多元化する日本社会の試練
外国人参政権へのもうひとつのアプローチ
03外国人参政権へのもうひとつのアプローチ
「意思決定への参加については、究極的には外国籍市民にたいする参政権の付与が必要とされる。外国人の参政権については、現在のところ国会にせ よ地方議会にせよいかなる外国人にたいしても選挙権および被選挙権は与えられていない。地方議会の選挙権については、一九九六年の最高裁判決によれば憲法 は選挙権の付与を禁止してはいない。しかしながら、外国人に地方選挙選挙権を付与しようとする法案は依然として国会で可決されていない。地方議会の被選挙 権についてはいまだ本格的な議論がない。なお、国会については最高裁はすでに選挙権、被選挙権とも日本国籍者にかぎるという判断をくだしている。/このよ うな地方参政権の付与の立ち遅れという状況のもとで、いくつかの先進的自治体では外国人を構成員としその判断を行政に反映させようとするさまざまな形態の 会議を組織して、意思決定への参加をはかろうとしている。その端緒となったのは、川崎市が一九九六年に発足させた「外国人市民代表者会議」であった。その きっかけは、外国人が地方参政権をもたないドイツとフランスで、都市によっては投票により選出された外国人市民の代表で審議会を構成し、その代表は市議会 にも出席し、議決権はもたないが意見表明と議案提案権は保障されているという情報を得たことにあった」(駒井 2006:51)。
駒井洋「人権を重視する受け入れ体制」(第2章)『グローバル化時代の日本型多文化共生社会』明石書店、2006年