Ike-Cyclopedia #01
CO*-DESIGN BOOK #02
私=池田光穂が、COデザインセンターで使っている独自の用語ある いは大学における横断型教育における基本的な用語をここに辞書の形でお示しします。用語の前にある数字をクリックしましょう。タグジャンプします——できない時はページ内検索で!このページには続編「Ike-Cyclopedia #02」があります。なお、サイト内検索は、Ike-Pediaで!
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■はじめてアクセスする人に!
※このサイトは池田による独自研究が含まれています。池田が属している組織の 公式見解でありませんので、その点ご留意ください!ただし、論争誘発的な面白い情報も満載しております!なお、このページには続編「CO*-DESIGN BOOK #02」があります。
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まず、COデザインセンターの公式ホームページの「活動内容」 から、このセンターがなにをおこなう組織なのかの3つの理念が謳われています。
イノベーションの定義で、世界でもっとも簡潔なものは「びっく りするような新しい出来事」のことである。そ して、世界で一番定番のイノベーションの定義は、ジョセフ・シュンペーター1911年の著作にみられる定義、すなわち、1)新しい財貨の生産、2) 新しい生産方法の導入、3)新しい販路の開拓、4)原料や供給源の獲得が以前にはないもの、そして、5)それゆえに新しい組織が生まれること、という5つの要素から成り立つ定義である。
世界の多くのイノベーションの定義は、このシュンペーターの5つの定 義の省略版(デジタルICT時代には、4)などは比重が下がったり陳腐化しているはずですので、1)、2)、5)の三要素など)がよくみら れます。でも重要なことは、単に「新しい」ではなく、「びっくりするような新しい」 が、破壊的イノベーションなどの議論の、破壊的あるいは刷新的ということとつながります。
経 営学者の玉田俊平太は、日本初の破壊的イノベーションの 例として、ソニーのトランジスターラジオ、任天堂のファミコンなどをあげてい る。これらは、両方とも、前者では装置が大きく電力が必要のために家に置かざるを得ない真空管のラジオや、業務用のビデオゲームしかなかった時代に、家庭 で手軽にゲームできるように、それまでの消費や使用——玉田はそれを「サービスの利用」だとクリストン・クリステンセン『イノベーターのジレンマ』(The Innovator's Dilemma)を引 用しながらそう表現する——を根本的に変えて、もとの「サービスの利用」形態を〈破壊〉したと表現する(2015:15-33)。——玉田俊平太 (2015)『日本のイノベーションのジレンマ』翔泳社。
イノベーションはしばしば技術刷新や技術革新と呼ばれることが多い が、これは間違いである。イノベーションは単に「刷新」や「革新」だけで よく、技術だけに限定しなくてもよい。現代用語としてのイノベーションとは「事前に 予想が不可能な、その時 代の社会の人たちに驚きをもたらす、実現可能な事態や概念のこと」である(→「イ ノベーション・デザイン」)。したがってイノベーションに適切な訳語をつけるとすると「びっくりするような新しい出来事」である。
英語のイノベーションの初出の事例は1553年だが、フランスでは1297年に登場。これがイノベーションの語源(イノベーション=イノ ベートする行為)になっている。
innovation (ɪnəʊˈveɪʃən)
: [ad. L. innovātiōn-em, n. of action f. innovāre to innovate: cf. F. innovation (1297 in
Hatzfeld-Darmesterの言語学事典よると.).] (一番最初の意義定義)1. a.1.a The action of
innovating; the introduction of novelties; the alteration of what is
established by the introduction of new elements or forms. †Formerly
const. of (the thing altered or introduced). (英語での初出とその引用文例)1553 Brende
Q. Curtius 221 b, Perdicas, whose ambicious mynde desirous of
innouation, was (he sayde) to be preuented in time.
ちなみ、イノベートとは、イン+ノヴァーレ(「新しく」「すること」:意味の配置は逆です)[f. L. innovāt-, ppl. stem of innovāre to renew, alter, f. in- (in-2) + novāre to make new, f. novus new. Cf. F. innover (1322 in Godef. Compl.).] 。
我々はイノベーションの科学技術的予想(例:核分裂の現象から巨大なエネルギーを一度に放出する現象とそれを兵器に使うことの組み合わせ) はできるが、核兵器のイノベーションが実際に可能になったのは、最初の核実験が成功した瞬間である。また原子力発電がイノベーションであるのは、核分裂で 発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換できた瞬間であり、そのアイディアを構想することではない。社会や状況、あるいはいままでの使い方や概念が破 壊されて、まったく新しい産業が登場する時(ICTに基づくインターネット回線の普及)に、イノベーションが起こったということができる。イノベーション を起こす努力をおこすことは可能であるが、それに技術的・現実的裏付けがないかぎり、それはイノベーションとは言わない。そのために、イノベーションとは 常に、事後的に(post hoc)に指摘される現象である。(→イノベーション人材)
イノベーションには、イノベーションが普及するプロセスを包摂した,考え方がある。プロダクトを提供する企業から顧客までの3つのステップ に、プロセス・イノベーション、プロダクト・イノベーション、そして、メンタルモデル・イノベーションである。
文献:
OECDの「イノベーションのための人材ポリシー」の理論的根拠とその目的には下記のように書かれている。
"Human resources have an embodied stock of human capital –
defined as the knowledge, skills, competences and attributes that
facilitate the creation of personal, social and economic well-being –
which is an essential input to innovation. Given the importance of
human resources for innovation, key objectives of human resource
policies have been to raise the level of knowledge and skills of the
labour force. Particular policy objectives have included meeting the
need for skills for innovation by enlarging the supply of the highly
skilled workforce and by facilitating its mobility in order to optimise
the use of human resources, to facilitate the cross-fertilisation of
ideas and learning, and to address structural mismatches of demand for
and supply of skills." - Human
resources policies for innovation, by OECD
つまり、イノベーションをおこすには、よい人的資本(human capital )の蓄積=ストックが不可欠である。人材の質は「人的・社会的・経済的福利を促進するための知識、技能、能力、資質」によって決まるからである。このよう な資質は、外部から適切な方法によってリクルートするだけでなく、そのような資質のある人員を、企業や集団のなかで、技能を授けたり、異業種の職域との交 流や、仲間同士の資質の高めあいなどの良好な相互作用を通して、人材育成することも重要になる。つまり自らと自らが属する社会の自由のために、自分自身が 仕える自由の能力を十分に発揮すること、つまり「高度汎用力(higher capability)」を育成すると同時に、その汎用力をつかって、個人・職域・社会を良好なものにしていく努力が不可欠になる(→「社会経済地位」)。
他方、イノベーション企業であるグーグル(Google) の前副社長のジョナサン・ローゼ ンバーグ(Jonathan Rosenberg, 1961- )は、グーグルが求める人材を次の5つのスキルをもつものだと言っている(ジャービス 2009:309)。
リンク
文献
【定義】大学・大学院という教育環境のもとで、この制度が理想とする各人が教育や研究をとおしてより自由な存在になるための、価値を見出し、選択できる機能の集合を高度汎用力 (higher capability)と呼ぶ」ことができる。
【拡張した定義】高度汎用力とは、人間自身が〈自由な存在〉になるための(=「自分自身を解放する」という)さまざまな課題や問題を解決す
るための力のことである。
【ケイパビリティとは?】ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・センによると(社会の)開発・発展・成長とは、富や所得を増大させること ではなく、(その社会にい る)人々が享受できる自由を増大させることが重要だと考えた。人が自分自身で自由であることを保証するのは、人間が自由を獲得できる能力をみずから持ち・ 選択し・かつ行使することができなくてはならない。そのような、人々が価値を見出し、選択できる機能の集合をケイパビリティ(capability)の概 念で捉えた。端的に言うと、ケイパビリティとは、その人が何をできるのかという可能性を示していることでもある。マーサ・ヌスバウムは、後に、センと協力 して、生活の質/生命の質(Quality of Life)という従来は保健や人間の安全保障に関する用語であったものを、さらに鍛えあげ、ケイパビリティを「あらゆる諸国の憲法で保障されるべき人間の 資質であり、また、可能なるもの(可能態)」として位置づけ、経済的な成功が人間の人生の充実と善の達成と結びつくための基盤構造について構想した(→「人間にとっての真のケイパビリティとは?」)。
そのようなセンとヌスバウムの提唱にヒントを得て、高度汎用力(higher capability)を定義する。つまり「大学・大学院という教育環境のもとで、この制度が理想とする各人が教育や研究をとおしてより自由な存在になる ための、価値を見出し、選択できる機能の集合を高度汎用力(higher capability)と呼ぶ」ことができる。(→出典:「高度汎用力とは?」)
004■ 参考:「高度汎用力」 (大阪大学超域イノベー ション 博士課程プログラムが定義するもの)
「高度汎用力は下記の3つの力から構成されるものとして定義」 している。しかしこれでは、「高度汎用力は、《課題発見力》+《課題解決力》 +《社会実践力》からなるもの」としか定義できなくなくなり、その後者の3つの用語の定義をしたにすぎず、高度汎用力を大きくひとくくりに(総合的に)定 義するという 思考判断力を全く持たないものになっている。
また当該のページには、高度汎用力の英訳の定義すらないが、それに該当するものは…"the creative forces and long-range visions"ならびに"Cross- Boundary Innovation(CBI) "[potentiality]… であろうか?
"[I]n order to address today’s range of issues, society needs to not only generate high levels of expertise but also to harness the creative forces and long-range visions that an interdisciplinary meeting of minds can bring."
"Rising to this challenge of cultivating visionary global
leaders for government, industry, academia and citizens, Japan’s
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology laid the
groundwork in 2011 for establishing next-generation graduate programs
called “Programs for Leading Graduate Schools.” Osaka University
consequently proposed the Cross-
Boundary Innovation(CBI) Program, an “All-around Program”
designed to train outstanding leaders with a wide range of expertise
across the sciences and humanities. "
出典:http://www.cbi.osaka-u.ac.jp/curriculum1
出典:http://www.cbi.osaka-u.ac.jp/en/concept2/
005■ 大阪大学博士課程教育リーディングプログラム(同ホームページより)
大阪大学には現在5つの「博士課程教育リーディングプログラム」 がある。平成23(2013)年度からはじまり平成35(2018)年度以降順次終了するプログラムである。
1.【オールラウンド型】超域イノベーション博 士課程プログラム
2.【複合領域型(生命健康)】生体統御ネットワーク 医学教育プログラム
3.【複合領域型(物質)】インタラクティブ物質科 学・カデットプログラム
4.【複合領域型(情報)】ヒューマンイ ノベーション博士課程プログラム
5.【複合領域型(多文化共生社会)】未来共 生イノベーター博士課程プログラム
実 装の英語は、packaging; implementation; mounting、で表現される。実装するとは、パッケージする、履行実施する、備え付ける、ということであり、実装する力・実装力とは、「パッケージす る能力」、「履行実施する能力」、「備え付ける能力」のことをさす。証明終わり(QED)。
「高い専門性と広い国際性を基礎とした高度な知識と教養をもって物事を俯瞰的にとらえることにより、未知の課題を見つけ出し、新たな問題を設定する能力」(内部
資料より。下線部は引用者)
「物事について柔軟かつ独創的に思考し、課題や問 題に対して従来にはなかった新たな考えや仕組みを積極的に取り入れていくことにより、その解決策を立案していく力」(内部資料より。下線部は引用 者)
「様々な立場の他者と関わり、また協働しながら、確かな指針をもってグローバルに行動することにより、イノベーションを起こし新たな価値を創造してゆく力」(内部 資料より。下線部は引用者)
知と社会の統合というのは、口で言うのは易しいが、実際に実践するのは困難である。こういう安易なことで、善良な人を騙すのはやめようね!
