ヘーゲルと現代社会
Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1770-1831
このページの目的は、ヘーゲル: イラスト版 / L・スペンサー文 ; A・クラウゼ絵 ; 椋田直子訳, 現代書館 , 1996 . - (For beginners シリーズ, 77)の解説である。なお表は、最後のページから表紙にむかって「遡上するように読解」している・
●G.W.F.ヘーゲルのナツィオン(Nation)とフォルク(Volk)の違いについて
・家族は、国民=ナツィオン(Nation)へと拡大し、家族は民族=フォルク(Volk)へと拡大すると、両者を同義として扱う面がある(『宗教哲学』17.52f.,72.)ズーアカンプ(Suhrkamp)版
・民族=フォルク(Volk)は、最初のうちはまだ国家(Staat)にはなっていない。家族などが国家状態に移行は、理念一般が形式を備えた民族=フォルク(Volk)のなかで実現されるだろう(『法の哲学』349節)。
・総じて、民族=フォルク(Volk)は、国家(Staat)の内なる呼びかけに、国家間には国民=ナツィオン(Nation)と使い分けているふしがある。
・ただし、国民=ナツィオン(Nation)の内部 が分節化している時、それはまとまりを持たない群衆で、国民=ナツィオン(Nation)にはなっていない(『法の哲学』301節)。これは『歴史哲学講 義』における、東洋では王が、ギリシャやローマでは一部の人が自由を享受するのに対して、ゲルマンではすべての人間が自由でなければならない、というヘー ゲルの主張にかなっている。民族=フォルク(Volk)は、自然集団の延長を免れないが、国民=ナツィオン(Nation)には、そうならなければならな い命令語法のようなニュアンスがある。
・『ドイツ憲法論』(1, 472ff.)には、ひとつの人間集団が国民=ナツィオン(Nation)であるためには、「所有物全体の共同保有」の意識が重要であり、国民=ナツィオ ン(Nation)の構成員のあいだで、習俗、教養、言語あるいは宗教の同一性を条件としない(=国民の間に習俗、教養、言語、宗教の多様性は問題になら ない)と主張しているため。本源的紐帯的なものを民族=フォルク(Volk)、社会構成的な契約にもとづく紐帯を国民=ナツィオン(Nation)として いる節がある。
頁 |
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1 |
現代哲学の歴史は、ヘーゲルの体系への挑
戦である |
170 |
・ミネルヴァの梟の解釈 |
2 |
フランシス・フクヤマ『歴史のおわり』 |
168 |
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3 |
「歴史はつねに正しい」 |
167 |
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4 |
脱構築 |
164 |
・デリダ:否定の弁証法としての脱構築 ・コジェーヴ ・アンドレ・ブルトン ・ジョルジュ・バタイユ ・ドゥルシラ・コーネル(Drucilla Cornell, 1950-) |
5 |
否定の弁証法 |
163 |
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6 |
批判理論 |
162 |
・アドルノ ・マルクーゼ ・ヴァルター・ベンヤミン |
7 |
ヘーゲルとマルクスの再発見 |
160 |
・ディルタイ ・ヘルマン・ノール版『ヘーゲル初期神学論集』 ・1920マルクスの経済学哲学草稿(1844)が刊行 ・ルカーチ ・ブロッホ ・ホルクハイマー |
8 |
ポストモダンの袋小路 |
158 |
・メルロ=ポンティ ・デリダ ・フーコー ・ローティ |
9 |
ヘーゲルは今でも意味を持つか |
157 |
・フロイトやソシュールの視点からみた
時に…… |
10 |
実存主義の起源 |
155 |
・ヘーゲルを駆逐するシェリング
(1841) |
11 |
理性のおわり |
154 |
・コント ・キルケゴール:理性の破産 |
12 |
ドイツ・イデオロギー |
152 |
・ヘーゲル左派 ・ドイツ・イデオロギー(1845-1846) ・フォイエルバッハ論(1845) |
13 |
フォイエルバッハ『キリスト教の本質』 |
151 |
・フォイエルバッハ:絶対精神の地位に
人間を着座させるプロジェクト |
14 |
ヘーゲル左派 |
150 |
・モーゼス・ヘス |
15 |
ヘーゲル、右派、中間派、左派 |
149 |
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16 |
ヘーゲル派哲学の衰退 |
148 |
・ベルリン以外では、ヘーゲル派はマイ
ノリティ。では何がデカイ顔をしていたのか?→新カント派、ロマン主義 |
17 |
終末 |
147 |
・1831年11月13日永眠、フィヒ
テの傍に葬られる。 |
18 |
1830年イギリス選挙法改正案 |
146 |
・発禁になるも読まれる論文 ・選挙法改正だけでは社会問題は解決しない ・英国の伝統的な実証原理と、法体系論を合致させる試みだが、中産階級が権力を握るための改正であり、不十分だ、というもの |
19 |
宗教の政治 |
143 |
・1821-1831「宗教」について
の連続講義 ・ロマン派神学者のシュライエルマハーに論戦をしかける。 ・「犬こそ良きキリスト者」ヒンリヒス(Hermann Friedrich Wilhelm Hinrichs, 1794-1861) ・ 「ハイデルベルクでヘーゲルに師事、ハイデルベルク大学の私講師を経て、ハレ大学教授。主著は、「学問と内的な関係における宗教について」(あるいは単に 宗教論)である。師のヘーゲルはこれを絶賛、出版を大きく支持した。また、この著の序文にヘーゲルが感情を原理とする宗教を批判する内容を書き(これは同 僚のフリードリヒ・シュライアマハーを牽制する意味も大きい)、ヘーゲルが汎神論者として攻撃されるきっかけを作った。これはヘーゲルが、感情は、どんな 気まぐれな未規定な内容でも、感情として持つことが可能であり、結局は主観によって決められるものであるとし、宗教は真理の実体的で客観的な内容を目指す ように要求されており、感情ではこれはなさない、と主張したためである。これがシュライアマハーを刺激し、ヘーゲルが汎神論者と見なされるようになり、 ヘーゲルは没するまでこれの弁明を余儀なくされたという。 このようにヘーゲルの宗教哲学論の形成に重要なきっかけを残した人物であった。」 |
20 |
宗教の三段階史 |
142 |
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21 |
神秘的図形 |
140 |
