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人種概念をめぐるノート

Notes on Race

池田光穂

人種主義は人間の種的分類概念として19世紀を席 巻した生物学上の概念であり、20世紀にはその概念そのものが問題に伏されるものになり、21世紀には、人種が社会的構築物であるという合意であるという 認識にたどり着いた多様な変化の来歴がある。

・ラテンアメリカにおける人種(raza, race)は、地理的変異、文化的変異、身体形質的変異を表現する用語として広く行き渡っている。その定義は曖昧で多様で、人種の概念がリジッドな北米に比 べると、ラテンアメリカでは多様な人種的概念が横溢している。

・ラテンアメリカにおける、エスニシティの概念 (etnia, etnicidades)は、言語、文化的区分にもとづく人種のサブカテゴリーとして使われることもあるが、人種とエスニシティに関する人びとの区分は曖 昧である。

・ラテンアメリカにおける人種の概念は、植民地統治 においてヨーロッパから持ち込まれたものだが、現地社会での混血により、その関係が複雑に多様化してゆく。

・ラテンアメリカにおける、人種差別の二大マーカー は、先住民と黒人であり、社会階層の底辺の人びとをさす用語として機能している。

・人種がヨーロッパ言語に登場するのは16世紀初期 で、最初はリネージの意味で使われ、人種という用語が広く膾炙するようになったのは18世紀の終わり以降。他者表象として、奴隷制に使った「黒人」いう人 種で表現するのが今日の人種主義の嚆矢。

・イベリア半島では、レコンキスタ時代に、イスラム 教徒(ムーア人)を排斥し、その後に異端審問やユダヤ人の排斥運動が、キリスト教勢力のなかでおこる。宗教的排除は、キリスト教へ改宗という課題を伴って いたので、新たに改宗した「新キリスト教徒」として、以前からの「古くからのキリスト教徒」とを峻別した。改宗を、「血液を浄化する」(limpieza de sangre)というメタファーで表現した。血液や血は、イベリア半島における「家系の名誉」の概念と結びつけられた。

・人種概念の優劣を、身体性のメタファーで表現する ことはその後もつづく。例えば、奴隷制導入の時期以降に、先住民や黒人の乳母から授乳した際の母乳を、悪い母乳と呼んでいたという。

・人種の概念の洗練化は気候や天体の運行(占星術) が、その人間集団の外見・気質・知性を決定する要因と考えるようになってきた。その中でも、ヨーロッパの人びとが、新大陸での生活の適応することに強い関 心が持たれたが、新大陸の気候は文明人の心身の状態に悪影響を与えると考えられた。

・Jorge Cazares-Esguerra17世紀の歴史家は、アメリカの先住民の劣等性は揺るぎないものの、クリーオジョは熱帯の生活の中で適応した結果、それ ほど劣等化していないのは、彼らの血統がヨーロッパ由来だからだと、気候の悪影響よりも、血統の優秀性を強調した。クレオールは、それゆえ、先住民にも優 越し、また黒人奴隷にも優越しているという人種化された理論を展開した。

・リンネとブレーメンバッハの分類(18世紀後 半):白人、東方アジア人、黒人、アメリカ先住民、南西アジアおよび太平洋人

・ギュスタヴ・ル・ボン、ジョセフ・アルチュール・ ド・ゴビノーでは、ラテンアメリカの混血は(彼らの混血=人種劣等化の主張にもとづいて)「雑種の人種」の典型と見なされた。——ブラジル人、Nina Rodrigues は、チェザーレ・ロンブローゾの人種理論とを結びつけて、犯罪者に対しては、人種ごとに、異なった強度の処罰をおこなうべきと主張。

・このような人種差別論は、フランシス・ゴルドンの 優生学思想の普及で頂点に達する。優生学思想のタイプには2つあり、普及した地域も異なる:種の普遍性を説く「ハード」優生学(北米、英国)と、獲得形質 の遺伝を前提にした「ソフト」優生学(ないしは「新ラマルク派」優生学)(ラテンアメリカと東欧の大陸ヨーロッパ)にわかれる。いずれにせよ、1930年 代を境にしてナチス・ドイツ以外では覇権が急速に失われる(→「アメリカ合衆国の優生学」)。

・1850年代には、ラテン人種(raza latina)という人種概念が登場。ラテンアメリカで軍事行動にでる北米のサクソン人種(Saxon race)に対抗して、ラテン人種の防衛を主張した、コロンビアのJose Maria Torres Caicedo が、詩作のなかで主張。パナマのJusto Arosemena, はヤンキー人種(la raza Yankee)がパナマ運河地帯でのさばることを批判。

・イスパノアメリカでは、コロンブスの上陸記念日を 「人種の日(El Día de la Raza)」と定めている:

