際に使うことで、以前よりも「びっ くりし、わく わくするような新しい出来事」だと認知されるようになれば、私たちはそれを社会イノベーションと呼んでもよいだろうと言うことだ。
このことは、僕たちのウェブページでの英語による情報発信からも裏付けられる。
Center for the Study of Co* Design, Osaka University was
established in July 2016 to meet the demand for the university to serve
society by applying its specialized knowledge to provide solutions to
social issues. The Center aims to
develop students' abilities to communicate and innovate, and skills of
designing and implementation.
One of the educational programs we are developing and managing at the
center has social design as its theme, which generates new value
through co-creation (Kyoso, 共創) that involves a multigenerational
and otherwise diverse range of individuals.
そして、……
僕は、そのことを自分が担当する授業・協働術A「ネオ・アクション リサーチの探究:2018」で、学生たちと共に探究している。
●ソーシャル・イノベーション・リンク集
■ジャック・アンドレイカさんに学ぼう!
——番号は池田が振った
「おじのように親しくしていた人を膵臓癌で亡くしたことが開発の動機となった。膵臓癌に限らず、腫瘍の有無の目安となる腫瘍マーカーの血液 学的検出方法の基本原理はおよそ60年に開発された免疫学的検定から変わらず、煩雑であり技術革新の進まない分野であった。 また、腫瘍マーカー自体も腫瘍が進行して初めて上昇するものも多く、早期発見のスクリーニングには不向きであるとされてきた。 (1)ジャック・アンドレイカは現在の検査法の問題点に気付き、新たな方法を自力で開発することを決意…… 以後、検出方法を模索するうちカーボンナノチューブを使用することに思い当た り、高校の生物の授業中に、カーボンナノチューブの記事をこっそり読んでい た。その授業内容は病原菌やウイルスの特定のタンパク質にのみ結合する抗体の話で あった。そのとき、(2)アンドレイカは構造変化によって電気特性が大きく変わ るカーボンナノチューブと、特定のタンパク質にのみ反応する抗体とを組み合わせることを思いついた。また、(3)カーボンナノチューブ単体では不安定なため、支 持体として紙を用い試験紙とすることに決めた。 以後、アンドレイカはインターネットを駆使し、(4)論文やデータベースからおよそ 4000種のタンパク質を抽出し、その中で膵癌初期から上昇する腫瘍マーカー としてメソテリン(Mesothelin) を見出した。/アンドレイカはさらに研究を続けようとしたが、自宅では実証実験は不可能であることから、(5)実験プロトコルと理論を添えて各地の大学研究室、 特に膵癌の研究者にe-メールを送った。(6)約200通送ってほぼすべて断られたが、1通だけ先端医学を手がけるジョンズ・ホプキンス大学エニアバン マイートラから好意的な返信が来た。 アンドレイカは研究の意思を訴えて、受諾された。(7)研究室に招かれたアンドレイ カは研究室の教授を含め20人ほどから質問を受け、その後の実験プロトコルの 修正、7カ月の研究のあとで、成果を得」る。ウィキペディア「ジャッ ク・アンドレイカ」
■マクロウィキノミクスの発想
そして、言うまでもないことだが、ソーシャル・イノベーションに携わる人たちは、ソーシャル・コミュニケーションの達人でなければなりません!
リンク(大阪大学内)
リンク
文献
その他の情報
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