はじめによんでください
育つ・学ぶ・働く〉という意味を解放する

Liberation for the meaning of "growing up"


解説:池田光穂

だから、育つという意味を解放するために は、知識が多いほうがいいとか成熟しているほうがいいといった価値基準ではなくて、君のお話に出た「タンポポとおしゃべりする能力」を身につけるというよ うな ことを考えるようにすればいいのです。大学の場合、「タンポポとお話できる能力」 なんて言うと(それを理解できないバカ教授どもの間に)ブーイングが出る。だからバカ教授には「子どもの気持ちを理解できるようにす る」といった形で少し表現のハードルを上げる(本当は下げる)必要はあるかな。そう!一番根幹の部分である学ぶということはどういうことなのかを、それぞ れの分野の中で問 い直されないと、大学の授業というのは変わらないかもしれない。それは言えると思いますよ。

僕の結論は、学ばなくてもいい社会がきた らいいなあと(笑)。そういう社会をつくっていけたら、その社会はどうなるんでしょうか。想像してみてください!

2002年に亡くなったイヴアン・イリイチという元カトリックの神父で、社会思想家の人がいます。彼は「脱学校 の社会 (Deschooling society)」という著書において、学校というところは実は子どもたちを教える制度とか施設ではなく、子どもたちを社会に統合させるための儀礼をたたき込む、い わゆる訓育の場所になっていると批判していました。要するに人間を機械にしている現場が学校だというんですね。

彼は教育以外にも近代医療、労働、読み書 き能力といったことに対して、別に医者なんかいらないとか、字を知らなくてもいいとか、非常に極端な発言をした人なんですけれども、その中で衝撃的なある 言葉があります。そもそも我々は働かないといけないし、労働の中に喜びを見出すという世界の中に生きているんですが、それに対して彼は「創造的失業の権 利」ということを提唱しています。それは要するに、クリエイティブなことやアクティブなことをする、つまり、人間の本来性を取り戻すためには、(苦役としての疎外労働つまり賃労働の)仕事しなければな らないという観念から解放される権利があるということを認識しなければなりません。だから(極論するならばお金のためにしたくない)仕事な どはしなくてもいいんです!実際、金融市場で大もうけした元CEOや 大富豪は、働かないでしょう? そして多くの労働者は「いいなぁ、お金持ちは働かなくてぇ」と憧れます。すべての人にとって、賃労働とは苦役に他ならな い。そのとおりです。マルクスとエンゲルスは、労働者には、支払われていない「賃金」がある。それを資本家(=資金を元に金融や工場や新商品開発などに投 資して、どんどんお金持ちになる人たち)は「搾取」(=黙って盗み盗る※)しているのだ、とかつて彼らは告発しましたが、それは正しい指摘だったのです。

マルクス主義では、もの から搾り上げる=搾取という ことを広く使うのではなくて、労働搾取あるいは労働からの搾取(Exploitation of labour)というふうに理解する。労働搾取とは、広義には「ある主体が他の主体を不当に利用すること」と定義される概念である。労働者とその使用者の 間の力の非対称性や価値の不平等な交換に基づく不公正な社会的関係を意味する。搾取について語るとき、社会理論的には消費との直接的な関連性があり、伝統 的には、搾取とは、他者が劣位にあるために不当に利用され、搾取者が力を持つことであるとされてきたからである。マルクスの搾取概念は、資本主義経済にお いては、単にブルジョアジーが生産手段を独占して、労働者の賃金を掠め取るという不道徳ではなく、かりに、労働者たちとって人間的によきブルジョアであっ ても、資本主義の構造の中では労働者への賃金のなかに未来への資本投資のための不払い労働が含まれる。不払い労働とは、計算で算出されるような概念ではな く、資本主義がもつ必然性であり矛盾(=支払いが正当に見えても不払い労働分は資本の増殖に直結するからであり、それを回避することは不可能)である。古 典派経済学者の創設者アダム・スミスは、搾取をマルクスのように特定の経済システムに固有の体系的現象とは見なさず、むしろ任意の道徳的不公正としてとら えた(→「搾取」)。

こどもたちの「タンポポとお話できる能 力」やイリイチの「創造的失業の権利」については、まだまだ、よくわからないことがありますが、21世紀の学ぶこと、働くことに、大きな再 考をもたらして いることは確実です。みんなと一緒に考えていきましょう!

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