現場力(げんばりょく)とは、実践の現場で人が協働する時に育まれ、伝達
することが可能な技能であり、またそれと不可分な対人関係的能力などの総称のことをさす。(→出典「現場力」)
012■ デザインの手順の縮減に関するドナルド・A・ノーマンの7原則(1999:309-310/原 著 1988:188-189)
くそったれ!この蹄(ひづめ)めっ!また押しまちがえちまったぜ!誰だこの操作盤をデザインした奴は!アライグマの奴(やつ)なのか?
価値の創造とは、ビジネスパーソンに対して「君たちの社会的使命は、たんに会社を儲けさせることだけでなく、社会と社会の人々が、君たちのビジネスを通して、プラスの価値あるモノ・コト・ユメそして未来をもたらすことだ」と教え込む内容のことを言います。このメッセージのキモは、「たんに会社(と個人)を儲けさせることだけでなく」「プラスの価値あるモノ・コト・ユメそして未来」を作り上げてゆくという各人の気概(spirits)の育成にあります。
"Value creation is the primary aim of any business entity.
Creating value for customers helps sell products and services, while
creating value for shareholders, in the form of increases in stock
price, insures the future availability of investment capital to fund
operations."- Read more: https://www.referenceforbusiness.com/management/Tr-Z/Value-Creation.html
014■ 専門家の内省:Reflective Practitioner
専門家が内省するか、あるいは内省的であるのか、という点についてのパラドクスをあげてみよう。このパラドクスは、(1)と(2)が共存す
る時
に、ないしはそれらに加えて(3)の要素が加わる時に起こるのではないだろうか。(1)「専門家はその領域の知識に精通しているために〈内省〉という技法
にも精通しているはずだ」(専門家がもたなくては ならない命令語法
(imperative)あるいは、その論理的帰結)。(2)「専門家は、専門以外の知識には精通しているが、それ以外の分野の知識をもたない(例「専門
馬鹿・専門バカ」)。従って専門家 にとって〈内省〉
という技法は、彼らにとって一番苦手なはずだ」(世間の専門家に対する偏見あるいは経験的知識)。(3)「専門家は、ある領域についての知識に精通してい
るはずなので、その知識については内省という技法を身につけている (専門家という名
の由来)。しかし[専門外の]他領域については内省という技法をもってしても、それは役立たないものになるはずだ。つまり専門以外の領域に〈内省〉は効力
をもたない」((1)と(2)の見解が混じった意見)。(→「専門家の反省について」)
高度教養教育とは「一定の専門知識を身につけ、(職業人あるいは研究者として)社会にまもなく出て行く学 生に対して、専門教育以外に必要とされる知識や能力を与える教育」(大阪大学 2011)のことである。しかしながら、この定義には2つの大きな問題がある。ひとつは(1)専門教育以外の知識や能力だと、何でも入ってしまい、その中 核たるそれらを何も示していない。そして他のひとつは(2)対話型を謳う今日の大学教育では、「知識を与える」Educationから「能動的に学ぶ」 Learning を志向しており、この流れに沿うものがどのように構想されるのかが示されていない。私は、新たに次のように高度教養教育を定義する; (α)「高度教養教育とは高度汎用力(higher capability)を陶冶するもの」である。これでは高度汎用力が分からねば何のことかわからない。そこで上の高度汎用力の定義を導入して次のように 改めて定義してみよう;(β)「高度教養教育とは、大学・大学院 という教育環境のもとで、この制度が理想とする各人が教育や研究をとおしてより自由な存在になるための、価値を見出し、選択できる機能の集合を教えること (=陶冶すること)である」。
大阪大学:「知のジムナスティックス(高度教養プログラム)2011」http: //www.osaka-
u.ac.jp/ja/research/education_refine/gymnastics (2013年11月10日)
■高度汎用力育成プログラムの全学展開構 想(案)
■高度汎用力育成プログラムにおける従来 の取り組みからの変更点
016■ 参加型アクション研究:Participatory action research
コミュニ
ケーションとは「時間的位相における推移のなかで、情報やデータが『共通のものとなる』という現象一般」のことと定義することができる(→「コミュニケーション」)。
【定義】人と人のあいだのコミュニケーションをデザインすることを「コミュニケーションデザイン」と呼ぶ(→出典「コミュニケーションデザインとは何か?」)
The Definition of "Communication-Design" is Designing communication between human beings by mediating designed concepts and objects.
【思想史的意義】 コミュニケーションデザインとは、創発性の管理思想である(→コミュニケーションデザイン・テーゼ)
【さまざまな展開】コミュニケーションデザインとは、コミュニケーションのあり方について 議論し、さまざまなコミュニケーションの様式(モード)を構想・設計(デザイン・モード01)し、計画・実行(デザイン・モード02)し、具体的に社会に 提唱(デザイン・モード03)してゆくこと をさします。
Google Books Ngram
Viewer を使った[communication]と[design]の英語書籍にみられる頻度変動(グラフのクリックで拡大します)
大阪大学で2005年4月に創設され、2016年6月30日までに存続した、学部高学年ならびに大学院生に対する「コミュニケーションデザ
イン科目」という研究科横断の高度教養教育科目を提供していた部局。歴史
的資料としては「大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)」を参照。現
在は、「大阪大学超域イノベーション博士課程プログラム(2017年
4月における学生募集をもって奨学金プログラム制度は終了)」と組織的には合体改組されて、COデザインセンター(2016年7月1日〜)となっている。
「デザインとは人びとのために問題を解決するための方法である」(ハーマン・ミラー社のモットー)
021■ 参加型デザイン:Participatory design
デザインする人とデザインを利用する人がシームレスな状態であるとき、そのデザインの様態を「参加型デザイン(Participatory design)」と呼ぶ。
"Participatory design (originally co-operative design, now often
co-design) is an approach to design attempting to actively involve all
stakeholders (e.g. employees, partners, customers, citizens, end users)
in the design process to help ensure the result meets their needs and
is usable. Participatory design is an approach which is focused on
processes and procedures of design and is not a design style. The term
is used in a variety of fields e.g. software design, urban design,
architecture, landscape architecture, product design, sustainability,
graphic design, planning, and even medicine as a way of creating
environments that are more responsive and appropriate to their
inhabitants' and users' cultural, emotional, spiritual and practical
needs. It is one approach to placemaking." Participatory
design, by Wikipedia
022■ ソーシャル・デザイン、ソーシャルデザイン: social design
ソーシャルデザインと は、文字通り「社会」を「つくること/デザインすること」である("social design" is "desiging for good society")。言い方を変えると、「デザイン実践を社会化すること」である。まだきちんと情報提供の質のが確立していない、ウィキペディ ア(英語)にも、"Social design is design that is mindful of the designer’s role and responsibility in society; and the use of the design process to bring about social change." - social design とある。日本語のウェブページや著作のなかで「ソーシャル・デザイン」を冠したものがあるが、その意味はどうやら「社会をデザイン」するものと誤解されて いるようだ。英文解釈の問題ではないが、「社会をデザインする」という動名詞表現は、designing society あるいは designing [local] community と表現すべきであり、何事もソーシャルとつければ、社会実践になる、日本語母語者の悲しい性が、この誤解の原因になっている。(→「社会のデザイン」の項 目を参照)。しかしながら、和製英語的用法に基づくソーシャル・デザインは「社会のデザイン」でもあるので、この場合は、その用語の意味にもとづいて、 「活 力が低下したり、社会セクターのうちある部分が機能低下・機能不全に陥っている地域社会の部分を機能強化あるいは代替的方法で活性化させて、ひいて、社会 全体の活動性を高めていく実践」のこともソーシャル・デザインと呼ぶことは差し支えないだろう。
023■ 社会のデザイン:designing society, designing [local] community
活力が低下したり、社会セクターのうちある部分が機能低下・機能不全に陥っている地域社会の部分を機能強化あるいは代替的方法で活性化させ
て、ひいて、社会全体の活動性を高めていく実践を、社会のデザインと呼ぶ。(→「ソー
シャル・デザイン2019」の項目を参照)
024■ ソー シャル・イノベーション(社会イノベーショ ン)
"Social innovations are new strategies, concepts, ideas and organizations that meet the social needs of different elements which can be from working conditions and education to community development and health — they extend and strengthen civil society. Social innovation includes the social processes of innovation, such as open source methods and techniques and also the innovations which have a social purpose — like online volunteering, microcredit, or distance learning."
ソーシャル・イノベーションは、社会の刷新(刷 新)という意味である。より具体的には、社会のさまざまな関係性や、先行する社会問題に対して、それまでなかった独自の視点と実践原理を通して、社会の関 係性の変化や問題の解決にむけた社会のあり方の編成をもたらすことをいう。
さて、このソーシャル・イノベーションは、別の言い方をすると社会イノベーションということになる。先に、イノベーションとは「びっくりするような新しい出来事」であると新しい定義を与えておいた。したがっ て、ソーシャル・イノベーションあるいは社会イノベーションとは「びっくりするよう な新しい社会的出来事」である。端的にいって、エスカレーターや動く歩道は「びっくりするような新しい社会的出来事」であった。自動改札システムや、さらに は非接触の自動改札システムも「びっくりするような新しい社会的出来事」 であった。
ちなみに日立製作所はふるくから社会イノベーションに取り組んでおり、それを次のように使っている。
「日立の社会イノベーション事業は、制御・運用技術であるOT(Operational
Technology)とIT、プロダクト・システムを組み合わせたトータルソリューションを提供し、社会やお客さまが直面しているさまざまな課題を解決
します」(出典:http://social-innovation.hitachi/jp/about/)
このようなソーシャル・イノベーションにむけて、動き出す実践家の精神を、社会起業精神(Social entrepreneurship)と呼ぶ。ウィキの記述(次項目)に着目してみよう!
