現場力と状況学習の関係
The empowerment faculty and
sensibility in practice and the situational learning
現場力(げんば りょく)とは、実践の現場で人が協働する時に育まれ、伝達することが可能な技 能であり、またそれと不可分な対人関係的能力などの総称のことをさす(用語の定義とそれに関する 議論はこちらへ)。
現場力を学問的に議論しようとする際に、欠かせない参照となる議論は、レイブとウェンガーに よる状況学習論である。状況[的]学習は、実 践コミュニティに正統的に周辺参加(LPP)するという実践を通して、知識と技能を 学ぶ学習の様式である。正統的周辺参加により構成される状況学習は、先生の教示によって外部の知識を取り込むような古典的学習と、著しく異なる学び方のやり方である。
他方、現場力が議論される場は、正統的周辺参加による状況学習論から言えば、十全参加が達成されたメンバーシップが生み出す最大で最良(例えばミスが少ない高度信頼的)な成果 を生み出す場というように考えられている。
状況学習論が力点を置くのは、学習者という主体であるのに対して、現場力の議論が力点がおく のは、そのような(最大ないしは最良)の実践が生みだされ、かつその実践を保証する「現場」である。
これらの一連のこと(すなわち古典学習論、状況学習、現場力)を、認知、身体、状況(場)の 位置づけに関して、それぞれの特性をあげれば下の表のようになる。
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【かいせつ】
古典学習論、状況学習、現場力がもっともよく観察されるのは、それぞれ学校、徒弟制、職場と いうことになるだろう。また、それぞれの場に参与する主体に呼びかけられるスローガン(イデオロギーの響き)は、それぞれ「知識を習得しなさい」「グルー プに周辺参加してみなさい」「[壁にぶち当たれば]現場に還れ」というふうになるなるだろう。
ホーリスティク[全体論的]アプローチをする正統的周縁参加(LPP)理論からみると完全に 邪道だが、状況学習というものは、「正統的」に「周縁的」に「参与」するという三拍子揃った活動であると考えてみよう。そして、それらの構成要素に着目し て、その要素の欠性という観点から、以下のような活動をそれぞれ分析してみよう。下の表のうち、『状況学習』(邦訳:状況に埋め込まれた学習)に出てくる のは、最初の2つの活動すなわち、現行の学校教育と、状況学習の事例でとりあげられ、かつ正統的周縁参加がおこなわれていない「食肉加工」の学習の現場の みであり、それ以下の事例は、引用者(池田)が、それらを説明するために思いついたものである。なお、「かぼちゃ畑での説教」とはリン ク先を参照のこと。
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文献
尾崎新『「現場」のちから』誠信書房、2002年
ギアーツ「ローカル・ノレッジ」(ローカル・ノレッジ : 解釈人類学論集 / クリフォード・ギアーツ [著] ; 梶 原景昭 [ほか] 訳<ローカル・ノレッジ : カイシャク ジン ルイガク ロンシュ ウ>. -- (BA42956538) 東京 : 岩波書店, 1999.9( Local knowledge : further essays in interpretive anthropology / by Cli fford Geertz. -- (BA48307491) New York : Basic Books, c1983)
池田光穂「参加の概念」
想起されるキーワード
ゆらぎ、即興、老人力、実践知、臨床知、場(ゲシュタルト心理学ないしはクルト・レヴィン)、フィールドワーク、建設現場、現場監督、 現場の豊かさ、現場の猥雑さ、……