解釈行為
Act of Interpretation
解説:池田光穂
解釈とは、ある概念を別の概念に移し替えることである。そのような概念の 転移行為を解釈と呼ぶことができる。 解釈は、1対多の関係、すなわち〈解釈の対象〉と〈解釈されたもの〉の関係が、1対多の関係におかれている。そして「さまざまな「真」や「偽」の価値の一 つを、あるシステムに属するすべての命題に結びつける」(フェレオレ 1997:21)。他方、解釈は、(言語における)翻訳行為というふうにも理解可能である。ただし、翻訳は1対1の関係、すなわち〈原文〉と〈訳文〉が1 対1の関係で、それぞれ2つの言語システムの中で独自に存在する。解釈したもの、あるいは翻訳したものが、複数の人たちに受け入れられるすなわち「合意」 されるためには、その解釈共同体(interpretive communities)を必要とする。そうすると、「翻訳(translation)と解釈(interpretation)の定義 とそれらの間の相違点を説明しておくこと」が必要になる。
また解釈行為は、共同体のメンバーのあいだの合意(コンセンサス)を必要とするので、なんらかの〈社会性〉を召喚することになる(→解釈共同体)。
『文化の解釈』(邦訳:文化の解釈学)は、1973年のクリフォード・ギアーツの著書。クリフォード・ギアツ(ギアーツ; Geertz;1926- 2006)による「文 化の定義」は、次のようなものである。
「文化は象徴に表現される意味のパターンで、歴史的に伝承されるものであり、人間が生 活に関 する知識と態度を伝承し、永続させ、発展させるために用いる、象徴的な形式に表現され伝承される概念の体系とを表している」(ギアツ『文化の解釈学1』 p.148,1987年)。"In any case, the culture concept to which I adhere has neither multiple referents nor, so far as I can see, any unusual ambiguity: it denotes an historically transmitted pattern of meanings embodied in symbols, a system of inherited conceptions expressed in symbolic forms by means of which men communicate, perpetuate, and develop their knowledge about and attitudes toward life." Religion As a Cultural System(Geertz 1973:89).
「マックス・ウェーバーと同じく、人は自ら紡ぎ出した意味の織物[蜘蛛の巣のこと——引用 者]の上に支えられた動物であると信じる私は、文化とはそのような織物であると考え、したがってその分析は法則性を求める実験科学ではなく、意味を求める 解釈科学であると考える。私が追い求めているのは説明であり、表面上は謎めいた社会的表現を読みとることである」[小泉訳 2002:224](『文化の解釈』)。
また、『文化の解釈』の「文化の概念の人間の概念への影響(The Impact of the Concept of Culture on the Concept of Man)」において、「文化パターン(culture patterns)」を「意味のある象徴の体系(organized systems of significant symbol)」と簡潔に言い換え ている(ギアツ『文化の解釈学1』 p.79,1987年/ Geertz 1973:46)。ギアツの意味のパターンという発想は、実は、上掲のルース・ベネディクト『文化のパター ン』(原著1934)に由来するものである。彼の『文化の解釈』(原著1973)に は、そ の影響を受けた章がある。また、ベネディクト派あるいはギアツ派とも言ってジェームズ・ピーコックは文化の定義を 次のように簡潔にまとめている。"Culture, then, is a name anthropologists give to the taken-for-granted but powerfully influential understandings and codes that are learned and shared by members of a group."(Peacock 1986:7)(→以上の解説は「「文化」概念の検討」からの引用である)
人間の文化を研究する学問が「文化人類学」であり、それを研究したり勉強 したりする人が「文化人類学者」である。
リアリティと解釈行為の関係の布置は以下のようになるだろう。
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リアリティ=現実は、私たちに何をもたら すのでしょうか?(「文化」と「言語」/文 化人類学と言語人類学) |
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