025■ アントレプレナーシップ:entrepreneurship
日本語の定訳は「企業家精神」。新しい事業の創業意欲に燃えており、起業にともなくリスクマネジメントの準備がなされ、かつリスクを怖れず
挑戦的に挑むような姿勢のことをさす。ウィキ(英語)では、"Entrepreneurship
has traditionally been defined as the process of
designing, launching and running a new business, which typically begins
as a small business, such as a startup company, offering a product,
process or service for sale or hire, and the people who do so are
called 'entrepreneurs'." とある。
026■ ソーシャル・アントレプレナーシップ(Social entrepreneurship, 社会起業家)
"Social entrepreneurship is the use of the techniques by start
up companies and other entrepreneurs to develop, fund and implement
solutions to social, cultural, or environmental issues.[1] This concept
may be applied to a variety of organizations with different sizes,
aims, and beliefs.[2] For-profit entrepreneurs typically measure
performance using business metrics like profit, revenues and increases
in stock prices, but social entrepreneurs are either non-profits or
blend for-profit goals with generating a positive "return to society"
and therefore must use different metrics. Social entrepreneurship
typically attempts to further broad social, cultural, and environmental
goals often associated with the voluntary sector[3] in areas such as
poverty alleviation, health care and community development." - Wiki - Social
entrepreneurship
027■ コンピュータに支援された共同作業:Computer-supported cooperative work
コンピュータがなくても「可能」になる共同作業は、「コンピュータに支援された共同作業」とは言わない。ということは、コンピュータと人間 が、ある作業領域のなかでは融合(フュージョン)する作業を、私たちは、このように呼ぶのである。
1.デザインを生み出す思考という意味と、2.思考の過程がデザイン化 (実践に先立って計画や理念がある)したもの、という2つの意味があ る。ただし、思考とは、デザインそのものだという見解からは、「デザイン思考」という呼称は、冗長語法であるという批判もある。
「デザイン思考/デザイン・シンキング(design thinking)は、創造的な問題解決のための方法である。
IDEOのCEOのティム・ブラウンは、デザイン・シンキングを「デザイナーの道具箱から、1)人民のニーズ、2)テクノロジーを動員できること(可能
性)、そして、3)ビジネス上の成功という要求を満たす、ように統合するように描かれた、イノベーションへのひとつの人間中心的アプローチである」と述べ
ている」(→「02-035■ デザイン思考/デザイン・シン
キング(design thinking)」)。
そのプロダクトを利用するユーザーが、冷静な利用以上に愛着をもったり、特別な思い入れをいだくとき、そのデザインは、共感的
(empathic)だという。
030■ ユーザー中心的デザイン:User-centered design
デザインを造る人の視点ではなく利用するユーザーの立場から考えるデザイン思考のこと。
1.ユーザーの側が利用を通して設計した者以上の利用形態の刷新をおこすとき、2.ユーザーに対してイノベーションを引き起こすような潜在
的可能性をもたらすもの、どちらか、あるいはその両方。
研究をおこなう際に、予め準備したグランドデザイン=戦略的見取り図を描くこと。
教育をおこなう際に、予め準備したグランドデザイン=戦略的見取り図を描くこと。
"1. A method or plan chosen to bring about a desired future, such as achievement
of a goal or solution to a problem. 2. The
art and science of planning and marshalling resources for their most
efficient and effective use. The term is derived from the Greek
word for generalship or leading an army" - http://www.businessdictionary.com/definition/strategy.html
文字通り、境域を超えた(Crossing-Borders)のことであるが、この意味によき意味しかもたない人は、不法な労働移民や難民 (経済および政治)が無理にでも禁じられた国境を越境して領域侵犯(transgression)のイメージを抱くことができない、哀れな人たちである。 他方で、領域侵犯(transgression)経験者は、ビジネスエリートが、境域を超えた(Crossing-Borders)を能天気に称揚する際 に、「なんて幸せな人なのだろうか!」と感慨を新たにするだろう。
対話は通常複数の人たちのあいだで生起するものである。また対話が続く状況とは、共通の理解や価値観が重なりあいながらも、けっして同一の
もの にならないことである(合致すれば対話が終わるからである)。
共創(co-creation, CO-creation, きょうそう)と は、もともとは、マーケティングの用語で、異なるグループ(例:生産者と消費者、セールスマネージャー)が共同することで、製品開発や産業流通におい て、さまざまなイノベーション・アウトカムを目指す活動のことをさす。【→「共創(co- creation, CO-creation, きょうそう)」】
アクターとは、社会の活動領域のなかで、一個の主体として、動きまわる活動性格をもつことで、他のアクターと環境全体のシステムをかえる主 人公のことをさす。演劇や映画における俳優をアクターと名づけてきたように、アクターは一つの個性をもった主体であるが、他のアクターとの相互作用により 社会環境を形成していくために、他のアクターや環境からも影響を受け、さまざまな時系列の中で多様に振る舞う「自由度」をもった存在である。
さまざまな社会理論の中で、アクターに大きな社会的意味を与えた理論が、アクターネットワーク理論である。
"Actor–network
theory (ANT) is an approach to social theory and research, originating
in the field of science studies, which treats objects as part of social
networks. Although it is best known for its controversial insistence on
the capacity of nonhumans to act or participate in systems or networks
or both, ANT is also associated with forceful critiques of conventional
and critical sociology. Developed by science and technology studies
(STS) scholars Michel Callon and Bruno Latour, the sociologist John
Law, and others, it can more technically be described as a
"material-semiotic" method. This means that it maps relations that are
simultaneously material (between things) and semiotic (between
concepts). It assumes that many relations are both material and
semiotic." - Wikipedia,
Actor–network theory
ファンドムとは、ファン(fan-)つまり愛好家にささられた活動領域(-dom)である。日本語でわかりやすく説明すると、「ヲタクに
よって支えられた活動領域」のことである。漫画ファン、アニメファン、フィギュアファン、あるいはカードゲームなどのギーク(=をたく)たちは、インタ
ネットのコミュニティやハブでつながり、しばしば、国内で大きなフェアを開き、集うことがある。彼らがもつその「趣味の領域」は非常に深く、サブカルと呼
ばれる文化領域を形成する。単に創造的(クリアティブ)なだけでなく、それに関連する産業の消費者となり、産業を支え、また、ヲタクの領域から非ヲタ以外
の市民を巻き込んで文化的流行をつくりあげることもある。その意味で、ファンドムは、21世紀のCOデザインを考える上で、重要なアクターになるのであ
る。
040■ オンライン・コミュニティ:Online community
インターネット上の利用者が、電子メールやSNSなどのコミュニケーション手段をとおして感じる、社会あるいは共同体の概念を、オンライ
ン・コミュニティと呼ぶ。
おたがいに、自立/自律した組織が、お互いに手を組むことを連携という。
042■ 産官学民(ndustry, government,academia, and civil society [or people])
産
業界、官界、大学の連合や協力関係を産官学(さん・かん・がく)というが、それに人々すなわち人民を交えた、四者の協力関係を産官学民(さん・かん・が
く・みん)という。産官学は産学官(industry-academia-government
collaboration)とも言うが、これは順序の違いのみ。
協奏とは、複数の構成要素が連携し合うことをいう。協奏曲のように、楽曲の演奏におけるハーモニーの共同という用語に由来する。
そこに秩序が認められるような全体のことを体系(システム)というが、そのようなありさまが、体系的である。
045■ システム思考(体系的思考):Systems thinking
システムで考えるシステム論から由来することば:"Systems theory is the interdisciplinary
study of systems. A system is an entity with interrelated and
interdependent parts; it is defined by its boundaries and it is more
than the sum of its parts (subsystem). Changing one part of the system
affects other parts and the whole system, with predictable patterns of
behavior. Positive growth and adaptation of a system depend upon how
well the system is adjusted with its environment, and systems often
exist to accomplish a common purpose (a work function) that also aids
in the maintenance of the system or the operations may result in system
failure. The goal of systems theory is systematically discovering a
system's dynamics, constraints, conditions and elucidating principles
(purpose, measure, methods, tools, etc.) that can be discerned and
applied to systems at every level of nesting, and in every field for
achieving optimized equifinality." - Systems theory,
by Wiki
たんに学習するだけでなく、教育課程のなかで、履修・習得することをいう。
教育の理念を、具体的な現場にカリキュラムや課程(コース)をおこなうこと、または、その理念を形に表現したもの。
実際に、現場(例えば教育の現場)に実装することを、実践展開という。
パーマネント(永続的)とアグリカルチャー(農業)を結びつけた有機物生産活動。現在でいう、サステイナブル農業や、ロハス・スタイルの農
法、自然にやさしい農業などの概念を包摂している。
050■ アクティブ ラーニング
「アクティブラーニング(能動学習、能動的学習)をしている状態とは、教室の中でみられる普通の風景、すなわち、学生(生徒・児童を含む) が、前 を眺めている・聞いている・ノートを取っている、という従来型の学習「以外」の活動をすべて包摂するような活動のことである」——アクティブラーニング
051■ 問題にもとづく学習:Problem-Based
Learning. PBL
「学習者じしんが中心となり、反省的反復の作業をともないながら、実践される少人数グループの
教育手法ことを、「問題にもとづく学習」とよぶ。PBLとは, Problem Based
Learningのアクロニム(頭文字による略記法)である。医学・歯学・看護学・環境科学・法律実践・工学などのように実践の場での問題解決などが職業
的スキルとして重要視される教育課程でしばしば採用される」——問題にもとづく学習(PBL)
052■ プロジェクトに基づく学習:Project-Based Learnig, PBL, or PJBL
"Project Based Learning is a teaching method in which students
gain knowledge and skills by working for an extended period of time to
investigate and respond to an authentic, engaging and complex question,
problem, or challenge. In Gold Standard PBL, projects are focused on
student learning goals and include Essential Project Design Elements:"
Key Knowledge, Understanding, and Success Skills//Challenging Problem
or Question//Sustained Inquiry//Authenticity//Student Voice &
Choice//Reflection//Critique & Revision//Public Product.... What is Project Based
Learning (PBL)?, by the Buck
Institute for Education, BIE
053■ EMS:Electronics Manufacturing Services
"Electronics manufacturing services (EMS) is a term used for companies that test, manufacture, distribute, and provide return/repair services for electronic components and assemblies for original equipment manufacturers (OEMs). The concept is also referred to as electronics contract manufacturing (ECM)." Wikipedia, Electronics Manufacturing Services
経済学の用語。工業化が進展すると(それに必要な労働力供給の源になる)農業部門の余剰労働力が底をついた状態になる、モデルにおける仮想
状態のことである。
サンク・コスト(sunk cost)= 埋没費用とは、すでに事業やプロジェクトに投下した資金や労力のうち、中止や計画変更においても取り戻せないコスト(=資金・労力量)のことをいう。サン ク・コスト効果(sunk cost effect)とは、すでに資金を投下しているために、後戻りはできないような効果のことを言う。例えば、カジノで博打うち(ギャンブラー)が、遊んで浪 費してもいいという気持ちから「これだけ金を擦ったから、せめて元金ぐらうは取り戻すまでガンバロウ」と思った時、そのギャンブラーは、サンク・コスト効 果の呪縛に嵌まっているという。超音速旅客機コンコルドは、英仏両政府が、経済的には失敗であることがわかってからも、そのプロジェクトに投資し続けた。 日本の高速増殖炉「もんじゅ」は1967年の動燃(動力炉・核燃料開発事業 団)の設立以来、1995年12月8日のナトリウム漏洩(ろうえい)事故があっても、廃炉決定の決定ができず、無駄な国費を投入しつづけて、2016年 12月21日に廃炉を政府が決定するまでに、1兆円の費用を投入して、稼働日はわずか250日しかなかった。「もんじゅ」には日本政府が世界に最も恥ずべ きサンク・コストの事例となった。
日常生活のさまざまな局面をゲーム化することをゲーミファイ=ゲーム化する(gamify)というが、ゲームデザインで使われる方法・戦略 を、それ以外の分野でつかうことをゲーム化あるいはゲーミフィケーションと呼ぶ。ユーザー(例えば、学生や教師)が、順位をめぐって競争したり、成果を可 視化したり、ポイント化したり、さまざまなカードや、ミッション課題を立てたり、その成果を劇場化してプレゼンしたりすることは、講義や授業のゲーム化= ゲーミフィケーションと呼ぶことができる。[Gamification, by Wiki を参照のこと]
これは、ゲーム化することで、日常生活における実践や行動を「強化」(=ある方向に積極的に進めること)ことで、参加者の意識を高め、か つ、よい心証を持つように操作することである。したがって、模倣され、類似化されるゲームに対する、ユーザーのそれまでの先入見や固定概念が、ゲーム化= ゲーミフィケーションに対する参加の熱中度を変化する。ただし、人は多かれ少なかれ、ゲーム化する世界の住民であるために、程度の差こそあれ、ゲーム化 は、多くの人達への作業や実践のファシリテーションには極めて有効な手法である。(→文化の作法の違いや、文化的/宗教的タブーには十全の配慮が必要であ る)
「われわれは芸術なんかもっていない。われわれは、どんなことでもできるだけうまくやるのだ」——バリ島のことわざ(レヴィンソン
2000:264)[→反専門家宣言!]
