はじめによんでください

「現地人の視点から」というスローガンは植民地主義的か?

Is colonialistic the slogan of "from the native's point of view"?

池田光穂

このページの目的は、「現地人の視点(from the native's point of view)」からエスノグラフィーを部外者が描き出すのだという 視点からの脱却をめざす。

まず「現地人の視点」か らという命題を最初に提出したブロニスラウ・マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』(1922)から引用する。

次に、オリエンタリズム 批判から、フィールドワーカーの視点だけが批判されていたのではなく、それを可能にしかつ継続的なもの(=持続可能)にする社会文化的状況を批判している のだという、エドワード・サイードの指摘を以下に記す。

- Edward W. Said is Parr Professor of English and Comparative Literature at Columbia University. His most recent contribution to Critical Inquiry is “An Ideology of Difference"- Edward W. Said, Representing the Colonized: Anthropology's Interlocutors. Critical Inquiry 15 (2):205-225 (1989)

サイードの批判を、 フィールドワーカーの知識生産と現地への還元という観点から考えるとどうなるだろうか?(→「フィールドワークと民族誌の民主化」) フィールド ワーカーは「現地人の視点」 という認識論を会得するのみならず、現地で調査する人たちをどのようにみて、また現地人の人たちが様々な観点から感じるような政治経済的な不均衡状態に置 かれていること、等々の政治的・社会的・文化的状況についての把握も可能になる道も拓かれる。それを人類学者の個人的共感や同情のレベルに留めておくので はなく、フィールドワークの成果である民族誌記述(あるいは制作)に盛り込むとすれば、どのようなアウトカムが期待できるだろうか、ということなのであ る。

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