隠喩→パラダイム/換喩→シンタックスの連関図
Culture and Communication by Edmund Ronald Leach
解説:池田光穂
エドマンド・リーチ『文化とコミュニケーション』(原著1976年)第2章から第5章までの議論を一望監視(パノプチック=パースペクティヴ) として表象するならば次の2つの作図を眺めることによって、容易に理解することができる。
その前に、まずリーチの用語法の確認は、こちら(指標=インデックスの世界)を ごらんください。
また隠喩と換喩、あるいは提喩についての区分を知りたいかたはこちらへ(→隠喩・換 喩・提喩)
エドマンド・リーチはあきらかにロマン・ヤコブソンの隠喩と換喩による、パラディグマティック=パラダイム(範列的)とシンタグマティック=シンタグマ(統語的・統辞 的)という区別とそれぞれの対応関係について理解(あるいは意識)した上で、下記のような議論を展開している。(→関連ページ「コミュニケーション・スタディーズ」)
パラダイムとは、文法における単語(動詞や名詞)の活用表のことをさす。あるいは活用ルール。そこから、トーマス・クーンは学問領域が規定する、研究のやり方の(言語化さなかったり目に見えないものも含めて)規則をパラダイムと読んでいる(→クーン『科学革命の構造』)
34ページから始まる用語法の解説は、じつは第5章でまとめられる「変換」への議論を遂行するための舞台装置なのだが、それらの構造的配列は下 のような表にまとめられる。この表の見方は、上下のセルで区切られる組み合わせのセットは、それぞれの横に広がる組み合わせのセットと同型(=隠喩として 一致)するようになっているということだ。
■ 神話の構造分析(レヴィ=ストロース)に関する、隠喩と換喩による「変換」(第5章)の説明は、下図によって示される。
邦訳58ページの図(黒字)は下記のようになっている。赤字は池田による説明である。
◆ この議論のオリジナルの範型を提供したヤコブソンは次のようにまとめる(→サイト内の引用場所)。
「脈絡の構成要素を合体させるものは隣接性[→メトニミー]という外的関係 であり、代置集合の基盤となっているものは相似性 [→メタファー]という内的関係である」(ヤコブソン 1973:33)。
相似性/隣接性
隠喩的方法/換喩的方法
相似性の異常(similarity disorder)→隣接性が優位に:動物を表現するのに動物園で観た順に動物を列挙する。
隣接性の異常(contiguity disorder)→相似性が優位に:統辞規則の異常いわゆる電文体の発話
【文献】
Leach, Edmund Ronald. - 1976. - Culture and communication : the logic by which symbols are connected : an introduction to the use of structuralist analysis in social anthropology / by Edmund Leach. - Cambridge ; London [etc.] : Cambridge univ. press, 1976. - 105 p. ; 24 cm. - (Themes in the social sciences):『文化とコミュニケーション : 構造人類学入門 』/ エドマンド・リーチ著 ; 青 木保,宮坂敬造訳. -- 紀伊國屋書 店, 1981. -- (文化人類学叢書)
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