1970年以降のジェンダーとセクシュアリティ理解の歴史的展開
Historical Developments in Understanding Gender and Sexuality since 1970
解説:池田光穂
シスジェンダー(Cisgender)とは、性自認(自己の性をどのように認識しているか)と生まれたときに割り当てられた性別が一致している 状態のことをさす(→「シスとトランス」)。生まれた時に女性とみなされ(例:出生 登録され)、現在の自分自身も女性と認識している人は、「シスジェンダー女性」であり、両方とも 男性の場合は「シスジェンダー男性」である。トランスジェンダー(Transgender)とは、それぞれの性別がクロスしている場合であり、そのために 「トランスジェンダー女性」 ならびに「トランスジェンダー男性」と呼ぶことができる。社会の恋愛や結婚が、「シスジェンダー女性」と「シスジェンダー男性」の組み合わせや結合でなけ ればならないと考えるのが「強制異性愛」制度というもので、多くの社会はこのシステムが動いている。「シスジェンダー女性」と「シスジェンダー男性」の組 み合わせをセクシュアリティの観点からみると、これは それぞれの「シスジェンダー女性」と「シスジェンダー男性」の間の性器結合を「ノーマル」とするものが基本になる。1970年以降の欧米を中心とした性革 命は、それに大きなゆさぶりをかける。フェラチオやクリニングスは、外性器以外の身体の部分を性器として使うことができる可能性を切り開き(=もちろん以 前からあったが寝室の中での公共性を取り戻した)。また「ソドミー」(=男性同士の性交を意味する侮蔑語)が異性愛や同性愛の性行為のヴァリエーションと して流用されるに至る。フィストファッキング(=男根の代わりに拳を使う)もそうであるが、そのような「危険な性行為」も、管理された領域のなかでは可能 になる。(ジェ イムズ・ミラーによると)男性同性愛者であったミッシェル・フーコーは、講演や授業 のために訪問したバークレー等でのカリフォルニアでの滞在中 に、(エイズ流行以前の主流であった)男性どうしのオージー(=乱交的)とドラッグカルチャーの「洗礼」を受けることになり、彼の人間理解への洞察におお きな変動を受けて『性の歴史』の第1巻の見解からの変更を余儀なくされた、ないしは、進んで思索の変化を受け入れたと言われる。また、エイズ流行は、当 初、北米の男性同性愛者に対する偏見をさらに増加させることになったが、追悼のためのメモリアルキルト運動など親密なパートナーや家族への古典的な親族意 識とは異なった「追悼のための紐帯意識」の醸成をうむことになり、最終的には男性同性愛者に対する社会的偏見の変更や是正を生み出すにいたった。同性婚 は、しばしば法的には家族や法的配偶者や法的親族の紐帯の維持のための発案に淵源すると指摘されるが、同時に同性愛者への社会的偏見の軽減と、異性婚と同 等の権利を保証するための人権概念の「拡張」というものとしての理解可能であるし、また(西欧)社会はそれを受け入れようとしている。
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文献
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
軍艦ですら船のジェンダーは女性
Columbia, personification of the United States, wearing a warship
bearing the words "World Power" as her "Easter bonnet" on the cover of
Puck, 6 April 1901.