地域社会論のシラバスの書き方
On Local Communities; local
societies; regional Societies
解説:池田光穂
●地域社会論のシラバス作成の留意点
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1)依拠するパラダイムが、経済学(地域経済論)か、応用社会学(地域社会文化論)か経営学(公共地域マネジメント)で、シラバスの書き振りは異なる。
*
2)地域社会のオントロジー(存在論)では、〜だ(Sein)と〜であるべき(Sollen)の論理的峻別は必要である。
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3)地域社会のオントロジーは「構造」というモデルをつかうと、学生には理解しやすくなる。
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4)地域社会のファンクション(機能)を考える時には、全体社会の時間的尺度(1日、10日、100日、3年、30年、300年のオーダー)を区分して、
学生に説明すると、理解が早くなり、時間的尺度の議論で混乱がおこりにくくなる。
*
5)地域社会を想像する時の空間的イメージを峻別しておく。すなわち、個人、家族、町や地区単位、行政単位、都道府県単位、行政地方単位(例:関東や東北
地方)、国家単位、東アジア、ユーラシア、地球社会まで。
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6)地域社会は、さまざまなエージェンシーからなりたつ、個人、家族、町内会、役所、行政府、企業や法人、自発的な集団、消防団や自警団、インターネット
のコミュニティなど。それぞれのエージェンシーが共有する地域社会のオントロジーやファクションは異なる。
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7)地域社会がさまざまな問題や課題を抱えているが、それが「内発的な課題」なのか、外部社会が判断する「評価課題」であるのかは、つねに峻別しなければ
ならない。また、長い間に、外部からの「評価課題」に地域社会が曝されつづけると、地域社会の住民は、「内発的な課題」と区別がつかなかったり、「評価課
題」が内面化されてしまうこともある。
授業担当者: |
池田光穂(Mitsuho Ikeda) |
履修対象/Eligibility |
学部2年生以上 |
授業概要(250字) |
経済学・経営学・社会学・
地理学などの知識が動員される学際的な学問である地域社会論のミニマムな定義は「自分たちの生活している社会空間の研究」です。この授業ではPBL型実習
である「ビジネス実践実習」の履修を前提にして総合的な地域社会論というテーマの広がりを学修します。それぞれの専門知がどのようにして「自分たちの生活
している空間」の広がりと繋がりを具体的なテーマ、すなわち、SDGs、少子高齢化、コミュニティビジネス、地域おこし、ローカルツーリズム、多文化共生
をあげて講義します。 |
到達目標(250字) |
1.
国際社会でも地域社会でも重要な解決課題になっているSDGsや少子高齢化について(例えば家族の人に)説明することができる。 2. 地域おこしの方法としてコミュニティビジネスという取り組みがある。ボランティアワーク やインターンシップなどを通して応募することを「想定」して、きちんと「自分の考え」を受け入れる側に説明することできる。 3. ローカルツーリズムや多文化共生の考え方の社会的意義を説明することができる。 |
授業計画(1000字)15回分 |
第1回:導入部:地域社会の定義(経済
学・経営学・社会学・地理学・民俗学)と地域の課題をあぶりだす方法【準備学習】シラバスをよんでわからない言葉を調べる。 第2回:都市と農村、人口問題と少子高齢化について【準備学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第3回:家族とコミュニティ:家族の変容、コミュニティにおける互助と協働【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第4回:国連の持続可能な開発目標(SDGs)と地域社会【事前学習】SDGsの17の目標について知る 第5回:コミュニティビジネスと経済学/経営学(1)【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第6回:コミュニティビジネスと経済学/経営学(2)【事前学習】キーワードの抽出と整理 第7回:地域福祉社会とビジネス(1)【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第8回:地域福祉社会とビジネス(2)【事前学習】キーワードの抽出と整理 第9回:地域社会の文化再生と住民アイデンティティ【事前学習】キーワードの抽出と整理 第10回:ルーラル・ツーリズム(農村観光)【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第11回:サステイナブル・ツーリズム(持続可能観光)【事前学習】キーワードの抽出と整理 第12回:地域移動と国際移動のネットワーク形成(1)【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第13回:地域移動と国際移動のネットワーク形成(2)【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第14回:地域における多文化共生社会の実現について【事前学習】課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 第15回:まとめと振り返り:地域社会の知見をどのようにコミュニティビジネスに活かすか【事前学習】これまでの文献と講義ノート記録のレヴュー 結論:「地域振興にはお金ではなく愛が必要です」 |
評価方法・基準(250字) |
学期が終了した時点で、到達目標で掲げ
た3つの観点が達成されていることを及第点(60点)の基準とします。評価基準の構成は、毎回のリアクションペーパーでのコメントの集積(20%)、第6
回目終了後のレポート提出(20%)、学期末試験(60%)です。 |
準備学習(予習・復習)(190字) |
授業計画において【準備学
習】で示したとおりですが、(1)事前課題文献の読了(わからなくても最後まで目を通します)、(2)授業で出てきたキーワードを授業ノートに書き出しま