058■ コワーキング(Coworking )
コワーキングとは、事務・会議・打合のスペースを共有しながら独立した仕事をおこなう空間や機会のことをさす。ウィキペディア(英語)の Coworking の冒頭には、ベルリン、インド(インドール)、アメリカ合衆国(サンフランシスコ)、英国(グラスゴー)、ロシア(サンクトペテルブルグ)等の個性的な/ かつ共通の趣のある写真が配してある(下図)——どれがそれぞれの地域由来かを当ててみても、たぶん多様性のある組み合わせがあることは、逆にコワーキン グのスペースづくりに何らかの共通性があることを示唆する。その共通性はなにか?そして各人の解釈の恣意性を適切に理解できる説明を探してみよう
059■ 大学・リサーチ・アドミニストレーター(University Research Administrator)
大学や高等研究機関において、研究者とともに、研究活動の企画やマネジメントに参画し、研究成果の活用を促進すること協働する人をリサー チ・アドミニストレーター(University Research Administrator)あるいは、アクロニム(頭文字)の愛称をとって「ウラさん」と呼ぶ。ウラさんたちのおかげで、大学における研究者の研究活動 が活性化され、研究開発や産官学民の協力の研究マネジメントが強化されることが期待されている。URAには、企画戦略、地域連携、情報発信(広報)、プロ ジェクト推進、知財や技術移転、国際連携や、多言語・多文化を背景にしたひとたちの大学人としての人材育成などの機能分化が考えられる。
060■ フェミニズム Feminism
フェミニズムとは、いわゆる民主主義的な近代社会において、法の理念や人権概念において、男女の平等が達成されていないという現状認識から 出発し、女性にとっての、政治的、法的、権利的、経済的、アイデンティティ的、文化的、心理的などの視座を包含する社会運動と、そのイデオロギーからな り、基本的に、政治運動の形態をもつものの総称である。女性にとっての「政治的、法的、権利的……心理的などの視座」が、民主主義的な近代社会において多 様・多元的であるために、フェミニズムそのものも多様な姿をもつ。それぞれの運動の方向性や思想には、統一的方向性や最終目標(テロス)を定めることは難 しいが、現況において「男女の平等が達成されていないという現状認識から出発」し、そのための平等の是正は、普遍的に正しいという立場が崩れることはな い。(→「フェミニズム」)
061■ 労働の ジェンダー化 Genderlization of labor
ジェンダー化(genderlization)とは、もともとジェンダー(社会的性別)の区別がなかったものに対して、社会的バイアスがか かるようになる現象である。例えば、ジェンダー的に中立であるはずの客観科学の看護学は、現実の看護者が社会のなかで「女性の仕事」とみなされてきたため に、その学問もジェンダー化され、女性の専門職と長い間見なされてきた。しかし、実際の看護者(看護師)においては、男性の看護師も一定の割合で存在し、 とりわけ伝統的には精神病院中心の時代には、男性看護師の比率が高かった(その現場的理由は「精神病患者を制御するためには男性の力が必要」と見なされて きた)。また、日本の看護師国家試験に、男女によってなんら「差別」あるいは「配慮」というものがなされているわけでない。つまり、日本の看護師国家試験 は、現実の看護学のジェンダ化に対して、脱ジェンダー化(de-genderlization)されていると言える。もっとも、客観科学を標榜している (べつに私は「しなくてもよい」と考えるのだが)看護学の「公的イデオロギー」もまた「ジェンダーの区別は、患者のジェンダーに対して配慮すべきである が、看護技術はジェンダー化されていない」という立場をとっている。
さて、労働のジェンダー化(Genderlization of labor)とは、例えば、看護や介護の仕事は、脱ジェンダー的労働とし て一般化でき/かつ実際に両性に開かれているのだが、ある介護の領域などは女性が選好/選考されたりする事実をいう。それとは逆に、電車や車掌などは、長 くその仕事が男性の側にジェンダー化されており、男性にしかそれができないのだと長く本質主義的説明が与えられて、女性に就業のチャンスが少なかったが、 諸外国の例——古くは社会主義国や男女協働参画が早めに進んだ北欧社会——が紹介されるにつれて、脱ジェンダー化がはじまり、現代日本で女性の運転士や車 掌で驚く人は少なくなってきた。つまり、社会は、脱ジェンダー化を受けやすい。もともと人間の労働の多くがジェンダー化していたが、フェミニズムなどの社 会運動の結果、男女の労働能力に関するジェンダーバイアスのほとんどには根拠のない峻別があったことが明らかになれば、脱ジェンダー化を受けやすい。ま た、そのような偏見が温存されていても、社会がその制度を積極的に導入すれば、そのような偏見は、経験的事実により否定されるようである。
参照文献:労働のジェンダー化 : ゆらぐ労働とアイデンティティ / 姫岡とし子 [ほか編著],平凡社 , 2005年
文字通り「仕事の諸ルール」のことであるが、ラズロ・ボックの2015年の同名の本で解説された、グーグルにおける人事マネジメントの原則 やアイディアから導きだした「創造的職場」についての理念的処方せんあるいは「ビジネス哲学」のルールことが著名である。(→「CSCD のメンバーにとってのワーク・ルールズ!」)
参照文献:Work rules! : insights from inside Google that will
transform how you live and lead / Laszlo Bock, Twelve (2015)/ワーク・ルールズ!
: 君の生き方とリーダーシップを変える / ラズロ・ボック著 ; 鬼澤忍, 矢羽野薫訳,東洋経済新報社 (2015)
063■ スマート・クリエイティブ(smart creative)
「伝統的な知識労働者と、ここ十数年私たちが一緒に 働いてきたグーグルのエンジニアをはじめとする優秀な人材を比べてみると、後者がまったく違うタイプの労働者であることがわかる。グーグルの社員は特定の 任務にしばられていない。会社の情報やコンピューティング能力に自由にアクセスできる。リスクテイクをいとわず、またそうしたリスクをともなう取り組みが 失敗したとしても処罰や不利益を受けることはない。職務や組織構造に束縛されることはなく、むしろ自分のアイデアを実行に移すように奨励されている。納得 できないことがあれば、黙ってはいない。退屈しやすく、しょっちゅう職務を変える。多才で、専門性とビジネススキルと創造力を併せ持っている。要するに、 少なくとも従来の意味での知識労働者ではないのだ。私たちが「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ新種で、インターネットの世紀での成功のカギを握る存在 だ」(シュミット とローゼンバーグ 2014:3435)。(→「実践的コミュニ ケーションデザイン」)
参照文献:How Google works : 私たちの働き方とマネジメント / エリック・シュミット, ジョナサン・ローゼンバーグ, アラン・イーグル著 ; 土方奈美訳, 東京 : 日本経済新聞出版社 , 2014.10
ハワード・シュルツ(Howard Schultz, 1953- )が、スターバックス・コーヒーショップを開業後に、このコーヒーショップチェーンの位置づけを、家でもない、また、オフィスでもない「第三の場所 (third place)」と位置づけたことをいう。私たちの、COデザインという枠組みから言うと、シュルツは、家庭でもまたオフィスでもない、コーヒーを飲用しな がら過ごす「第三の場所」という空間を創造することで、コーヒー飲用とビジネスのニッチ空間を新たにつくりあげたということになる。(→「ニッチ構築」)
"In 1983, Howard traveled to Italy and became captivated with
Italian coffee bars and the romance of the coffee experience. He had a
vision to bring the Italian coffeehouse tradition back to the United
States. A place for conversation and a sense of community. A third
place between work and home. He left Starbucks for a short period of
time to start his own Il Giornale coffeehouses and returned in August
1987 to purchase Starbucks with the help of local investors." https://www.starbucks.com/about-us/company-information
065■ IoT(アイ・オー・ティー)
IoT(アイ・オー・ティー)とは、Internet of Things、IoT、つまり「モノのインターネット」「物のインターネット」(ウィキの訳語)あるいは「諸事物のインターネット」(著者の用語)のこと である。アイオーティとは、モノの流通・売買がインターネットによる繋がる現象のことである。(→「IoT(アイ・オー・ティー)」)
The Internet of things (stylised Internet of Things or IoT) is the internetworking of physical devices, vehicles (also referred to as "connected devices" and "smart devices"), buildings and other items—embedded with electronics, software, sensors, actuators, and network connectivity that enable these objects to collect and exchange data.[1][2][3] In 2013 the Global Standards Initiative on Internet of Things (IoT-GSI) defined the IoT as "the infrastructure of the information society."[3] The IoT allows objects to be sensed and/or controlled remotely across existing network infrastructure,[4] creating opportunities for more direct integration of the physical world into computer-based systems, and resulting in improved efficiency, accuracy and economic benefit.[5][6][7][8][9][10] When IoT is augmented with sensors and actuators, the technology becomes an instance of the more general class of cyber-physical systems, which also encompasses technologies such as smart grids, smart homes, intelligent transportation and smart cities. Each thing is uniquely identifiable through its embedded computing system but is able to interoperate within the existing Internet infrastructure. Experts estimate that the IoT will consist of almost 50 billion objects by 2020.[11]- Wikipedia
「IoTは早くも生産性を押し上げ、多くの財やサービスを生産 する限界費用を
ほぼゼロに近づけ、それらの財やサービスを実質的に無料にし、出現しつつある協働型コモンズでシェア可能にしている。その結果、企業の収益
が枯渇したり、財産権の効力が弱まったり、希少性に基づく経済が潤沢さに基づく経済に徐々に道を譲ったりしている」——リフキン,ジェレミー『限界費用ゼ ロ社会』柴田裕之訳、p.25,
NHK出版、2015年(→「情報ロジスティクス」)
066■ 「すべての物理学はU=0という公式にまとめられる」とリチャード・ファインマンは言った
物理学者ポール・ディラックが「方程式は実験結果と一致するよりも、美しくあることが重要だ」と述べたことについて、異論をもつリチャー
ド・ファインマンさんは、次のように言って、すべての物理公式がU=0というシンプルで美しい公式に還元されちまうぞ!と反論したこと。つまり、例えば、
E=MCの二乗:アインシュタインの方程式を、左項に移項するとE - MCの二乗 = 0 これは、同時に(E - MCの二乗)の二乗 = 0
となるはずだ。これと同じように、シュレディンガーの式も、オイラーの式も、移項すれば、(左辺の式)=0となる。これらの右辺を0とする式も、それぞれ
の項を二乗したもの(= 負にしないための操作)の総和はすべて0になる。各項の二乗であらわされる量をUnとして、n=1
からいくつまででもいい、それらの総和はU(ファインマンは超俗量という)は0である。超俗
量の意味は、物理学の理論体系をこえてあらゆるものを(それぞれの二乗しているので多少なりとも多めに見積もる弊害はあるがいずれにせよ)総量をあらわす
ことになる。だがそれはゼロ(U=0)ということになる。この方程式は、世界で1番単純で美しい。どうだ?!というのが、ファインマンさんのパロディであ
り、半分本気の批判なのだ。(→"Richard Feynman
said, "All of physics can be reduced to a single equation U=0"")
シンギュラリティ=技術的特異点(Technological Singularity, Singularity)という用語は「レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil, 1948- ) によれば、「100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越する」瞬間」が訪れるという、技術 論的終末論のことである。カーツワイルは、この終末論を展開するにあたり、人類のテクノロジーやコンピュータチップの計算効率の進化などを博引旁証して、 仔細に検討しているために、なぜ100兆という情報のノードが脳のシナプス結合と類推されるのか、また、それよりも低次の(例えば原索動物やイカなどの人 間よりも低次の)シナプス結合の総量しかもたない動物のふるまいを完全に模倣できるのかという議論などをしておらず、あくまでもシナプス結合が思考を構成 するという「シナプス結合総計中心主義」であることがわかる。そのため、カーツワイル氏には、全地球システムのICTがシンギュラリティを超えて、全地球 システムがはたして、我々と同じように「思考」しているかどうかということについては、我々は相変わらずシナプスレベル(=デカルトの確信レベル)でしか 「把握」できないというジレンマを抱えることを御存知ないわけである。さらに、人間とICT端末のハリブリッドな利用、つまりサイボーグ化により、我々は すでにシンギュラリティを超えて、すでに人間=機械状態(ドゥルーズとガタリの用語)になっていることは「ただ、単に知らない」だけなのかもしれない。
参照文献:ポスト・ヒューマン誕生 : コンピュータが人類の知性を超えるとき / レイ・カーツワイル著 ; 小野木明恵,
野中香方子, 福田実共訳,日本放送出版協会,2007/ The singularity is near : when humans
transcend biology / Ray Kurzweil, Viking (2005)
068■ ラーニング・コモンズ
ラーニング・コモンズ(Learning commons)は、学生が個人ないしはグループで利用できる大学に設置された場所ないしは施設のことである。多くの場合は、大学図書館や、大学の施設内 にあり、学生が「遊ぶ場」とは区別されている。英語での説明はこちらです。(→ラーニングコモンズの写真と上掲のコワーキングの写真とどうか見比べてほし い)。図書館に設置されたラーニング・コモンズは、しばしば、インフォメーション・コモンズ(Information Commons, IC)と言われることが多い。
"Learning commons, also known as scholars' commons, information
commons or digital commons, are learning spaces, similar to libraries
and classrooms that share space for information technology, remote or
online education, tutoring, collaboration, content creation, meetings
and reading or study." - Learning commons
.
