多元化する日本社会の試練
在日外国人の子どもへの人権配慮の必要性
06在日外国人の子どもへの人権配慮の必要性
「社会的な弱者である外国人の子どもは、その権利がきわめて侵害されやすい。発達の途上にある子どもにとっては、なかでも教育を受ける権利が決定的 に重要である。この権利は、子ども本人にとってばかりでなく社会全体にとっても重要性が高い。というのは、この権利が脅かされるばあいには、子どもの非行 化への対応という形で社会がそのつけをはらわなければならなくなるからである。したがって、子どもの権利は、健全な次世代の育成という観点からも全面的に 擁護される必要がある。/とりわけ弱い立場にある非正規滞在の子どもにたいする在留特別許可については、前節ですでにふれた。これと関連して、長期にわ たって非正規に残留していた外国人の家族にたいして入管当局がおこなった退去強制の処分を取り消すという画期的な判決が、2003年の9月と10月に東京 地方裁判所から相次いでだされたことが注目される。9月の判決は、日本に10年以上滞在している夫と妻および中学生と小学生の子どもからなるイラン人家族 4人にたいするものであり、10月の判決は、日本に九年以上滞在している夫と妻および小学生の子どもからなる韓国人家族三人にたいするものであった。処分 取り消しの理由は、長期間平穏に暮らしている家族を強制送還すれば、とくに子どもに生じる負担が重大で人道に反するというものであった」(駒井 2006:59)。
駒井洋「人権を重視する受け入れ体制」(第2章)『グローバル化時代の日本型多文化共生社会』明石書店、2006年