・ヘーゲルの思想は、理性の神秘思想か? |
22 |
三位一体 |
139 |
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23 |
宗教の哲学 |
138 |
・フォルクスレリギオン |
24 |
芸術のおわり |
136 |
・芸術はやりつくした感=歴史の終わりのメタファー |
25 |
アイロニーの問題 |
134 |
・シュレーゲル ・ノヴァーリス |
26 |
芸術よりも上位のものとしての哲学 |
132 |
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27 |
最上位芸術としての詩 |
131 |
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28 |
絵画の理想 |
130 |
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29 |
五つの芸術 |
129 |
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30 |
ロマン的芸術 |
128 |
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31 |
古典的芸術——古代ギリシア |
127 |
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32 |
象徴的、古典的、ロマン的芸術 |
126 |
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33 |
芸術と宗教と哲学の関係 |
125 |
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34 |
芸術の哲学 |
124 |
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35 |
観念としての自然 |
123 |
・自然は観念の自己退廃 ・ヤコブ・ベーメ ・自然にも自由が、歴史が可能であることを証明することに格闘する |
36 |
科学は不完全な理解しか与えない |
122 |
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37 |
不満足な学問 |
121 |
・シェリングの哲学が、自然哲学の信用を落とす |
38 |
自然哲学 |
120 |
・自然を哲学することは、時代遅れではない、という認識。 ・シェリングの自然哲学との対比 |
39 |
未来のない自由 |
118 |
・未来もたんなるカテゴリーである |
40 |
ゲルマン世界 |
116 |
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41 |
世界史のあゆみ |
115 |
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42 |
歴史哲学 |
114 |
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43 |
現実的なものは理性的である |
112 |
・べきだ(Sollen)論は哲学ではない。 ・哲学の仕事は、理性=現実を証明すること(?) ・歴史は体系に取り込まれて、すべてが「相殺」される |
44 |
市民社会 |
109-111 |
・市民社会の外的国家 ・カール・マルクスの「法の哲学」の重視。 ・利己、搾取、個人主義、労働分化が、社会的疎外をうむ、という発想 |
45 |
人倫 |
108 |
・法の哲学(第二部道徳) ・法の哲学(第三部人倫)——家族、市民社会、国家 |
46 |
法の哲学 |
107 |
・法の哲学(第一部所有権法):ロックのいう自然なものではなく、協約による。 ・それゆえ、所有権は、個人と社会を関連づける。 |
47 |
自由の進化 |
106 |
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48 |
国家 |
105 |
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49 |
自由と国家 |
104 |
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50 |
ヘーゲルの講義 |
103 |
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51 |
道徳的主観主義を批判する |
102 |
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52 |
愛国主義と反ユダヤ主義 |
101 |
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53 |
新右派の担当 |
100 |
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54 |
ヘーゲルの政治観 |
99 |
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55 |
ナポレオンの没落 |
98 |
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56 |
ベルリンにおけるヘーゲルの公務 |
97 |
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57 |
改革者たちがヘーゲルをベルリンに招聘する |
96 |
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58 |
ついに認められた |
92 |
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59 |
知識とは何か |
88 |
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60 |
三組構造 |
86 |
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61 |
三種類の矛盾 |
84 |
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62 |
否定 |
83 |
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63 |
思考の文法 |
82 |
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64 |
