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「民族誌の批判的読解:ミレニアム版」

Critical Reading for Classical Ethnographies, years millennium


池田光穂

内容説明はこちらです

近代民族誌は、登場した時から研究者の間では「事実の素朴な反映」という 概念はすでに乗り越えられており、観察者(民族誌家= 民族誌学者 ethnographer)が構築する「理論的枠組によって支えられた体系的記述」という意味合いで用いられてきた。しかしながら、書かれたもの(=刻ま れたもの inscribed)という、西洋の伝統的な表象についての概念の影響を受け継いで、一般には、人々(=民族)について時間を超えた固定的で、本質的(= 人々の文化を実体化する)ものであると理解されてきたことも事実である。また民族誌家も、しばしばそれらの批判に対して無防備であり、ゆゆしき場合は「事 実の素朴な反映」として民族誌の社会的意義を説くものすら登場する始末である。そのために、民族誌に書かれた事実関係とその解釈をめぐる議論の場において は、民族誌を「事実の素朴な反映」として議論の中心に据える見解と、「理論的枠組によって支えられた体系的記述」という見解がしばしば混同されることがあ り、その状況は現在でも続いている。

リヴァースエンジニアリング的読解について

「リバースエンジニアリング (Reverse engineeringから。直訳すれば逆行工学という意味)とは、機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、 製品の構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図などの仕様やソースコードなどを調査することを指す」(ウィキ日本語「リバースエンジニアリン グ」) 古典的な民族誌(エスノグラフィー)の冒頭や脚注、あるいは著作の末尾には「方法論的覚え書き(Notes on methodology)」等の記述に、その民族誌の作者の調査の方法などが書かれてる。しかし、それは著者によるアリバイ証明のように、読者がその方法 論を鵜呑みにして、同じことを別のフィールドにおいて実践すれば、同じタイプの民族誌ができあがるわけではない。 一般的に、民族誌(エスノグラフィー)には、作者性が強く(strong authorship)、そのフィールドワークのやり方には不詳な点が多く、とくわけ秘義化しているわけではないが、民族誌には著者の個性や彼/彼女らが 実証したいテーマ性が強く投影されていることが多い。 そのため、偉大な民族誌家が、フィールドでどのようにフィールドワークを行ったのか?なぜそのような著名な民族誌のように、当該民族の「文化表象」が彫琢 (ちょうたく)されたのか?などを明らかにするためには、彼/彼女らがいう方法論以外の部分をも含めて、読書しなければならない。 その方法を、結果(=民族誌)を分解したり、民族誌がもつ修辞の効果を観察したり、他の研究者による解析などを参照して、民族誌の構造を分析し、そこから 民族誌の制作方法やその「社会的機能」や「社会効果」の動作原理、民族誌の設計概念の「仕様」や「ソースコード」などを調査するように、民族誌を立体的に 読むことが重要になる。

2003 年

4月11日(金)2限

【1】イントロダクション: この授業の目的とねらい

近代民族誌は、登場した時から研究者の間では「事実の素朴な 反映」という概念はすでに乗り越えられており、観察者(民族誌家= 民族誌学者 ethnographer)が構築する「理論的枠組によって支えられた体系的記述」という意味合いで用いられてきた。しかしながら、書かれたもの(=刻ま れたもの inscribed)という、西洋の伝統的な表象についての概念の影響を受け継いで、一般には、人々(=民族)について時間を超えた固定的で、本質的(= 人々の文化を実体化する)ものであると理解されてきたことも事実である。また民族誌家も、しばしばそれらの批判に対して無防備であり、ゆゆしき場合は「事 実の素朴な反映」として民族誌の社会的意義を説くものすら登場する始末である。そのために、民族誌に書かれた事実関係とその解釈をめぐる議論の場において は、民族誌を「事実の素朴な反映」として議論の中心に据える見解と、「理論的枠組によって支えられた体系的記述」という見解がしばしば混同されることがあ り、その状況は現在でも続いている。

+ 民族誌的近代・民族誌的モダニティ

【課題文献】

文化の窮状』日本語版

太田好信 2003「解説 批判人類学の系譜」Pp.515-553.

