はじめに よんでください

DNAを種的差異を根拠にする人種主義の誕生

The birth of racism based on DNA as the basis for species differences

日本人の起源における二重構造モデルの攻防、より

池田光穂

先住民の (政治的に正しい)定義は、選択の問題、つまり最終的にはアイデンティティ(だれもが複合的アイデンティティを持つ権利)の選択にならざるをえません。で ないと「人種的に」正しいというDNAによるネオ・レイシズムが今後ますます蔓延する可能性がでてくる。ここでのレイシズムとは「人種主義・人種差別主義」と呼ばれているものです。

つまり「DNAからアイデンティティが持てる」とい う奇妙な言説を弄する一部の自然人類学者のプロパガンダはますます成功するのではないでしょうか(→疑似科学的レイシズムの復活)。そして今後、文化人類 学者の構築的アイデンティティ論は、ますます分が悪くなるでしょうねぇ。アイデンティティを種的区分にもとづく感情的レイシズムは、LGBTQへの根強い差別のように、克服するのが非常にやっかいになるでしょう。DTの発言をみていたら、かつて公的な場で不可能だった発語が今日可能になっている、つまり、新しい形の人種主義が復活する、おぞましい未来も口を開けている可能性すらあります。

先住の民を祖先に持つことの意味を、無限に薄めれば誰もが先住民と なる(→先住民の不在の証明になる)。先住民が自分たちの定義を自分たちの内部で厳密にすれば、先住民どうしの正当性をもとめて、先住民が先住民であると いう存在証明ができなくなるどころか、先住民であることを認めたくない、非先住民の側が先住民性を否定する根拠に使われてしまう(→先住民を否定するため の正当化の根拠になる)。これらのアポリアの原因のひとつは、先住民が、DNAなどの本質的根拠をもつという信念つまり妄想からきている。それを克服する ためには(→先住民の定義のない2007年の「先住の民の諸権利の国連宣言UNDRIPを 批准した、つまり、先住民の存在をみとめた、つまり国民国家は、自らの領内に「存在」する先住民への差別是正に努める国際法的責務を担うこととになったた めに)、先住民の定義を、先住の民という空間的特性の条件を最大限にナンセンスなものとして無効化し、先住民の定義を自己アイデンティティに求める必要が でてくる。

他方、先住民であることをアイデンティティ・ゲームであると主張すると本質主義からはその尊厳を毀損すると非難され構築主義サイド(→文化決定論)からは理論の弄びだと揶揄される。非先住民であることが先住民であることからどのように批判構成されるのかの議論が共に抜け落ちていないだろうか?

■fMRIと人種主義(参考)

「「MRI 業界は精力的に利益をあげ、PET やSPECT など他のブレイン・イメージング装置とも相まって脳の機能的な構造の解明を驚異的に進めてきた。その成果を利用して、意図、発話、学習などの過程の研究が 始まっている。そして、ついに、fMRIを用いれば、脳の機能と思考や行動との結びつきの体系化が可能だという概念を核として研究産業が展開された[→発 達してきた?引用者]。研究結果の多くは、人間の性質のうちであまりかんばしくはないものと脳内過程との関連を示していて、そういった性質を白日のもとに 曝け出したようにも見える。……たとえば、エリザベス・フェルプス率いるニューヨーク大学の神経科学者、グループは、白人が黒人の顔を見て自動的にネガ ティブに評価する ことが、扁桃体の活動と関連していることを示した。刺激を受けると扇桃体が活動して情動を引き起こすのだ。それから、スタンフォード大学の研究者は、顔を 認識する領域の活動性が、自分と同じ人種の顔を見ているときのほうが高いことを発見した。自分と異なる人種に属する典型的な顔を見ると異なるニューロン群 が活性化するという結論が出されたが、シリーズで行われた実験結果はこれを支持している。これらの結果を全部考え合わせてわかってくるのは、次のようなこ とだろう。「自分たち」と「あの人たち」という概念はかつては適応的だったが、今では対立の種になりかねない、いわば進化の遺物なのだが、いまだに私たち に組み込まれているのだ。こう考えると、根深い部族主義的な傾向に立ち向かうために断固とした社会政策が必要なのはなぜかわかってくる[→ポストモダンの ルソー?:引用者]。この他、人間の道徳的決定のしかた、他人に対する共感の程度、自尊心のレベルなどを前頭葉の活動を計測して評価した研究などがある。 中には、民主党員と共和党員がキャンペーンビデオにどのように反応するか調べたものまである」(モレノ 2008:194-195)。」(→「ジョナサン・モレノ『操作される脳』ファンサイト」)

●ナチスはなぜ「人種主義国家」と呼ばれるのか?

その理由は、第三帝国は、体制に帰属できるか否かの分類に、生物学の「秩序概念」を用いたから。

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