正統的周辺参加
Legitimate Peripheral Participation, LPP
解説:池田光穂
正統的周辺参加(LPP)とは、実践共同体という学習の集団のなかで、新参者が受け入れてられ
て、最後には中核メンバーや、みんなから一目おかれるエキスパート(師匠)になるプロセスの一番最初の段階のことを、このように呼ぶ。
状況的学習において、実践共同体=実践コミュ ニティに参与することを通して学ばれる知識と技能の初期のプロセスのこと を、正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)/正統的周縁参加という。あるいは、状況的学習とは、「さまざまな社会的活動に参与することを通して学ばれる知識と技能の習得実践のこと」である。
実践コミュニティへの参加は、状況的学習の深度により正統的周辺参加(LPP)から十全参加(full participation)に移行すると、モデル化されている。
状況的学習とは、外部表象化された〈知識や技能〉を学習者の内部に取り込むというメタファー (例:数式が頭に入った。ろくろを上手に回すことを覚えた)で、語ったり理解したりすることのできない学習——これを古典的学習という——への批判あるいは乗り越えるために、人工知能研究者であるジー ン・レイブと人類学者エチエンヌ・ウェンガーの同名の書籍, "Situated Learning"(1991)において主張された言葉である。
正統的周辺参加が成立するための場ないしは学習を成り立たせる構成主体は、実践共同体(実践コミュニティ)と呼ばれる。
図:実践コミュニティとしての霊媒カルト(正統的周辺参加から十
全参加までが下から上までのモーメントで示されている)/右は最近接発達領域(ZPD)
Terminoligies Links
●現場力と状況的学習の関係
「現場力(げんばりょく)と は、実践の現場で人が協働する時に育まれ、伝達することが可能な技 能であり、またそれと不可分な対人関係的能力などの総称のことをさす。現場力を学問的に議論しようとする際に、欠かせない参照となる議論は、レイブとウェ ンガーに よる状況学習論である。状況[的]学習は、実 践コミュニティに正統的に周辺参加(LPP)するという実践を通して、知識と技能を 学ぶ学習の様式である。正統的周辺参加により構成される状況学習は、先生の教示によって外部の知識を取り込むような古典的学習と、著しく異なる学び方のや り方である。他方、現場力が議論される場は、正統的周辺参加による状況学習論から言えば、十全参加が達成されたメンバーシップが生み出す最大で最良(例え ばミスが少ない高度信頼的)な成果 を生み出す場というように考えられている。状況学習論が力点を置くのは、学習者という主体であるのに対して、現場力の議論が力点がおく のは、そのような(最大ないしは最良)の実践が生みだされ、かつその実践を保証する「現場」である。これらの一連のこと(すなわち古典学習論、状況学習、 現場力)を、認知、身体、状況(場)の 位置づけに関して、それぞれの特性をあげれば下の表のようになる」
● 用語集
【文献】
附 録 用語集
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099