多元化する日本社会の試練
犯罪集団へのリクルート(事例)
10犯罪集団へのリクルート(事例)
「中国人の子どものかなりの部分は、中国残留孤児・婦人として中国の東北地方から日本に帰国した日本人女性が、中国から連れてきたり呼び寄せた りした孫たちからなりたっている。わたしがおこなった調査によれば、5〜10万人はいるとみられる「中国帰国者二世・三世」と呼ばれる中国帰国者の子ども や孫とその配偶者のうち、日本国籍を取得したか申請中の者は約四割強にとどまっており、残りの六割弱は中国国籍のままである、またそのアイデンティティも 中国系日本人および日系中国人という中間的カテゴリーが三分の一強を占め、日本と中国のはざまにおかれたかれらの微妙な立場を示唆している。また、かれら の失業率は一二・一%、生活保護の受給率は13.2%にもたつしている。中国での学歴は中卒以下がおよそ半数にのぼり、日本語能力について不自由でないと するものは四割台にすぎない。/中国帰国者三世の育った環境は貧しい奥地の農村が多く、日本の学校に編入しても授業についていけなかったり、学校における 差別もあって、不就学となる子どもが相当な数にのぼる。中国人少年全体の犯罪率はそれほど高くないが、進学の壁とあいまって、中国帰国者三世の一部に非行 化する者がでている。その将来については、「ドラゴン」集団が示唆的である。かつて東京都江東区で「ドラゴン」という名称をもっ帰国者少年たちの暴走族集 団があり、日本人の非行少年グループとわたりあっていた。かれらが屈強の大人になったいま、中国から新宿歌舞伎町に進出してきた東北マフィアの手先となっ てしまった」(駒井 2006:65)。
駒井洋「人権を重視する受け入れ体制」(第2章)『グローバル化時代の日本型多文化共生社会』明石書店、2006年