出産という文化
Culture of human birth
Mochica Culture (100 d.c.-700 d.C.), Larco Museum
出産という文化
人間の出産における基本的な原則とは、生物学的事実である以上に高度にそれが文化的に形づくられていることである。出産は生物における ‘生殖’活動の一環であるという点であらゆる人間集団に共通であるが、出産のあり方−−すなわち妊婦とそのもろもろの親族の行動と信条、‘生殖’にかんす る人びとの観念をも含む総体−−は極めて多様である。また、同じ民族や社会に属する人びとの間においても個々の出産に差があることは稀ではない。人類に とって共通した生物学特性を軸にして、人びとが出産をどのように取り扱うか? と言った問題は、文化現象における類似性と多様性を検証する格好の題材とさ れ、民族学や文化人類学においても長年にわたって議論されてきたこともうなずける。
出産は女性が担うという生物学的事実(性の普遍的非対称性)と、全世界の民族の大多数の社会において、なぜ主要な社会で女性が男性に比べ て劣位と見なされてきたのか? ということを関連づけて考察するという気運が近年高まってきた。とくにフェミニズム運動によって触発された「女性の立場か ら見る」民族学的資料(民族誌)の再検討は、出産をめぐる文化の理解にも多大の影響を及ぼし始めている。
これらのことを端的に物語っているのが「分娩の姿勢」である。妊婦の姿勢には仰臥、横臥、膝まづく、座位、立位およびそれに類似した‘横 に渡した棒にぶら下がる’姿勢などがあるが、多くの伝統社会では座位が一般的である。それゆえに立位での出産などは非常に奇異なものとして注目された。近 代医療における産科学では仰臥−−正確には専用に作られた分娩台で妊婦はあたかも宙に浮いたようになっているが−−で行い、このことが社会で当然のことと 認められているが、生物医学的に有意な根拠はとくに見つからず、分娩介助に便利なためという理由がその真相のようである。
しかし、近代医療が導入されつつある伝統的な社会においては、座産は前近代のシンボルであり、伝統的な産婆でさえ座産よりも仰臥産で介助 する傾向が生じている。ところが出産を近代医療から「産みの主体」である女性とその家族に取り戻す自然分娩運動がすすめる出産姿勢の中には座産あるいは背 後に介助者をつけた立産、時には水中での座産など仰臥産を連想させないものが多い。近代医療にも座産の有効性を見直す理論が70年代末以降になって登場し たが、それには「伝統的な出産」の見直しとフェミニズム出産運動の影響を少なからず受けている。
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文献
その他の情報
上掲写真の解説(瀬口典子さんのご教示による)
"El Parto En esta escena demuestra un gran paso en la maternidad
mochica, pues el parto se efectuaba por gravedad, lo que acusa un
perfecto conocimiento clínico en su forma más fácil y normal. En la
escena vemos al marido que sujeta a la esposa por los flancos del
vientre, sin duda para hacerle masajes y ayudarla para el
alumbramiento, y a la partera dedicada convigilante atención a la
evacuación del nuevo ser. Junto a la parturienta están los utensilios y
cajas que servían para estos casos. En cuanto a la expresión del
trance, el artista ha sabido interpretarla con gran realismo: la faz de
la mujer acusa con extraordinaria vivacidad los agudos dolores del
alumbramiento; asimismo,podemos observar el vientre abultado y los
pechos endurecidos y desproporcionados. Se presentaban casos normales y
anormales en el parto que eran atendidos con todo éxito.- Cultura
Mochica (100 d.C. - 700 d.C.) , Museo Larco, Créditos: Arqueología Peruana ️"
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