Learning
Commons inside the library of Tec de Monterrey, Mexico
City(撮影時期:2015年1月)出典はリンク先
069■ 正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)
状況的学習において、実践共同体=実践コミュニティに参与することを通して学ばれる知識と技能の初期のプロセスのこと
を、正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)/正統的周縁参加という。(→「正統的周辺参加」)
070■ インフォメーション・コモンズ (→「ラーニング・コモンズ」を探してみよ!)
用語集:Information commons, learning space, teaching and learning center, collaborative leaning, collaborative leaning space, Course management system, commons, computer laboratory, service points, support staff, mission statement and vision statement, tactical planning, strategic planning, faculty center for teaching, electric classroom, library as place, virtual reference, Faculty development, facilitator, presentation support center, writing center, research commons, Inter-Library Loan (ILL), OPAC (Online public access catalog).
キュレーションとは、ユーザー・利用者がもとめる特定のテーマにそった情報を収集、整理して、そのユーザー・利用者が使いやすいかたちにま
とめて提供するサービスや業務のことをいう。たとえば、美術館のキュレーションの仕事は、美術品の収集し、管理し、また整理し、利用者がもとめる美術展を
企画し、その展覧会に利用者が有効に観賞できるようにすることである。キュレーションの仕事をおこなうひとを、キュレーターと呼ぶ。欧米の、美術館、博物
館、資料館のキュレーターは博士号をもつ人がおおく、専門の研究分野での論文を定期的に発表している専門家が多い。日本では、キュレーションの仕事にこれ
まで重要視されることがすくなかったが、文化大国という国の方針転換をするようになる1970年〜1980年代ごろからそのレベルは着実にあがってきてい
るが、逆に国や地方自治体が、キュレーションの仕事を十分に評価できず、日本におけるキュレーターの立派な資質を(制度整備をしないという政策的瑕疵を通
して)損なっている場合が多い。日本が、いまだに文化大国になれないのは、そのような理由だからである。
072■ デジタルヒューマニティーズ(digital humanities, humanities computing)
デ ジタルヒューマニティーズ(digital humanities, humanities computing)とは、人文学(古くは自由七科による教養科目)とICT(情報通信技術)との学際融合領域、ないしはその「対話」のことである。言い 方を変えると、デジタルヒューマニティーズ(デジタル・ヒューマニティーズ)とは、 ICTを通しての人文学の刷新(イノベーション)のことであり、また、技術偏重に傾いたICTを人間化(ヒューマナイズ)するプロジェクトのことで ある(→「デジタル・ヒューマニティーズ」)
Digital humanities (DH) is an area of scholarly activity at the intersection of computing or digital technologies and the disciplines of the humanities.[1][2] It can be defined as new ways of doing scholarship that involve collaborative, transdisciplinary, and computationally engaged research, teaching, and publishing.[3] It brings digital tools and methods to the study of the humanities with the recognition that the printed word is no longer the main medium for knowledge production and distribution.[3] - digital humanities
1. テキサス州ベクサーにある紙のメディアが一切ない図書館(http://bexarbibliotech.org/)の名前(2013年開館)ウィキの解 説《https://en.wikipedia.org/wiki/BiblioTech_(Bexar_County)》、 2.法律学者ジョン・ポールフリーがハーバード・ロー・スクールの図書館長になったことが契機になって書かれた未来の図書館に冠する書籍の書名。なお、 ジョン・ポールフリーはアメリカ公共デジタルライブラリー(DPLA)の設立委員長でもあ る。 ベーシックブッ クス刊、2013年刊行。
●John
Palfrey on BiblioTech: Why Libraries Matter More Than Ever In An Age of
Google : The Berkman Klein Center for Internet & Society
●
講演の冒頭で、Oliver
Wendell Holmes Jr.の書斎/ライブラリーの写真が登場する。
074■ マーシャル・マクルーハン(Herbert Marshall McLuhan, 1911-1980)
カ ナダの英文学者、メディア論者:マーシャル・マクルーハン(Herbert Marshall McLuhan, 1911-1980)を参照。
075■ アート・アンサンブル・オブ・アンソロポロジー(The Art Ensemble of Anthropology Project by Prof. Mitzub'xi Quq Ch'ij, CSCD, Osaka University)
デ
ジタル・クラウドを使った池田光穂による芸術人類学プロジェクト:アート・アンサンブル・オブ・アンソロポロジー:でリン
クする!
076■ アドワーズ戦略(AdWords Strategy)
ア ドワーズ(AdWords)とは、Google社がつくった造語で、正式には「グーグル・アド ワーズ(Google AdWords)」という。私たちが、商用ポータルサイトつまりアマゾンや楽天の通販サイトなどをくり返し訪問すると、自 分の欲しい/欲しがっている商品が《あなたへのオススメ》という形で適確に上位に登場している実感がわくはずである。その理由は、特定のユーザーがグーグ ル検索すると、ユーザーがアクセスした情報を蓄積しておき、本人が望んでいる情報を最適化して提示するような仕組みになっている(=グーグルはそれをポートフォリオ戦略のひとつである「自動入札戦略」 と称している)。教室でみんなが持ち込んだノートPCで簡単な用語で各自検索すると、その登場順が各人で異なるのはそういう理由からである。それをイン ターネットを介した双方向のコミュニケーション技術を、広告提示に応用したのがグーグル・アド ワーズである。グーグルは、さまざまな商用ポータルサイトを利用する顧客に対して、その検索情報を提供して、商用サイトはその最適化技術を使っ て、客を購買行動に誘う。大概のユーザーはログイン情報を登録してあるので、第三者には配信しないことを条件にしてその際に個人情報を利用して、広告もカ スタマイズして提示することは了承済であるという規約にもとづいて広告が提示されるために、ユーザーがそれを嫌がる場合は、自らがログアウト(=オプト・アウト)しないかぎりは魅力ある(あるいはすでに購入したはずの関連の)広告 が提示されるようになっている。
グー グルは、そのクリックの数に応じて(従量制)広告主から課金する。ユーザーがクリックしなければ広告主はグーグルには支払わなくてもいい(=課金されな い)ので、広告主にも不要な広告料を支払っているという認識は生じ難い。また、新規広告主は、広告のグレードに応じて、より不特定多数のユーザーに広告を 打つことも可能である。ユーザー(と広告主)にとっては魅力的であると同時に、悩ましいものであるが、広告も立派な情報なので、対価を伴うシステムとして は、従来の不特定多数に効力もわからず広告を打つよりもきわめて合理的である。
こ のアドワーズ(AdWords)を、インターネットにおける情報提示の戦略として位置づけたのがアドワーズ戦略(AdWords Strategy)である。たとえば、大学における学生の履修方法も、従来は時間割と履修規定にあわせたものをユーザー自身がやりくりしてなんとか創りだ すものであった。大学の初学生はそれが分からないために、大学は履修指導の教員やTAを動員してそれに対処してきたが、彼らの経験知のレベルと質もまちま ちであるし、学生の個性もあいまって、経験的な泥縄でおこなわれてきたのが現状である。学生の学習への取り組みや自分自身のキャリアデザインをICT技術 によりサポートしてあげ、それをもとに学生に対して最適化した時間割とシラバス閲覧と選択をさせることができれば、それほど相応しいことはないだろう。わ が大学には、それに対応することができる教員がたくさんいるはずなのに、全く履修サービスの提供に、彼/彼女らの優秀な能力が活かされていないのは、残念 至極である。
◎
「デジタル・ヒューマニティズからスマート・キャン
パスへ!」
077■ 国連開発計画「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と大学について
078■ 大学院教育をはじめとする高等教育のデトロイト化(マーク・テイラー)
コ ロンビア大学のマーク・テイラーはNew York Times, April 26, 2009 に「僕たちが知っているような大学をぶっ壊しな(End the University as We Know It)」というエッセーを寄稿し、「大学院教育は「高等教育のデトロイト」と化している」と酷評し た。米国の大学院プログラムは、マーケットが存在しない商品をつくり、需要がなくなりつつある技能を育成している。にもかかわらず学費は高くなる一方とい うわけだ。
■マーク・テイラー先生(Mark C. Taylor)のウェブサイト
■Re-Imagining the
Academy: Mark C. Taylor (YouTube)
079■ コラボ学習(Collaborative learning)あるいは共同学習
コ ラボ学習とは、1人で勉強するのではなく、2人以上の人たちが共同して学ぶ状況=現場のことを言う。これは、単なるグループ学習よりも、より広い状況で生 じる現象である。
知
識の習得を学習そのもののと理解するの
が、古典的学習の定義である。古典的学習の類義は、系統学習、受動的学習、放送局型の学習などという類似語がある(→出典「古典的学習とは?」)。
081■
ジャスト=イン=タイム製造(Just-in-time
manufacturing)Just-In-Time (JIT)
ジャ スト=イン=タイム製造(生産)すなわちJITとは、トヨタ自動車の生産方式(Toyota Production System, TPS)で、カンバン方式とも呼ばれる、生産過程における行程時間の圧縮して、供給者から消費者への最適化を図る方式のことである。トヨタ自工が言う「必 要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する」という標語は、《生産過程における行程時間の圧縮》というJITの最も重要で本質的なことを忘却ないしはカ モフラージュする言葉で適切なものとは言えない。
ウィ
キペディアの説明(Just-in-time
manufacturing)でもっとも重要な解説は、Evolution in Japanよりも、その後の、Migration to
the West であろう。
■カ ンバン方式→ジャスト・イン・タイムについて(ムダを徹底的に排除するという思想):トヨタのウェブサイトより
概
念図のなかの「仕掛けかんばん」と「引取りかんばん」が交差する場面が2つのシステムの結合を表現している。
083■ 深い質問(depper Questioning, deep question, deep questioning, )
「深
い質問」とは、回答するために自分も深く考える必要のある質問のことである。ただ単純に、複雑な質問や、複雑な答えを要求する質問のことではない。この場
合の「深さ」の隠喩は、質問の掘り下げ方により、さまざまな階層——地層を想像したまえ——のレベルで出てくる新たな問題だけでなく、地表の事物の関連と
は異なった、事物の関連性を考察するための素材の発見があり、それが、回答への多元性、多角性の要求をするものである。深い質問の効用は、その分野で、深
い思考ができるという曖昧なものだけでなく、深い質問と深い学習を経験したものは、通常の数学の成績も向上することがわかった。
タ プスコットとウィリアムズ『マクロウィキノミクス』(2010=2013)によると、次の3つ段階がみとめられる(2013:238-246)。
1. 教材を交換する
2. 教材を共同で開発する
3.