El Día de la Raza se celebra el 12 de octubre en la mayor parte de Hispanoamérica, España y los Estados Unidos entre otros países. Fue creado a partir del siglo XX, inicialmente de forma espontánea y no oficial, para conmemorar una nueva identidad cultural, producto del encuentro y fusión entre los pueblos indígenas de América y los colonizadores españoles, además de la valorización del patrimonio cultural hispanoamericano. Aunque el nombre «Día de la Raza» es el más popular en la actualidad, el nombre oficial suele variar de un país a otro: en España es el Día de la Fiesta Nacional o Día de la Hispanidad, en Estados Unidos es Columbus Day o Día de Cristóbal Colón, en Chile y Perú se denomina Día del Encuentro de Dos Mundos, en Argentina recibe el nombre de Día del Respeto a la Diversidad Cultural. Por otra parte, algunos países han optado por reivindicar claramente las posiciones de los pueblos originaros y han decidido conmemorar en esta fecha el Día de la resistencia indígena. - El Día de la Raza

・しかしながら、現在では、この日は(新大陸の発見 の日を記念するよりも)人種・民族の多様性を祝う日になったり、現在では、征服への抵抗を記念すべき日への解釈されている——日本の建国記念日に似てい る?

・人種も民族も、ラテンアメリカの日常的用語法で は、人間集団の本質的差異を表現するものとして、それほど区分されるものとして使われていない。しかし、文化人類学ならびに先住民やマイノリティへの社会 活動家たちの影響で、人種よりも民族という用語法がより好んで使われる傾向にある。

・汎マヤ運動などでは(それぞれの言語集団の区別に よるグループ内で/あるいはそれらのグループの連合体で)マヤ民族の集団的統一性や文化の本質性が強調されるが、その際も、人種概念よりも民族概念を(よ り優先して)使われる。——政治的解放の言説が動員される時には、文化人類学/文化人類学者は、植民地科学/植民地主義者として分類され、反感を持たれる ことも事実だ。

・ブラジルは、沿岸部および内陸の農園労働で黒人奴 隷の比率が高いために、褐色(pardo)——スペイン語 marron——を、混血の伝統として表現することがある。

・北米のような「一滴のルール(one-drop rule)」のような原則はラテンアメリカでは通用せず、パーセントなどの「血液の分量/比率」で人種的特性を表現する。

・白人性は、19世紀後半から20 世紀初頭にヨーロッパからの移民が多い南部ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイなどで、人種的にはより包摂するカテゴリーとして機能している。当然のこと に、自身がヨーロッパ起源の出自の認識がある人には、その白人性の優越の意識が強い。コスタリカやドミニカ共和国のような(相対的に)ヨーロッパからの移 民の比率がそれほど高くない国家にも、白人性を優越させる傾向がある。

・先のMarisol de la Cadena のインフォーマントたちの例のように、先住民かメスティーソという自己定義も(言語使用などのような帰属要件が制限されるようなケースを除いて——同時に 外部者が言語使用につよく拘われば排外主義的なレイシストと見なされる可能性すらある)容易に変化しうる可能性を残している。

・植民地期には、ムラートや、メスティーソは、エス パニョール(クリオーリョ)と結婚しようとした、それは貢納から逃れる手段であったが、同時に、血を清潔に(sangre limpia)をする手段でもあった。

・白人化することだけが、何らかの社会的身分を上げ ることだけではなかった。先住民との婚姻を通して、メスティーソが先住民化することもあった。その場合は、カシーケの家族との姻戚関係になることで、カ シーケの権力を簒奪することである。あるいは、トゥパック・アマル2世のように、メスティーソ出自の彼が、インカの王権の正統な継承者として振る舞うこと で、先住民反乱のリーダーになることがある。

クレジット:(旧ページ名)「人種的カテゴリー再 考」ラテンアメリカにおける「人種概念」に関する研究ノート・メモである。

"Crypto-Judaism is the secret adherence to Judaism while publicly professing to be of another faith; practitioners are referred to as "crypto-Jews" (origin from Greek kryptos – κρυπτός, 'hidden'). The term is especially applied historically to Spanish Jews who outwardly professed Catholicism,[1][2][3][4][5] also known as Anusim or Marranos. The phenomenon is especially associated with renaissance Spain, following the Massacre of 1391 and the expulsion of the Jews in 1492.[6]" - Crypto-Judaism.

"Criptojudaísmo es la adhesión confidencial al judaísmo mientras se declara públicamente ser de otra fe. A las personas que practican criptojudaísmo se les refiere como cripto-judíos o criptojudíos. El término criptojudío también se utiliza para describir a descendientes de judíos que todavía –en general en secreto– mantienen algunas costumbres judías, a menudo mientras se adhieren a las otras religiones, más comúnmente el cristianismo." - Criptojudaísmo.

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