4 月18日(金)2限 【2】

第1章 民族誌的権威について

首長トウルアに儀礼的に進呈されるソラァヴァ(solava),Nov., 1945]

第1章 民族誌的権威について(Pp.35-)
4 月25日(金)2限 【3】

「目撃者としてのわたし」(クリフォード・ギアーツ『文化の読み方/書き方』森 泉弘次訳、東京:岩波書店, 1996;Works and lives : the anthropologist as author / Clifford Geertz, Stanford:Stanford University Press, 1988)

(自主課題に変更しました)7月18日を見よ
5 月2日(金)2限 【4】

第2章 民族誌における権力と対話

——マルセル・グリオールのイニシエーション

第2章 民族誌における権力と対話(Pp.75-)

——マルセル・グリオールのイニシエーション

5 月9日(金)2限 【5】

グリーオール『水の神』(水の神 : ドゴン族の神話的世界 / マルセル・グリオール著 ; 坂井信三, 竹 沢尚一郎訳. -- せりか書房, 1981;Dieu d'eau : entretiens avec Ogotemmeli. Griaule, Marcel, 1898-1956)


5 月16日(金)2限 【6】

第3章 民族誌的自己成型

——コンラッドとマリノフスキー

第3章 民族誌的自己成型(Pp.121-)

——コンラッドとマリノフスキー

5 月23日(金)2限 【7】

『西太平洋の遠洋航海者』( マリノフスキー ; レヴィ=ストロース / 泉靖一責任編集<マリノフスキー ; レヴィ=ストロース>. 東京 : 中央公論社, 1967. -- (世界の名著 ; 59))[Argonauts of the Western Pacific : an account of native enterprise and adventure in the Archipelagoes of Melanesian NewGuinea / by Bronis law Malinowski. -- G. Routledge, 1922]


5 月30日(金)2限 【8】

第4章 民族誌的シュルレアリスムについて

第4章 民族誌的シュルレアリスムについて(Pp.151-)
6 月6日(金)2限 【9】→ミッシェル・ レリス

M・レリス『幻のアフリカ』( 幻のアフリカ / ミシェル・レリス著 ; 岡谷公二[ほか]訳、東京 : 河出書房新社, 1995)

    「フランスにも詩があるんですか? それから、フランス にも恋はあるんです か?」レリスが引用するエチオピアの女性エマワイシュの発話をギアツが引用しているのを、レリスの書物(『幻のアフリカ』を通して引用する:邦訳、 p.367)

    具体的なもの以外に何も真実はない——ミッシェル・レリ ス

    僕 (レリス)は、女ザールを科学的に知るよりも「《女ザール》を身体で知り たいのだ」——『幻のアフリカ』1932年7月23日

    Julien Michel Leiris, 1901-1990


6 月13日(金)2限 【10】

第6章 君の旅について話してくれ

——ミッシェル・レリス

    今日の人物:ミハイル・バフチン(逐電之記

      T・トドロフ、J・クリステヴァ

第6章 君の旅について話してくれ(Pp.213-)

——ミッシェル・レリス

6 月20日(金)2限 【11】

+M・レリス「植民地主義を前にした民族誌学者with password ( 獣道 / ミシェル・レリス著 ; 後藤辰男訳、東京 : 思潮社, Pp.151-178., 1986;Brisees, avec un portrait de l'auteur par Picasso.: Leiris, Michel, 1901-1990)

+植民地主義を前にした民族誌学 者

+池田光穂「物神化する文化」http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AA11358103-20000000-0017


6 月27日(金)2限 【12】

第9章 部族的なものと近代的なものの歴史

第10章 芸術と文化の収集について

第9章 部族的なものと近代的なものの歴史(Pp.245-)

第10章 芸術と文化の収集について(Pp.273-)

7 月4日(金)2限 【13】

T・クローバー『イシ』(イシ : 北米最後の野生インディアン / シオドーラ・クローバー著 ; 行方昭 夫訳. -- 岩波書店, 1970; Ishi in two worlds : a biography of the last wild Indian in North American 著者標目: Kroeber, Theodora)( イシ : 二つの世界に生きたインディアンの物語 / シオドーラ・クローバー作 ; 中野好夫,中村妙子訳、東京 : 岩波書店, 1977)[配布したのは、1970年翻訳版=行方訳の、口絵、pp.3-29, pp.154-187, pp.263-307.です。][岩波書店1970年版(保護された時のイシの肖像):画像][アルフレッド・クローバーの肖像:セオドラによる伝記]


7月18日(金)2 限 「目撃者としてのわたし」(クリ フォード・ギアーツ『文化の読 み方/書き方』 森泉弘次訳、東京:岩波書店, 1996;Works and lives : the anthropologist as author / Clifford Geertz, Stanford:Stanford University Press, 1988) 第12章 マシュピーにおけるアイデンティティ(Pp.349-)
7月25日(金)2 限 【14】

第12章 マシュピーにおけるアイデンティティ


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