す、(3)わからないキーワードは教科書やインターネットで調べて読むだけでなく必ず自分の言葉で書いておきます。 |
履修上の留意点(190字) |
この授業は、問題に基づく
学習(PBL)実習「ビジネス実践実習」の事前学習の位置付けになります。そのため授業で学んだ地域社会の知識を、実際に「使ってみて」役に立つかどうか
が重要な課題になります。ただし、本当に、役に立つ知識とは、わくわくし、たのしくおこなうことに充実しているはずです。楽しみながら身につくように配慮
しますので、注文や意見を遠慮せず述べてください。 |
教科書 |
フィールドから考える地域環境 : 持続可能な地域社会をめざして / 小島聡, 西城戸誠, 辻英史編著, ミネルヴァ書房 , 2021(→「フィールドを通して みた地域環境」) |
参考書・URL(150字) |
参加による自治と創造 : 新・地域社会論 /
内田和浩著、日本経済評論社 , 2019 . - (シリーズ社会・経済を学ぶ) 幸福な老いを生きる : 長寿と生涯発達を支える奄美の地域力 / 冨澤公子著, 水曜社 , 2021 |
備考(95字) |
「戦争は別のやりかたでの
政治の延長だ」クラウゼヴィッツ)。さて、これを幸福論に対する重要な貢献として読んだ人が果たし
てどれだけいるのか?——これはニーチェではなくJ・
ジェイコブスの審問なんです。でも、彼女は「都市支援戦略」(1969)の中で、軍需産業が経済立地の見地から都市の経済に貢献しないことを見抜いていま
す。そう考えると、ジェイコブスのこの主張は、戦争論は幸福論に単純につながるものではなく(我々が想像するに真逆のものにつながる)何かの「媒介」を経
由して考えることが重要であるように思われます。 |
++
回 |
コンテンツ |
準備学習 |
1 |
導入部:地域社会の定義(経済学・経営
学・社会学・地理学・民俗学)と地域の課題をあぶりだす方法 |
シラバスをよんでわからない言葉を調べ
る。 |
2 |
都市と農村、人口問題と少子高齢化につい
て |
課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
3 |
家族とコミュニティ:家族の変容、コミュ
ニティにおける互助と協働 |
課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
4 |
国連の持続可能な開発目標(SDGs)と
地域社会 |
SDGsの17の目標について知る |
5 |
コミュニティビジネスと経済学/経営学
(1) |
課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
6 |
コミュニティビジネスと経済学/経営学
(2) |
キーワードの抽出と整理 |
7 |
地域福祉社会とビジネス(1) |
課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
8 |
地域福祉社会とビジネス(2) |
キーワードの抽出と整理 |
9 |
地域社会の文化再生と住民アイデンティ
ティ |
キーワードの抽出と整理 |
10 |
ルーラル・ツーリズム(農村観光) |
課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
11 |
サステイナブル・ツーリズム(持続可能観
光) |
キーワードの抽出と整理 |
12 |
地域移動と国際移動のネットワーク形成 (1) | 課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
13 |
地域移動と国際移動のネットワーク形成 (2) | 課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
14 |
地域における多文化共生社会の実現につい て | 課題文献の読解、キーワードの抽出と整理 |
15 |
まとめと振り返り:地域社会の知見をどの ようにコミュニティビジネスに活かすか | これまでの文献と講義ノート記録のレ ヴュー |
●地域社会論のシラバス作成の留意点(再 掲)
●キーワード
SDGs, 持続可能性、少子高齢化、コミュニティビジネス、「まちおこし、むらおこし、地域おこし」、「コロナとビジネスイノベーション」「身体感覚の観光学」「エコ
ロジーと観光」「コミュニティに根拠をもつ研究」「子ども食堂 X 大阪大学」"Kodomo Shokudō, Wide
range projects to provide free or inexpensive meals to impoverished
Children and their Parents." 「消費社会」「余暇社会とエコツーリズ
ム」「演出された本物性について」「多文化共生社会」「トランスマイグレーションの倫理学」『学習する社会を創造する』
●スピルオーバー効果 (spillover effect)
ス ピルオーバー(スピルオーヴァー)効果とは、漏出 効果、拡散効果などともいわれる。公共サービスから得られるベネフィット(便益)が、それを給付した公共体(国や自治体やその住民)の領域——行政区域 (市町村境、県境、州境、国境など)——を越えて拡散し、費用を負担していない周辺の公共体にもベネフィット(便益)を享受できる現象。公園や公共施設を その地域以外の住民が利用したり、上流の河川の水質規制や下水処理のレベルの高さが、下流域の住民にも便益をえることがあるが、これはスピルオーバー効果 と言える。
"In
economics, spillover effects are economic events in one context that
occur because of something else in a seemingly unrelated context. For
example, externalities of economic activity are non-monetary effects
upon non-participants. Odors from a rendering plant are negative
spillover effects upon its neighbors; the beauty of a homeowner's
flower garden is a positive spillover effect upon neighbors." - spillover
effect (Wiki)
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