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移動と世界の「民」の現在

Logical types of immigration and movilization

池田光穂

総説

移民を人間の移動する現象であることのレパートリーであると拡張して把握することを私は提案しよう。

つまり、グローバル化のなか で、移動——移動(+)と表現——と対概念になった「移動しないこと」あるいは移動をオプションとして選択するが帰還し定着する場所に対する保守的な執着 を考えてみたいのである。この場合の後者を移動(−)と表現する。それに対して移民・移動の決断が自発性にもとづくが、強制力のように自発的でないかとい う観点は、19世紀末から20世紀に登場した亡命者や無国籍者の発生(H・アーレント)を考える上でも、先に指摘したように近代的なユダヤ人ディアスポラ という現象が、ユダヤ人のみならず、離合集散する民族集団の独調とその未来を考える上でも非常に重要になる。この移動ないしは移動に重きをおく意味の軸 と、移動の要因となる自発性の有無において、現在の世界の「民」の現在を考えてみたのが、下記の【図】である。  

移動の有無と移動主体の自発的意思の有無による世界の「民」の現在

この図の4つの象限において、移動の強度も自発性の強度も高いものが、労働移民である。他方、民族の離散(つまりシオニズムと論理的に対偶の関 係にある)の典型がディアスポラである。シオニズムは国家(=主)なきユダヤの民が約束の地に終 結しユダヤ人国家を作ろうという政治運動であったが、大国 の中や亡命先で民族の自治をもとめる帰還定着と定住運動は、多かれ少なかれシオニズム的な性格をもつ。それとは、対照的に自発性がない定着化は収容所やア サイラム(難民キャンプ)への入所現象を意味している。これらの象限の間には、移動の強度も自発性/非自発性の強度も希薄な、移動にまつわる社会的カテゴ リーを発見することができる。それらは、それぞれ労働移民の周縁化としての「放浪者(バガブンド)」、ディアスポラの周縁化現象として「流浪難民」や「デ ラシネ」、シオニズムの周縁化つまり自発性をもち移動もおこなうが、最終的に自分の土地に戻るこ とで移動を楽しむ「観光客」が、アサイラム収容者の周辺化 現象とは、アサイラムやゲットーを出て、指定されたところに「定着する民」か紛争や虐殺などが沈静化された出身地への「帰還者」などがそれに相当する。

■クレジット:移動の有無と移動主体の自発的意思の有無による世界の「民」の現在

出典

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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

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