アウフヘーベン=止揚 |
80 |
"to sublate" |
65 |
全体性 |
79 |
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66 |
弁証法的思考 |
78 |
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67 |
アリストテレスの論理学 |
76 |
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68 |
哲学を教えることは可能か |
74 |
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69 |
結婚と婚外の息子 |
72 |
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70 |
ヘーゲル、ニュルンベルクへゆく |
70 |
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71 |
新聞編集者 |
68 |
|
72 |
絶対知 |
64 |
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73 |
十字架への14段階 |
62 |
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74 |
主人と奴隷 |
60 |
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75 |
自己実現の過程としての歴史 |
58 |
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76 |
知の経験の科学 |
57 |
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77 |
『精神現象学』の内容 |
56 |
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78 |
ナポレオンの侵攻 |
53 |
|
79 |
『精神現象学』の起源 |
52 |
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80 |
シェリングとフィヒテの差異 |
48 |
|
81 |
イエナに到着 |
46 |
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82 |
……啓蒙主義後とドイツ観念論まで |
45 |
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83 |
啓蒙主義 |
44 |
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84 |
フィヒテ登場 |
42 |
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85 |
スピノザ登場 |
39 |
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86 |
キリスト教 |
35 |
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87 |
教会と国家 |
34 |
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88 |
哲学の精神分裂病(スキゾフレニー) |
33 |
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89 |
『批判』三部作 |
30 |
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90 |
カント登場 |
29 |
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91 |
ヘルダーリンの影響 |
25 |
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92 |
シェリングに先んじられる |
23 |
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93 |
政治経済学 |
22 |
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94 |
スイスの貴族制 |
21 |
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95 |
家庭教師時代 |
20 |
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96 |
絶対的な自由と恐怖 |
18 |
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97 |
ヘーゲルと1789年の精神 |
17 |
1789年7月14日バスティーユ襲撃からフランス革命がはじまる |
98 |
フランス革命 |
16 |
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99 |
ゲーテが見本 |
15 |
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100 |
ヘーゲルの読書 |
14 |
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101 |
ヘルダーとシェリング |
13 |
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102 |
チュービンゲンでの学生生活 |
12 |
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103 |
抄録製造機 |
9 |
|
104 |
ヘーゲルの受けた教育 |
8 |
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105 |
心理療法の出現を予感 |
7 |
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106 |
妹クリスチアーネ |
6 |
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107 |
ヘーゲルの一生 |
4 |
リンク
文献
Hegel portrait by Jakob Schlesinger 1831