はじめに よんでください

独断と偏見で往くコスタリカ・エコー・ツアー

Virtual Eco-Tourism to Costa Rica

池田光穂

【観光ガイドの前口上】

 言わずもがなエコ・ツーリズムは身体で感じるもの、 そして頭でおこなうもの、というのが私の定義です。「自然に親しむとか、環境保全に役立つとかというのは本当は怪しいのではないのか」という皆さんの直感 や先入見は正しい、というのが私の主張です。そして、このように旅行者が先に結論を先取しておくと、どんなエコツアーも徹底的に楽しく遊べる、というのが 私のエコ・ツーリズム実践論です。

【旅の前に】

1.コスタリカ(Costa Rica)がどこにあるのか確かめましょう:中 央アメリカにあります。日本からですと北米西海岸ロサンゼルスか東海岸南部のマイアミ経由で首都サンホセ(北米西海岸の都市と同じですので混同しないよう に)にフライトします。

2.適当な観光ガイドブックを購入しましょう:日本 語のものよりも英語のほうがよいものがたくさんあります。なぜでしょうか考えてみましょう。


3.お財布と日程にあわせてツアーを選択しましょ う:現在ではコスタリカからもインターネットで情報が多数提供されています。信頼のおける業者に出会うまでメールで何度でもそして何でも聞きましょう(英 語でOKです)。政府コスタリカ観光局(ICT)も情報源です。


※写真はパナマでのものですが、コスタリカにもネイチャートレイルの観光プログラムが多くあります

3.スペイン語を勉強しましょう:現地語です。へた くそな私が自信をもって言えますが、スペイン語は奥が深いけれども学びやすい言語です。日本語には素敵な先生やすばらしい教材があります。言語をまなぶこ とはその文化を学ぶことですから、こちらほうもお忘れなく。

【現地に到着するまで】

1.森林破壊について勉強しよう

 エコ・ツーリズム先進国と言われているコスタリカで さえ近年においても熱帯林の減少は続いています。その理由はコスタリカの人口問題、農業問題、政治問題等の内的な事情だけでなく、中央アメリカやカリブ海 地域から北アメリカの経済圏さらにはラテンアメリカ全体および全地球的な諸問題と関連しています。途上国における環境問題と先進国の経済が直接リンクした 社会現象としてハンバーガー・コネクションという政治経済現象があります。これを素材にして、コスタリカの森林破壊を考えましょう。

コロナ禍が変える観光の「プラス」の局面について(ロング版)48分

2.熱帯林のイメージインパクトについて知る

 ジュラシックパークのふるさとはコスタリカにあり ます。現代の熱帯林と中生代が現代人の頭の中でなぜ結びつくのか(これは私の専門の文化人類学の研究テーマに関連しますが)考えてみましょう。


3.熱帯の生き物について知ることは楽しい

 エドワード・ウィルソン(『生命の多様性』岩波書 店)、ダニエル・ジャンセンなどはコスタリカの熱帯林で世界的な研究を成し遂げてきました。私が熱帯生態学研究の大御所であった故・井上民二さん(『生命 の宝庫・熱帯雨林』日本放送出版協会)にお会いしたのは、コスタリカの熱帯研究機関(OTS)のラ・セルバ研究ステーションでした。熱帯生物学者の話は抜 群に面白いです。熱帯林に出向いてもお目当ての生き物に出会う可能性はそれほど高くありません。しかし生き物の「息吹」には必ず触れることでしょう。生き 物の不思議な行動や自然環境への不思議な貢献について個別に知ることはあなたのエコツアーをより充実させることでしょう。

【旅行中】

 旅の基本は身体の状態・スケジュール・お財布の中 身がバランスがとれていることです。余裕をもって楽しみましょう。

【帰ってから】

 ご自身の楽しい経験を独り占めしないで、経験談を お友達に話しましょう。ビデオや写真記録を整理し、自分なりの旅行記をつくりましょう。エコツアーの魅力はなんといっても、旅行後にじわじわ効いてくるこ となんですから。

コ スタリカ共和国カウィータ国立公園区に隣接する林の小道にて

 この看板には「ビール園:喫茶と食事、国立公園よ り100m、朝6時より営業中」と書かれてある。現在、世界のエコ・ツーリズム観光地の周りには、この種の急ごしらえの看板が林立しつつある。これがなぜ視 覚的にスキャンダルになるのか。それについて考えることは、エコ・ツーリズム現象の文化分析にとって良き練習課題になる。

 まず書き割りとして大木の幹に釘で打ち込まれた看 板の中に自然の表象が込められている。メッセージの背景には熱帯林が描かれているが、その広告全体が実際の熱帯林の背景にとけ込んでいる。人工的な<自 然>の書き割りは我々にとって極めて不自然なものとして映る。しかし、他方で広告があたかもカメレオンの保護色のように自然の中に溶け込んでいるとも言え る。現在世界のさまざまな都市環境の中で、自然を背景として取り込んだ商品の広告を見かけることは稀ではないだろう。それは<自然>の表象が都市環境の中 で審美的で良きイメージを喚起する機能を発揮し、それとは全く関係のない商品と結びつくことで、商品のイメージの向上が試みられるからだ。しかし全く同じ ものが、自然公園あるいはその付近で提示されると、それは視覚的スキャンダルとなる。なぜなら大木に打ちつけられた<自然>の表象は、(実際はイメージほ ど美しくない)現実の自然といきなり比較対照されるなかで、この<自然>のイメージが崩壊し、他方で現実の自然が人工物によって攻撃(=磔刑のごとく釘付 けになる)されると写るからである。

 現実が仮想となり、仮想が現実となる、この瞬間に 我々は<自然>が実は社会的に構築された意味であることを発見するのだ。(写真と文:池田光穂)

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