はじめによんでください

「現地人の視点から」というスローガンは植民地主義的か?

Is colonialistic the slogan of "from the native's point of view"?


Odalisque, 1840 Natale Schiavoni (1777 - 1858)

池田光穂

このページの目的は、「現地人の視点(from the native's point of view)」からエスノグラフィーを部外者が描き出すのだという 視点からの脱却をめざす。

まず「現地人の視点」か らという命題を最初に提出したブロニスラウ・マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』(1922)から引用する。

次に、オリエンタリズム 批判から、フィールドワーカーの視点だけが批判されていたのではなく、それを可能にしかつ継続的なもの(=持続可能)にする社会文化的状況を批判している のだという、エドワード・サイードの指摘を以下に記す。

- Edward W. Said is Parr Professor of English and Comparative Literature at Columbia University. His most recent contribution to Critical Inquiry is “An Ideology of Difference"- Edward W. Said, Representing the Colonized: Anthropology's Interlocutors. Critical Inquiry 15 (2):205-225 (1989)

サイードの「オリエンタリズム」批判を、 フィールドワーカーの知識生産と現地への還元という観点から考えるとどうなるだろうか?(→「フィールドワークと民族誌の民主化」) フィールド ワーカーは「現地人の視点」 という認識論を会得するのみならず、現地で調査する人たちをどのようにみて、また現地人の人たちが様々な観点から感じるような政治経済的な不均衡状態に置 かれていること、等々の政治的・社会的・文化的状況についての把握も可能になる道も拓かれる。それを人類学者の個人的共感や同情のレベルに留めておくので はなく、フィールドワークの成果である民族誌記述(あるいは制作)に盛り込むとすれば、どのようなアウトカムが期待できるだろうか、ということなのであ る。

★脱植民地化の方法論から示唆を得て——「『研究』という言葉自体が、先住民の言語の中で最も汚れた言葉の一つである」(リンダ・トヒワイ・スミス 1999)

先住民による脱植民地化(Indigenous decolonization) とは、先住民のコミュニティの歴史や、植民地拡大、文化同化、搾取的な西洋の研究、そして必ずしもアプリオリではないが、しばしばジェノサイド(大量虐 殺)の 影響に関する物語を再構築し、論争することを目的とした、現在進行中の理論的・政治的プロセスを指す。脱植民地化に取り組む先住民は、西洋中心の研 究手法や言説に対して批判的な立場を取り、知識を先住民の文化的な慣習の中に再配置しようとしている。 西洋の政治思想の構造に依存する脱植民地化の取り組みは、逆説的に文化的な所有権の剥奪をさらに進めるものとして特徴づけられてきた。この文脈において、 たとえこれらの実践が政治的な承認に容易に結びつかないとしても、独立した知的、精神的、社会的、物理的な回復と再生の取り組みを行うべきであるという呼 びかけがなされてきた。学者たちは、先住民の脱植民地化を「人種差別と性差別への取り組みなしには、すべての人々を解放することはできない」交差する闘い として特徴づけることもある。 先住民の脱植民地化運動の理論的な側面を超えて、脱植民地化のための直接行動キャンペーン、ヒーリング・ジャーニー、身体を伴う社会闘争は、現在も続く先 住民の抵抗運動や、土地所有権、生態系の採取、政治的疎外、主権をめぐる論争と関連していることが多い。先住民の抵抗運動は何世紀にもわたって続いてきた が、先住民の活動が活発化したのは1960年代で、これはアフリカ、アジア、アメリカ大陸における国民解放運動と時を同じくしていた。

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