隠喩・換喩・提喩
metaphor , metonymy, and synecdoche
解説:池田光穂
隠喩(metaphor):いんゆ・メタファー
表象による表現することの中には、喩(たと)えという修辞が使われるために、表象よりも曖昧 なものがあり、それは隠喩(いんゆ、メタファー)と呼ばれる。隠喩は、換喩(かんゆ)との対比のなかで、より狭く定義すれば、全体を全体で表象するような 修辞(=表現のシステム)である。隠喩の例は、王をライオンで表象するようなものである。なぜならばライオンは動物の中の王、頂点に君臨するものだから、 そして王もまた王国の頂点に君臨するから。
換喩(metonymy):かんゆ・メトニミー
表象による表現の一種であるが、隠喩と異なり(上掲参照)、部分をもって全体を表象する修辞 のことである。メトニミーと読む。この換喩(メトニミー)の例は、王を王冠で表象するようなものである。王は身体の一部に王冠を戴く存在だからである。し たがって、隠喩が王とライオンを全体的な関係で表象しているのに対して、換喩は部分と全体の関係を関連性ないしは延長としてみていることがわかる。
提喩(synecdoche):ていゆ・シネク ドキ
表象による表現の一種であり、両者の関係が包含・発展(成長)・変化の関係で示される修辞で ある。提喩(ていゆ)あるいはシネクドキと呼ばれる。よく使われる例として「親子どんぶり」がある。どんぶりに載っている卵と鶏は親子でも何でもないが、 鶏は卵の成長のタイプであるので、親子という喩(たと)えはシネクドキに相当する。ロマン・ヤコブソン(1973:209)はロシアの婚礼歌を例文にした 分析のなかで、玄関は屋敷に対して提喩の関係にあるとのべている[文献はこちらのページ]。
寓意(allegory):ぐうい・アレゴリー
アレゴリー。伝えたい意味内容を別の表現(とくに物語)で置き換えること。
文献
池田光穂「感染症の隠喩」『看護人類学入門』Pp.183-194、2010年
関連リンク
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