コラボ学習を組み合わせる
「C4 型光合成(C4がたこうごうせい)とは、光合成の過程で一般のCO2還元回路であるカルビン・ベンソン回路の他にCO2濃縮のためのC4経路を持つ光合成 の一形態…。C4経路には大きく分けて3種類あり、これらのうちどの経路が主なCO2濃縮機構であるかによって、C4植物は3つのサブタイプに分類され る。… C3植物はRubisCOを用いてCO2を固定するのに対し、C4植物はPEPCを用いる。このことは光呼吸の面からは有利に働く。通常、C3植物の CO2補償点は40〜100 ppmであるが、これは高温になると上昇し、大気中のCO2濃度(350 ppm)に近づく。そのため、成長速度が制限される可能性が高くなる。一方、C4植物ではCO2補償点は2〜5 ppmと低い。また、C4植物はC3植物に比べ水分使用率(光合成に利用する水と蒸散で失う水の比)が高い。これは半乾燥状態での生育が可能である事を意 味する。さらに、C4植物はC3植物に比べ、窒素利用効率が高い」「C4型光合成」 ウィキペディア)
C4
植物のように高熱と強い日照でも強く育つ代謝経路をもつというのは人間がつくったターボチャージャーのアイディアの1万倍ぐらいの知恵が必要なるだろう。
人間はもっと謙虚にならなければならない。
"There are hundreds of definitions, but we could define Biomimesis as the study of the structure and function of biological systems as models for the design and engineering of materials and machines. (Wikipedia) or as the attempt to learn from nature; it deals with the development of innovations on the basis of investigation of natural, evolutionarily optimized biological structures, functions, processes, and systems. (Potencials and Trends in Biomimetics; A. Gleich, C. Pade, U. Petschow, E. Pissarkoi)" - What is Biomimesis?, Biomimetic summit
Sprio S., Ruffini A, Valentini F, D'Alessandro T, Sandri M, Panseri S, Tampieri A., Biomimesis and biomorphic transformations: new concepts applied to bone regeneration. https://doi.org/10.1016/j.jbiotec.2011.07.034
"Bioinspiration is the development of novel materials, devices, and structures inspired by biological evolution and refinement which has occurred over millions of years. Bioinspiration aims to replicate key design principles and features in order to enhance the synthetic design. Bioinspiration differs from biomimicry in that the latter aims to precisely replicate the designs of biological materials." - Bioinspiration, by Wiki
Inspired by nature: the thrilling new science that could transform medicine, by the Guardian, 25, Oct. 2016
"Bioinformatics
/ˌbaɪ.oʊˌɪnfərˈmætɪks/ is an interdisciplinary field that
develops methods and software tools for understanding biological data.
As an interdisciplinary field of science, bioinformatics combines
Computer Science, Biology, Mathematics, and Engineering to analyze and
interpret biological data. Bioinformatics has been used for in silico
analyses of biological queries using mathematical and statistical
techniques." - Bioinformatics,
by Wiki
089■ ディープラーニング(Deep learning)
"Deep
learning (also known as deep structured learning, hierarchical learning
or deep machine learning) is
the study of artificial neural networks and related machine learning
algorithms that contain more than one hidden layer," BY DEEP LEARNIG by
Wiki
な おこの記事にはコメンタリーが"This article may contain an excessive amount of intricate detail that may only interest a specific audience"とある。人間のラーニングは機械のラーニングのようにはどうも「公平無私」ではないようだ!(半分、ジョーク)
ディー プラーニングへの「人間の理解」のキモは、ニューラルネットワークにおける、パーセプトロンの働きである:「ニューラルネットワークにおいて重要なのは、この パーセプトロンが大量に取り付けられ、優先度設定が使えば使うほどより正確に洗練されていく、ネットワーク化された装置と言う部分なのです」(Stone Washer's Journal, http://stonewashersjournal.com/2015/03/05/deeplearning1/2/)
■ディープラーニングにおける哺乳動物のカテゴリー分けのシミュ レーション
作 図は、3つの入力だが、4つの入力からなるパーセプトロンを考えてみる。「恒温の有無」「肺呼吸の有無」「胎生の有無」「足の有無」の弁別を考えてみ る。通常の哺乳類はすべてを満たすので4点。しかし、鯨は、このパーセプトロンは足がないと判断してしまうので、3点となる。鳥もまた胎生の有無で3点と なる。この判断の誤りを是正するためには、点数の重みづけを変えてみればよい。恒温3点、肺呼吸1点、胎生3点、足1点とする。5点以上で、哺乳類とする と、この得点配分だと、鯨は6点となり、めでたく哺乳類入りする。ただし、この一次のパーセプトロンを、多数繋げ、優先度の配分を使えば使うほどあげてい くとすると、よりニューラルネットワークに近いものができ、学習も可能になると考えるのが、人工知能におけるディープラーニングの考え方の基本である。 (Stone Washer's Journal, http://stonewashersjournal.com/2015/03/05/deeplearning1/2/)
090■ 人工生命(Artificial life)
些 か脱力系の日本語ウィキの解説「(1)人工生命(じんこうせいめい)は、人間 によって設計、作製された生命。(2)生化学やコンピュータ上のモデルやロボットを使って、生命をシミュレーションすることで、生命に関するシステム(生 命プロセスと進化)を研究する分野である。「人工生命」は1986年にアメリカの理論的生物学者、クリストファー・ラングトンによって命名された。人工生 命は生物学的現象を「再現」しようと試みる点で生物学を補うものである。また、人工生命(Artificial Life)を ALife と呼ぶことがある。手段によってそれぞれ、「ソフトALife」(コンピュータ上のソフトウェア)、「ハードALife」(ロボット)、「ウェット ALife」(生化学)と呼ばれる」日本語ウィキ。※番号は池田が振った)
こ の解説がウンコな理由は、人工生命は本当は第二の研究領域のことをさすのに、最初の定義で、その実体があるかのような幻惑を与えているからである。これ は、人型ロボットをロボットと思い込む日本の科学者が、技術者たちの言葉の正しい意味での「人間に奉仕する機械」としてのロボットをきちんと使っているこ とを無視して、非専門家にロボットの誤ったイメージを与えているからである。人間と機械、人間と動物をきちんと峻別してきた欧米人——アニメを愛さないア ルカイック=古典人になったが——が、AIが人間を凌駕するシンギュラリティを「思想」や「理論上の仮想のポイント」として理解できないのと同じ理由であ る。英語のウィキをみてみよう。上掲の(2)の意味でしか使っていないことがよくわかる。
"Artificial life (often abbreviated ALife or A-Life) is a field of study wherein researchers examine systems related to natural life, its processes, and its evolution, through the use of simulations with computer models, robotics, and biochemistry." -(Artificial life)
こ の理由は何か?修辞学に明るい日本の君たちには明確なはずだ。人工生命はとは、撞着語法であるからだ。すなわち、西欧の古典的な思想では人工=生命という のは形容矛盾で、それは、生命とは異なるオートマータ(オートマトン)として理解されてきた。もちろんサイバネティクスの隆盛をみるまでもなく、生命工学 の著しい進歩は、生命現象を機械としてみることから大革命を迎えたことは記憶に新しい。
こ の用語は、1986年にクリストファー・ラングトンによって創案された。
" The discipline was named by Christopher Langton, an American theoretical biologist, in 1986.There are three main kinds of alife, named for their approaches: soft,from software; hard, from hardware; and wet, from biochemistry. Artificial life researchers study traditional biology by trying to recreate aspects of biological phenomena."-(Artificial life)
The
MIT Encyclopedia of the Cognitive Sciences, The MIT Press, p.37. ISBN
978-0-262-73144-7
091■ プラットフォーム:オペレーティングシステム (OS) やハードウェアという基礎部分を、プラットフォームという。
092■ AI(ぢんこう・ちのう)(じんこう・ちのう) → 「人工知能」
人工知能とは、人間の知性・知能を計算機によって作り出すこと、作り出された〈実体〉、あるいは、
このことに関 する学問分野や実践、さらには欲望などを指す複雑な言
葉である。
「ク ラウドコンピューティングとは、ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービスなどの構成可能なコンピューティングリソースの共用プール に対して、便利かつオンデマンドにアクセスでき、最小の管理労力またはサービスプロバイダ間の相互動作によって迅速に提供され利用できるという、モデルの ひとつである。このクラウドモデルは可用性を促進し、5つの基本特性と、3つのサービスモデルと、4つの配置モデルによって構成される」翻 訳はウィキ(日語)による)- NIST Cloud Computing Program - NCCP
Cloud
computing is a model for enabling convenient, on-demand network access
to a shared pool of configurable computing resources (e.g., networks,
servers, storage, applications, and services) that can be rapidly
provisioned and released with minimal management effort or service
provider interaction. -
NIST Cloud Computing Program - NCCP
"Cloud computing
is a new form of Internet-based computing that provides shared computer
processing resources and data to computers and other devices on demand.
It is a model for enabling ubiquitous, on-demand access to a shared
pool of configurable computing resources (e.g., computer networks,
servers, storage, applications and services), which can be rapidly
provisioned and released with minimal management effort. - Cloud computing,
by Wiki
[1]Hassan, Qusay (2011). "Demystifying Cloud Computing" (PDF). The Journal of Defense Software Engineering. CrossTalk. 2011 (Jan/Feb): 16–21. [2]Peter Mell and Timothy Grance (September 2011). The NIST Definition of Cloud Computing (Technical report). National Institute of Standards and Technology: U.S. Department of Commerce. doi:10.6028/NIST.SP.800-145. Special publication 800-145.
