「地域ではぐくむ子どもと未来」COデザインシンポジウム;閉会のあいさつ
Concluding Remarks, at the Symposium on "KODOMO SHOKUDO, wide range project to provide free or inexpensive meals to impoverished children and their parents"
言うまでもありませんが、子ども食堂は日本のみらならず世界、いや地球人類遺産級の存在意義があります。それは、皆さんの日々の活動が、まさに成熟した市民の活力、市民パワーとして、具体的なかたちで、この世界に息づいているからです。
司会の労をとってくださった上須道徳さん、素敵なパネルディスカッションをどうもありがとうございました。
さて、それぞれのご発表からは、私は次のようなことを学びました。まず、基調講演をしてくださった湯浅誠さんからは、「居場所のちから」という キワードで、子ども食堂のそれぞれの活動は居場所のちからのネットワークのノードであり、活動はリジッドではなく、遊びのあるアバウトな運営でも、あちこ ちぶつかりながら成功していくのだという勇気をいただきました。
上村有理さんと内村哲さんの報告では、子ども食堂のみらずこどもの居場所の活動を通して、社会的包摂のプロセスのモデルとして行政とNPOの連 携について学ばせていただきました。金和永さんと今井貴代子さんの報告からは、多文化なルーツをもつ子どもと保護者の社会的包摂という課題に取り組むなか で、ネットワークをじゃんじゃん多元化していくことを、多様性も面白さを感じました。つまり、そのような活動を支援することは、困難さよりも、多様性楽し むという可能性を見出すことの意義を学ばせていただきました。
COデザインセンター研究員の松本みなみさんは、私たちの取り組みの実例を、人びとの活動や語りを構造化して、大阪大学がどのように理論的に分 析しているのかの一端を紹介させていただきました。そこで私たちが学んだのは、言葉を紡ぎ続けることのささやかな重要性についてです。私たちが人びとの物 語のデーターベースを今後とも構築していくことを、改めて確認することになりました。
最後に、社会運動家で思想家でもあったイヴァン・イリイチの言葉で締めくくりたいとおもいます。
「犠牲をはらいながら世界の破滅に抵抗する人びとがいる。そういう人びとによって 世界は支えられている。だが、そのような人たちは、そのことを知らない。しかし、そのような人たちが倒れる時、世界もまた崩壊するのだ」と。
私たちは、「犠牲をはらいながら世界の破滅に抵抗する人びと」の姿に、子ども食堂の担い手とそこに集う子どもたちの姿を重ね合わせます。子ども 食堂の担い手のひとたちは、別に、英雄的な勇気をもって、世界を支えておられるという意識などないでしょう。淡々と自分たちのやるべきことを粛々とやって おられると述べられるでしょう。でも、地球の上空からながめてみると、皆さんはまさに、そのような重要な任務(=私たちの破滅から守ってくれる)を、日々 の具体的な活動を、誰に指図されることなく、自発的におやりになっているのだ、という気持ちを、改めて私はもっていることを確認しました。
今現在、ウクライナでの戦禍、今なお続く新型コロナウイルスの脅威、そして、昨日11年目を迎えた311後の世界、すなわちポスト311の状況 を生きています。そのような暗澹たる世界のなかで、子ども食堂の活動に携わってらっしゃる方は、私たちにとっての一筋の希望の光です。そこにこそ、子ども 食堂の真の存在意義があります。そして、大阪大学も、その活動の中に、何らかの形で今後とも関わっていく所存ですので、どうかよろしくお願いします。
本日は、長きにわたり、シンポジウムにお付き合いいただき誠にありがとうございました。
——2022年3月12日 大阪大学COデザインセンター・センター長 池田光穂
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