はじめによんでください

民族誌寓意論

allegory of ethnography

池田光穂

承前

民族誌の端的な定義が、ある空間で生活す る、ある特定の集団(=民族)に関する記述の体系としたら、なぜ民族誌が現代社会をいきる私たちに必要 になるのでしょうか?【4つの命題文】

1. 他者を理解するため

2. 多様な世界のあり方を理解し、多文化共生 を実現するため

3. 異様な他者の異様な行動様式を、認識論的 に飼い慣らし、自らの知識とすることで、生活実践上の統治とリスク回避を実現するため

4. 人間存在にとっての、根本的理解のため

民族誌記述の基本的前提となっていること を確認しましょうか。仮に暫定的であっても、また解釈にすぎないとしても、民族誌は客観的な記述実践の 産物である。著者による加工が入っていようが、民族誌をどのように理解するのかという点では、あらゆる読者に開かれた書物(→エーコの「開かれた作品」を 参照)である。

もし民族誌が上掲の課題(事例で掲げてい るのは4つの命題文)のための書物だとすれば、その書物の性格は別にフィクションや伝承さらにはSFで も良いはずではないか?