ク
ラウド・コンピュティングの反対語は:on-premises。言い方を変えると、クラウドとは「出来合い系のサーバ群」だということができる(→「クラウド・コンピューティングの9つのイメージ」)。
Source: https://en.wikipedia.org/wiki/Cloud_computing
オ ン・プレミシズ(on premises)あるいはオ ン・プレミシズ・ソフトウェア(On-premises software)とは、リモートやクラウドを利用せずに、組織や個人が単体で回しているコンピュータのことである。その単体がインターネットで繋がれ ば、いかなる強固なファイアーウォールを構築してもなお、実質的にそのマシンは(部分的であれ/全体であれ)他のユーザーからみれば、オフ・プレミシズ (off-premises)状態になっている。なおプレミス(premise)とは哲学や論理学での「前提」という意味である。
"On-premises software (sometimes abbreviated as "on-prem") is installed and runs on computers on the premises (in the building) of the person or organization using the software, rather than at a remote facility such as a server farm or cloud. On-premises software is sometimes referred to as “shrinkwrap” software, and off-premises software is commonly called “software as a service” ("SaaS") or “cloud computing.”" - On-premises software
094■ デジタル・モデリング/デジタル・ファブリケーション Digital modeling and fabrication
"Digital modeling and fabrication is a design and production process that combines 3D modeling or computing-aided design (CAD) with additive and subtractive manufacturing. Additive manufacturing is also known as 3D printing, while subtractive manufacturing may also be referred to as machining," - Digital modeling and fabrication, by Wiki
Schematic modeling of Climate Change - Phillipe Rekacewicz - Strategic Plan for the U.S. Climate Change Science Program [pdf]
095■ フィンテック financial technology, FinTech, or Fin Tech
"Financial technology (FinTech or fintech) is the new technology and innovation that aims to compete with traditional financial methods in the delivery of financial services. The use of smartphones for mobile banking and investing services are examples of technologies aiming to make financial services more accessible to the general public. Financial technology companies consist of both startups and established financial and technology companies trying to replace or enhance the usage of financial services existing financial companies." - Financial technology, by Wiki
#126 からの再掲:「フィ
ンテック(FinTech)と呼ぶ。Finance(金融)とTechnology(技術=テクノロジー)を組み合わせたことばである。もともと金融と
ICTの関係は、金融工学を含めて深い関係にあったが、それをIoT等が、さらに加速するという意味で、人口に膾炙することになった。経済特区や地域振興
のために、これを活かそういう動きがあるが、仮想通貨をふくめて、これらはコンピュータ端末や大規模なサーバーなどのクラウド・コンピューティングを駆使
しているので、場所の制約はそれほど受けないこと、大規模な単純労働力を必要としないことをよく理解しておく必要がある。」
ウィ キノミクス(Wikinomics.com)5原則と は、1)オープン、2)コラボレーション、3)共有、4)倫 理、5)相互依存(タプスコットとウィリアムズ 2013:Chap.01, 437)。
文 字どおり、チームで動くこと。ただし、高度汎用力の実装におけるチームワークは、通常言われているようなスポーツや工場のような規格化された動きを管理す るコーチング手法とは異なる何かが要求されることは言うまでもない。
「現
代の軍事社会学者によると、個人は自分を社会のある社会階級の一員としてみるよりも特定の技能集団の一員としてみており、自分の仕事に対する技術面での誇
りが基本的な仕事の動機になっているという。よく統制がとれ、技術的に効率の高い部隊では、チームワーク精神という強力なイデオロギーが存在し、これが、
技術に対する現代の畏怖と合わさって、指揮・管制の伝統的な技法にとってかわるか、少なくともそれを補うことになっている。」(p.19)【出典】メア
リー・カルドー『バロック的兵器廠』(邦訳:兵器と文明)、1986/Kaldor,Mary.,"The baroque
Arsenal",Marsh and Sheil,1981
098■
チームワークからネットワークへ From team-work to Net-works
「高
校生天体観測ネットワーク(Astro-HS)は、以下のような活動を通して高校生の天文活動を支援しています。1)【天文現象の観測】年度ごとに観測
テーマを決め、観測ガイドの発行などを通して参加グループの観測の支援を行っています。2)【観測データの交換】全国に張り巡らされたネットワークによる
観測で得られたデータを参加グループに提供し、独自の研究の支援を行っています。3)【参加グループの交流】メーリングリストの運営に加えて、日本天文学
会ジュニアセッションに合わせて全国フォーラムを企画し、参加グループ同士の意見交換や交流などを行える場を設けています。」Astro-HSの活動より
団 藤保晴さんというネットブロガーはなかなかイケてます〜♪:《インターネットで読み解く》 重要と思われる記事をピックアップしましょう。授業のディスカッションの教材になります。
「イ
ンタラクティブなゲームという形式は、好奇心、学習、想像、新しい発想を促す」(タプスコット&ウィリアムズ
2013:150)——タプスコット、ドンとアンソニー・ウィリアムズ(2013)『マクロウィキノミクス:フラット化・オープン化・ネットワーク化する
社会をいかに生きるか』夏目大訳,東京:ディスカヴァー・トゥエンティワン(→協
働術A2017)
し ばしばコンシューマー(消費者)からプロシューマへというスローガンで語られる。ウィキペディア(日本語)によると「生産消費者 (せいさんしょうひしゃ、prosumer) もしくは生産=消費者、プロシューマーとは、未来学者アルビン・トフラーが1980年に発表した著書『第三の波』の中で示した概念で、生産者 (producer) と消費者 (consumer) とを組み合わせた造語」といわれる。
プ ロデューサー(生産者)が、その生産物/製造物の質をあげるためには、コンシューマーの視点が必要であるが、その視点をさらに洗練されていくためには、コ ンシューマーも仮想でもいいので、プロデューサーの視点をもつことが重要だ。だとしたら、持続可能性 開発の緒ゴール(SDGs)の理念が重要だとすれば、製品のあらゆる利用者はプロシューマであるべきであり、実際にそのように振る舞うことが起 こっているということが現実なのである。
特
別な自覚的な学習をしなくてもえられる専門知のこと。子供が大人になっていく過程で大人が自然に身に付けているような特別な知。——参照文献:『我々みん
なが科学の専門家なのか? 』 ハリー・コリンズ著 ; 鈴木俊洋訳,法政大学出版局 , 2017.4. - (叢書・ウニベルシタス ; 1055)
大
学の多くのスタッフが自分だけは具有していると信じている「専門知」をこのように呼ぶ。なおこの解説は皮肉である。——文献:コリンズ(2017:85)
言 わば、専門家を選ぶための知識のように、その専門領域についての知識に精通していなくても、その専門家を観察し、いくつかのインタビューをするだけで、そ の人の資質を見抜けるような知である。実践知に近い。——文献:コリンズ(2017:99)
105■ セカンド・マシン・エイジ(the second machine age)
Andrew McAfeeとErik Brynjolfssonの共著によるデジタル経済についての新しい本、The Second Machine Age: Work, Progress and Prosperity In a Time of Brilliant Technologies のなかで紹介されている、インタネットテクノロジーの新しい進歩についての提言のこと。とりわけ、彼らはそのような革新/刷新を「第二の産業革命」とまで 呼ぶ——耳タコでいったいこれまで何度も聞かされてきたクリーシェなのだが。
重 要なポイントは、機械やネットの刷新によって、我々の世界が根本的変わってしまったのだというよりも、機械と人間のハイブリッド、サイボーグ化により、人 間が機械をつかって革命をおこした(=産業革命)ことでもなく、また、人間が機械に使われて怒った人間が機械をぶち壊したこと(=ラッダイト運動)でもな く、人間と機械がある意味、調和的に共存しつつ——ようやく人間が機械をまともに使えるようになった——人間と機械の共進化がようやく始まるような共通の プラットフォームができたということだろう。
彼
らは、タプスコットとウィリアムズの『マクロウィキノミクス』のように、現
在の社会の変貌を予言し、また、それを推し進めるよう提言している(→マカフィーとブリョンソン「政策提言」『セカンド・マシン・エイ
ジ』)。
106■ ヴィタエ・サービス(Vitae at University campus)
ヴィ タエ・サービス(Vitae at University campus)とは、大学がおこなう、博士号取得のためのさまざまな学術支援(アカデミック・キャリアー)の窓口のことである。ヴィタエ(vitae)と は、人生や生活のラテン語[単数形(属格、与格)/複数形(主格、呼格)]である。ラテン語でも英語でも履歴書のことをクリクム・ヴィタエ (curricum vitae)と呼ぶが、そのような大学における学位が学者の人生にとって重要なであることを意味している。
ヴィ タエで、もっとも有名なのは、the Career Development Organisation, CRAC が運営している同名のサイトである。この組織は英国を中心とした大学のコンソーシアム的な組織である(About us, CRAC)
++
https://en.wiktionary.org/wiki/vita#Latin
++
景
観の権利概念をめぐる動きについて考える時、僕たちは時空間の異なる3つの位相について考える必要がある。それは(i)17世紀初頭の英国、(ii)
1970年代の米国、そして(iii)21世紀以降の日本である。
”It is a long established principle in English Law, first recorded in 1610, that a land owner can not protect the view that he has from that land; the rationale is that it would unduly limit the freedom to build on one's own land and thereby hinder beneficial development. However this basic premise, under specific circumstances, has been successfully challenged in the Court of Appeal.” -The right to a view, https://www.wrighthassall.co.uk/knowledge/legal-articles/2010/04/10/right-view/
景 観権とは、自然・歴史・文化的な景観を人々が享受する権利のことである。景観権は、眺望権(the right to a view)から出発した、今日で言われるところの米国で1970年以降に膾炙した環境権(a human right to a decent and healthy environment)のひとつとして考えられる。
日 本では、景観法(2004 年12月施行)で、居住者が景観からの恩恵を受ける利益を、景観利益(Landscape profits)とみなしている。
「良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なもので あることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなけ ればならない」景観法第二条
景 観利益(Landscape as an Interest)は、谷口聡(2014:34)によれば、私法上の保護法益の概念として位置づけている。また谷口は、景観を享受する利益を景観権と景観 利益というふうに区別せずに指摘している。
※ 谷口聡(2014)「判例における「景観利益」概念の確立:私法上の法益としての景観について」『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会)16 (4):33-50.
TLO とは、Technology Licensing Organization(技術移転機関)のアクロニムです。
経 産省の以下のページを参照してください。日本のTLO法(大学等における技術に関する研 究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律,法律第52号)は1998(平成10)年5月に制定、8月より施行されています。
http://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/tlo.html
109■ スピルオーバー効果(spill-over effect)
狭
義には、公共サービスからえられる公衆への利益や便益が、それをサービス供給している自治体の行政区域をこえて,費用負担していないほかの行政区域にまで
拡散すること。いわば「コモンズの悲劇」の逆のヴァージョンである。しかし、それを学問の世界にあてはめてみると、あるマイナーな研究領域が細々と続いて
いたが、それに近い分野でノーベル賞の受賞があったり、国際的に評価を受けることで、その分野の研究に注目があたり、科学研究費補助金などの次年度で時限
付き科目になったり、またマスコミの取材をうけたり、関連する企業から共同開発のオファーがくることがある。これもある意味で、スピルオーバー効果であ
る。
110■
Voyant tools
Voyant-tools.org が提供している、テキストコーパスの分析ツール。日本人の研究者、小風尚樹(Naoki Kokaze), 佐藤正尚(Masanao Sato), 杉浦清人(Kiyoto Sugiura), 鈴木親彦(Chikahiko Suzuki), 王一凡(Yifan Wang), and 永崎研宣(Kiyonori Nagasaki)たちが開発したオンライン上のフリーソフト。
111■ 「ノーベル賞受賞者のところでポスドクをしてはいけない」という米国の諺について
「米 国ではノーベル賞受賞者のところでポスドクするなという謂がある。日本の文科省や学振はノーベル賞受賞者に金ばら撒いて招致し、日本の若い研究者やポスド クにAKB48の握手会のように接触させようとする。どちらがワイズか皆さんはお判りでしょう」——垂水源之介氏のFB発言より
そ の理由は、スーパスターの研究者の元で働いても、研究成果搾取されるだけで、自分が筆頭著者になるチャンスはにほんとても少なくなるだろうという含意があ る(齋藤と牧 2017:49)。
齋藤裕美・牧兼充「スター・サイエンティストが拓く日本のイノベーション」『一橋ビジネスレビュー』65(1):42-55, 2017.
