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サルサの女王は死後にPay-Backを受くる

Celia Cruz y su vida en el contexto cultura latinoamericana

池田光穂

☆ サルサの女王は死後にPay-Backを受くる — 歌手セリア・クルスと東西冷戦 —

セリア・クルスの本名は、Celia de la Cruz Alfonzo, 1925-2003でキューバの首都ハバナの四人兄弟姉妹の一人として生まれた。すでに10代の時に、彼女の叔母と従姉妹がキャバレーに連れていき、そこ での音楽に魅了される。彼女の父親は、セリアに教師になることを希望しハバナの師範学校への入学を希望した。しかし、彼女はハバナの国立音楽院に入学し、 声楽、理論、ピアノを学んだ。1940年、音楽院在学中の15歳の時に、キューバのラジオ番組でタンゴ曲の「ノスタルヒア」をボレロに編曲して歌いコンテ ストに受賞してからは、衆目に晒されることになり、バンドのボーカリストとしてラテンアメリカを巡業している。その10年後の1950年(25歳)彼女 は、Sonora Matancela の人気リードボーカリストになる。彼女の母国では1959年にキューバの革命勢力による政権掌握が成功する。カストロとの確執から彼女から母親の最期に看 病するために帰国申請するが革命政権から拒絶される。反革命だと見做されたためである。1961年ごろ結婚を機に米国への亡命申請をするが10年間連邦捜 査局は彼女を過激共産主義者として監視下においていた。クルスは公的な場所では、これらの政治的話題に触れることはなかった。

■ クルスの人気は、1975年にサルサ専門のレコード会社ファニアとの契約を機に、社長のひとりのJ・パチェーコがプロデュースしたファニア・オールスター ズの大小のさまざまなコンサートに参加したことである。サルサの歴史に残る後に著名になる演奏家たちが参加したオールスターズは、その後の10年間に世界 最高のラテン楽団と呼ばれるようになる。クルスは男性だらけのサルサシンガーのなかで唯一の女性サルサシンガーとして登場する。セリア・クルスの特徴を表 現するなかに、かならず、彼女の女性性を表現するようなエピソードがある。それは色とりどりのかつら、スパンコールのついたタイトなドレス、ハイヒールな ど、彼女の豪華な衣装である。しかし、彼女の歌曲には、ラテンアメリカ女性のステレオタイプなセクシュアリティを歌うものはない。

■ 彼女のために書かれた歌曲の中には、ラテンアメリカのマチズム(男性中心主義)、それも愛情を注がず夜になると体だけを要求する男に「Que le den candela(火を放て)」と批判するものがある。1994年に録音されたアルバム『空前絶後』に初めて収録された、クルスのトップ10曲のひとつであ る。彼女は、女性たちに夫やボーイフレンドからの暴力に反抗するよう助言している。その処方箋は、生活世界のなかにおけるジェンダー関係に対して反抗せ よ、抵抗せよというものだ。DVを受けたら「フライパンでもいいから」ぶん殴り返しなさい、という形のエンパワメント・メッセージである。彼女が呼びかけ る「私の庶民(mi gente)」のジェンダーはスペイン語を母語とする女性たちである。このことが、サルサ歌手のアイコンの中のアイコンとしてのセリア・クルスをもっとも 強力に特徴づけているのである。

■ 註)Pay-Backには2つの意味がある。通常には返済や返金おこなうこと、そして比喩的にはJames Brown の歌曲のように「借りを返す→仕返しをする」という意味である。その表題の謂は、彼女が生前受けた不当な仕打ちを、死後は名誉回復以上の祝福(=返済)を 受けていることを指す。

■ 参照文献

- Brown, Monica with Rafael López (illus.) 2004. My name is Celia/Me llamo Celia. Flagstaff, Ariz.: Rising Moon.

- Cruz, Celia with Ana C. Reymundo. 2004. Celia: My life, an autobiography. New York: Rayo.

本 研究は科研費(21K18363) の補助を受けたものである。

本 研究は科研費(21K18363) の補助を受けたものである。











サルサのリズムについては「サルサ音楽」を参照

ASI EMPEZO EL SON MONTUNO CELIA CRUZ
CELIA CRUZ   JOSE LUIS  CRUZ  RAY BARRETTO
LP HISTORIA DE LA SALSA  LP TREMENDO TRIO 1983












︎Que Le Den Candela, Lyrics
セリア・クルスの"Que le den candela"[悪い男に火を放て]

Que le den candela (Letra) Celia Cruz

Celia Cruz - Que Le Den Candela

CELIA CRUZ - Que le den candela, Live


あなたのその男は、もう何の役にもたたないよ
あなたに恋に落とすのではなく、疲れさせるよ
お行儀がわるいし
あなたをちゃんと扱わない
その男はあなたが愛情をそそぐほどの資格もない
彼は朝には寝て、あなたは働きにでる
夜になるとあなたから逃げ出す
彼はあなたに体を洗うように要求する(=セックスせよと求める)
それを着て、それを履くように
そして、もしあなたがそれに抗議すると、
彼は、激怒して、あなたを殴ろうとする

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
鍋に入れて
ワイン煮にしてしまいましょう〜♪
彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
彼を凧にくくりつけて、飛ばし
その後で、凧の糸を切ってやりましょう

アスーカル、アスーカル(お砂糖、お砂糖を、もってきて頂戴!!)

あなたのこの男は、よい女友達です
もしわたしが、あなただったら、彼をさっさと捨てるでしょうね
戸口にある荷物には、
次のようなメモが書いてありました、
これからはね、
「あんたのおばあちゃんに食事をつくってもらいなさい」とね

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
鍋に入れて
ワイン煮にしてしまいましょう〜♪
彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
彼を凧にくくりつけて、飛ばし
その後で、凧の糸を切ってやりましょう

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
もうそんな悪はやらないように、怠け者でいないように
あなたに、もっとよくするように

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
ワイン煮にしてしまいましょう〜♪
彼がいままでとは違う道を歩むように

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
彼に火を放ちてください、そうして、そうして、そうして……
もう馬鹿(=白痴なこと)をやらないように

彼に火が灯されるのだ(灯してください)、
ああ、彼は罰せられるのだ(罰してください)
あなたにふさわしくないよ、この男は!!
わたしゃ言うよ、そんなことはもう忘れさないと
よく聞きなさい、ちゃんと料理してね
(フライパンのなかに入れてね)
トラックに乗せられたり、列車に轢かれたりする
(ワインと一緒に煮てね)
そして、そとに食べにいかせなさい、隣家のお家で
(フライパンのなかに入れてね)
彼のばあちゃんに作らせてね、私は(もう彼のために)料理はしないよ
(ワインと一緒に煮てね)
彼は知らないよ、あなたが、別のプルペンにいることを
(フライパンのなかに入れてね)
彼よりもまともなのは、百人はいるわよ
(ワインと一緒に煮てね)

リ ンク

文 献

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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

本 研究は科研費(21K18363) の補助を受けたものである。

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