暗黙知(tacit knowledge)とは次のような知識(form of
knowledge)のことである。経験にもとづく身体上あるいは勘のような感覚上の知識であり、言語的表現ができないものをさす。
エ
スノグラフィーとは、フィールドワークと いう経験的調査手法を通して、人々の社会生活について具体的
に書かれた、対象となる個人や集団の〈ある情報〉を知るために、体系的体裁の中にまとめられた記述や、その認識論のことである。(→「民族誌:ethnography,みんぞくし,エスノグラフィー」)
114■ デザイン科学(science of design)
ハー バート・サイモン(Herbert Alexander Simon, 1916-2001)による提唱:デザイン科学とは「デザインの過程に関する一つの学問であり、しっかりとし た知的裏付けがあり、分析的で、部分的に形式化可能かつ部分的に経験的である、教授可能な分野」のことである(Simon 1969[1973])[→出典:「デザイン思考」]
出
典:https://en.wikipedia.org/wiki/Herbert_A._Simon
115■ デルフト・デザイン・ガイドにあるデザイン思考 →「コミュニ ケーションデザイン入門」を見よ
Stanford d. Schoolは、通常「でぃー・すくー る」と呼ばれる米国のスタンフォード大学にある大学院教育プログラムである。
小 文字で d. School(ディ・ドット・スクール)と書くのは、大文字のB. School がビジネススクールつまり経営大学院(3年の修士課程に相当しMBA, Master of Business Administrationを取得する)を差すのに対抗して、小文字でd. School(ディ・スクール)と奇を衒ってつけたものである。2005年に創設された。2000年に、IDEOの創設者であるDavid Kelly がこの学校の設立準備のために退いた(代わりにIDEOのCEOに就任したのがTim Brown である)。およそまるまる5年をかけて、d. Schoolが出来上がったというわけである。
デ イヴィッド・ケリーもティム・ブラウンも、ちょい悪親父風のおしゃれな爺さんである(上掲リンクを参照)。ちなみに、デイヴィッド・ケリーは2007年に がんの宣告を受けましたが、複数の治療を受け現在、ガンサバイバーとして活躍中です。
dHealth (ディ・ヘルス)あるいはd.Health (ディ・ドット・ヘルス)とは、digital-health(デジタル・ヘルス) つまりディジタル通信技術、あるいは情報コミュニケーション技術(ICT)のインパクトを受けて、疾病対策、疾病予防、健康管理、健康増進にデジタル技術 を使っていこうとする動きである。もともと、医療機器は、単独の大型の治療・診断機械でスタンドアローンの機械の性格が強かったが、ICT技術の革新(イ ノベーション)により、当事者への健康管理やモニターとして、また気軽な相談のためのコミュニケーションツールであることが明らかになっている。
ち
なみに、アメリカ合衆国のディ・ヘルス・サミット2017のメインテーマは「老化するアメリカ人」である。http://www.dhealthsummit.org/
119■ 利用可能カスケード(Availability cascade)
利 用可能カスケード(Availability cascade)とは、ある種の集合的信念が自己増殖、肥大化するプロセス。キャス・サスティーンとチムール・クランが提唱した議論。
"An availability cascade
is a self-reinforcing cycle that explains the development of certain
kinds of collective beliefs. A novel idea or insight, usually one that
seems to explain a complex process in a simple or straightforward
manner, gains rapid currency in the popular discourse by its very
simplicity and by its apparent insightfulness. Its rising popularity
triggers a chain reaction within the social network: individuals adopt
the new insight because other people within the network have adopted
it, and on its face it seems plausible. The reason for this increased
use and popularity of the new idea involves both the availability of
the previously obscure term or idea, and the need of individuals using
the term or idea to appear to be current with the stated beliefs and
ideas of others, regardless of whether they in fact fully believe in
the idea that they are expressing. Their need for social acceptance,
and the apparent sophistication of the new insight, overwhelm their
critical thinking." - Availability
cascade
オー プンソース (open source) とはソースコードを公開することが、一番最初の意味。オープン・ソース・モデルとは、オープンな協働を推奨する脱中心化された開発モデルのことである。
The
open-source model is a decentralized development model that encourages
open collaboration - Open-source
model
"E-government (short for electronic government) is the use of electronic communications devices, computers and the Internet to provide public services to citizens and other persons in a country or region. According to Jeong, 2007 the term consists of the digital interactions between a citizen and his or her government (C2G), between governments and other government agencies (G2G), between government and citizens (G2C), between government and employees (G2E), and between government and businesses/commerces (G2B). E-government delivery models can be broken down into the following categories:[1] This interaction consists of citizens communicating with all levels of government (city, state/province, national, and international), facilitating citizen involvement in governance using information and communication technology (ICT) (such as computers and websites) and business process re-engineering (BPR)." - E-government
[1]
Jeong Chun Hai @Ibrahim. (2007). Fundamental of Development
Administration. Selangor: Scholar Press. ISBN 978-967-5-04508-0
122■
「サイバー攻撃は戦争犯罪にたりえる」——パトリック・リン(世界経済フォーラム・サイトより),2017年7月17日
"The term "ideagora" is used to describe a type of online community known as a “marketplace for minds”. The word comes from “agora,” an ancient Greek marketplace or forum, with the addition of “idea” making it a marketplace or forum for ideas and innovation. The so-named ideagora is becoming increasingly important as businesses are beginning to use the scientists and problem-solvers on the Internet to find solutions to the problems they are facing." http://en.citizendium.org/wiki/Ideagora
越 境EC(えっきょうイーシー)とは、インターネット通販サイトを通じた国際的な電子商取引で、経済産業省が提唱しているビジネスモデル。ECは、電子取引 (electronic commerce)のこと。
電 子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省)
「日 本の高度成長期が終わると、幅広い権限を保持する割に他の省庁に比して許認可行政や補助金行政ができないことから、この省では否応なしに単発の政策アイ ディアで勝負せざるを得なくなってきている」
フィ
ンテック(FinTech)と呼ぶ。Finance(金融)とTechnology(技術=テクノロジー)を組み合わせたことばである。もともと金融と
ICTの関係は、金融工学を含めて深い関係にあったが、それをIoT等が、さらに加速するという意味で、人口に膾炙することになった。経済特区や地域振興
のために、これを活かそういう動きがあるが、仮想通貨をふくめて、これらはコンピュータ端末や大規模なサーバーなどのクラウド・コンピューティングを駆使
しているので、場所の制約はそれほど受けないこと、大規模な単純労働力を必要としないことをよく理解しておく必要がある。#095
にウィキからの英語の引用があるので、参照されたし!
ミャ ンマー(ビルマ)西南部でおこっているムスリムへの弾圧・難民化問題。130万人の人がいる。ロヒンギャは(ムスリム)1950年代以降に「民族」として のアイデンティティを持ち始めた、またビルマ政府も非仏教徒という扱いのなかで「少数民族」として位置づけられていったという。アウン・サン・スー・チー 政権がロヒンギャ問題を制御できないのは、国際政治学者の六辻彰二氏によると、1)民主政権に対する軍部の勢力の強さ、と2)仏教徒国民によるムスリム排 除やヘイト思想が背景にあると指摘している。
128■ CO*-DESIGN BOOK #02
129: 動的平衡(dynamic equilibrium)
「動的平衡(dynamic equilibrium)とは、物理学・化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態を 言う。/系(システム)と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。 なお、ミクロに見ると常に変化しているがマクロに見ると変化しない状態である、という言い方もできる。これにより他の分野でも動的平衡という言葉が拡大解 釈されて使われるが、意味は正確には異なる。……(実例として)可逆反応で、正反応と逆反応の速度が同じ場合には動的平衡となり、反応系を構成する各物質 の濃度は変化しない(化学平衡)。また密閉容器の中に水と空気を入れておき、水蒸気が飽和蒸気圧に達すると、水の蒸発速度と水蒸気の凝縮速度が等しくな り、動的平衡に達する(相平衡)。熱平衡でも、実際には熱エネルギーはすべての方向へ全く同じように伝わっている、つまり動的平衡状態と考えることができ る。(ただし)動的平衡という用語は、分野によっては、むしろ物理用語でいうところの「定常状態」を使うべき場合もある。定常状態とは、系が平衡状態にな い外界と接している場合にのみ起こり、流れがあるが時間変化が見られない、すなわち系への出・入の速度が等しい状況をいう。たとえば、経済において、資本 のフローが一定であれば、安定した市場が成立する。また、生物の出生率と死亡率が同じ場合、個体数は変化しない。このように、経済学・生態学・人口学で も、本来とは少し異なる意味で、動的平衡という言葉が使われている。」動的平衡)
Dynamic equilibrium "In chemistry, and in physics, a dynamic equilibrium
exists once a reversible reaction occurs. The ratio of
reactants/products changes, but substances move between the chemicals
at an equal rate, meaning there is no net change.
Reactants and products are formed at such a rate that the concentration
of neither changes. It is a particular example of a system in a steady
state. In thermodynamics, a closed system is in thermodynamic
equilibrium when reactions occur at such rates that the composition of
the mixture does not change with time. Reactions do in fact occur,
sometimes vigorously, but to such an extent that changes in composition
cannot be observed. Equilibrium constants can be expressed in terms of
the rate constants for elementary reactions."- https://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_equilibrium .
130:MOOC, Massive Open Online Course (ムーク:大規模公開オンラインコース)
MOOC,
Massive Open Online Course
(ムーク:大規模公開オンラインコース)とは、オンライン(インターネット)上でなんら受講制限をもうけずに、希望する人が受講できる大規模公開のオンラ
インの受講コース(授業やプログラム)のことである。2012年ごろから米国ではじまった。
"What Is a MOOC?
- A massive open online course (MOOC) is a model for delivering
learning content online to any person who wants to take a course, with
no limit on attendance." - EDUCAUSE.
コスモポリタンとは、古代ギリシャの都市国家(ポリス)に属さない人をいう。このことからやがて、特定の国家に帰属しない人という属性をさす言葉から、やがてそのような帰属意識をもたない人と「積極的な意味」に見直されることになった。
OEDには、コスモポリテ(cosmopolite)の意味を、次のように書く:[ad. Gr. κοσµοπολίτ-ης
citizen of the world, f. κόσµο-ς world + πολίτης citizen. Cf. mod.F.
cosmopolite.] 1.1 A ‘citizen of the world’; one who regards or treats
the whole world as his country; one who has no national attachments or
prejudices. Common in the 17th c.; but app. revived early in the 19th
c., and often contrasted with patriot, and so either reproachful or
complimentary. To this 19th c. revival nearly all the derivatives
belong.
自他共に認めるコスモポリタンは、悪く言えばデラシネ(déraciné)——根無しぐさ——英語であれば、根っこを引っこ抜かれた (uprooted)な人、あるいは無国籍人(stateless person)と呼ばれるようになる。だが、これは、帰属する国家や共同体(ポリス)を、個人が自ら切り離すということと、社会のほうがデラシネにしてし まい、結果的にコスモポリタンになること(=消極的な意味は難民や[ユダヤ人との比喩から]ディアスポラ)と呼ばれる。
︎▶法に従うひとがコスモポリタンである︎▶︎︎コスモポリタンになるには複数の経路▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎
リンク
文献
その他の情報
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