垂水レミの時短べんきょう入門!!!
How to disguise yourself as a
smart student!!!!
授業から学ぶ最大のコツは、それだけで単体の知識であると思いこまないことです。こう思うことで、授業は退屈になり、自分が理解できないことを 先生の教え方にせいにしてしまいがちです。授業を活性化するためには、そこで得られている〈知識〉をそれまでの知識と有機的に関連づけることです。
■ 授業からまなぶコツ
1. 学んでいる授業についてのあらゆる情報の収集
2. すでに学んだことと新規に学んだことを<節合**>せよ
3. 新しい情報に居場所を与える
4. 新しい情報を既存の情報と同様に使えるようにする
5. 新しい情報を、同じ授業内で理術として使ってみる
6. 新しい情報を、他の授業と関連づけて使ってみる
〈知識〉を関連づけるといっても、関連づけには、グレードがあります。グレードの付け方を学びましょう。
■ 理術の行使
1. 自分のもつ勉強の課題とは何か、を明確にせよ
2. その領域の中でもっとも惹かれるものは何か、を明確にせよ
3. まず、それを実現するための行動をはじめよ
4. 雑念を除去するためにオープンスペース***を確保せよ
5. 集中するという時間を間隔をおいて実行する
6. 1回あたりの集中する時間を長くできるように
7. 集中力が伸びても、体力には限界がある、休みを定時にとるように
8. 難問・疑問・スランプは成長の<肥料>、悩むことおそれない
9. 一定の考えがまとまれば、友人や教師などアドバイスできる人に気楽に相談すること
資料を読解することは、人間がもっとも効率よく知識を収集方法の一つです。そして、それにもコツがあります。
■ 読解の技法 (1):アウトラインを把握する
1. なぜ、その本(=テキスト、ウェブページ)を手にしたかを考えよ
2. その情報を読む前に、収穫を期待する個別情報について考えよ
3. その本(=テキスト、ウェブページ)についての予備的印象をもつ
【チェック項目】タイトル(標題と副題)、著者名、刊行年、出版社、目次、序文、ス タイル
4. 全体を読む(概読****・速読・抄読)[外山滋比古・流に言わせると「おかゆ読み」]
5. このテキストをどのように再読するかについての方針を立てる(2.を立て直す)
6.. 必要な箇所(場合によっては全部)を精読する
【必要用具】借用本の場合はポストイト(=商品名、付箋(ふせん))、個人蔵書はマーカー、鉛筆ならびに読書ノート(あるいはパソコン)
7. 必要な箇所をノートにとる
【チェック項目】かならず出典の書誌をメモする。要約(カッコなし)と引用(「」あ り)を区別する。引用はカッコの後に引用箇所を(垂水 2001:23-24)などと表記する
8. 読書中は適宜、収穫を期待する個別情報メモ(→本項2.参照)を参照する
丁寧に資料を読むことは、それだけで至福の時間をもたらすことがあります。ただし、それには、多少の訓練が必要になります。
■ 読解 の技法(2):ねちねち読む (これを精読という)[外山滋比古・流に言わせると「スルメ読み」]
1. 著者の主張なのか、引用されている論者の主張なのかをチェックする。
民族誌の場合は、記述した事実について論じているのか、民族誌家の解釈に力点がおか れているのかをチェックする
2. パラグラフ単位に主張が何であるかを考える
3. 読みの速度を変化させる
分かっていること、興味のないことはすっ飛ばして読んでよい。興味のあること、重要 と思うことに精力を集中させる。ただし、逆説的だが、分かっていることや興味のないことに、落とし穴や将来重要になる(=興味が出てくる)ことが発見され ることもある。このミスを防ぐには、なぜすっ飛ばしているのか、その理由を自覚することは必要
4. 必要な箇所をノートにとる
【チェック項目】かならず出典の書誌をメモする。要約(カッコなし)と引用(「」あ り)を区別する。引用はカッコの後に引用箇所を(垂水 2001:23-24)などと表記する
5. 自分の資料として活かすために、取ったノートの再組織化をおこなう
日本の大学生にもっとも欠けている能力は、ノートをとる力です。ノートを取る力は、訓練すれば必ず上達します。訓練しなければ、決して上達しま せん。一度上達すれば、その技術はなかなか忘れません。なぜでしょうか? それはノートの技法は、理術に属するものだからです。
■ 授業ノートの取り方
1. この授業が何であるかを受講前にチェック
2. 教師の言うアウトラインに注目
アウトラインが話されない場合は挙手してまずリクエストする。君がそれを要求せず に、その教師がその時間ずっと駄弁を弄することになれば、授業を堕落させた責任の一部は君にも生じるだろう
3. キーワードを列挙する:教師の発話より
4. キーワードを列挙する:君が連想した言葉で
【ポイント】教師の言うキーワードと君が連想したキーワードはノートの中で区別して 書いておくこと
5. 教師のいう命題に注目する。命題は完成した文章の形であらわすこと
6. 教師が強調した言葉には下線を引いておく
時間があればマーカーだが、マーカーのキャップをあける時間があるのなら、その時間 を節約して授業に集中するほうがよい。
7. ノートに基づいて質問する:授業中
授業中に質問やコメントがある場合は「?」や「!」をつけておき、適宜質問する。
8. ノートに基づいて質問する:授業のまとめに
授業の最後に君たちは質問する権利がある(無い場合は、よい授業とは言えないので、 授業時間内に必ずとるように要求しよう)。最後に質問する際には4.で取って置いたキーワードが威力を発揮するはずだ[→無能な大学教師発見法!]
9. かならず復習する:「復習するは我にあり!」
復習とは、講義ノートを読み返し、キーワードを使って授業で書ききれなかった命題を 文章化することである。その際には、授業とは異なった筆記用具や色のものを使って、<追記>したことを区分するようにする。これは試験対策で、友人のノー トを借りた時に、授業中の教師の主張なのか、君のコメントなのかを区分し、かつモノクロの複写では、友人に重要情報が漏洩しないためのテクニックなのであ る(裏技)。
【用語解説】
*理術(り じゅつ):
広い意味での知識のことであるが、知識は身体の外部から食べ物のように吸収されると いうふうには見ず、知識は鉄棒の逆上がりのように口で説明すること(=狭義の知識)だけではなく、それに身体の行為が伴わないと完成しない(=広義の知 識)ととらえる知識の見方に力点をおくためにこのような表現をした。映画『スターウオーズ』においてジェダイの騎士にとって必要とされるフォース(理力) がより、命題化(=言語化)されたものだと考えればよい。この理術は私のオリジナルの言葉ではなく、畏友の慶田勝彦さんから教えてもらった。[→本文にもどる]
理術という用語のエピソードは慶田勝彦「知的状況」(http://dolphin.let.kumamoto-u.ac.jp/keida/working.html) にあります。
**節合 (せつごう):
つなぎあわせることである。これはちゃんとした日本語だが、カルチュラルスタディー ズ系の人たちがいうArticulationの翻訳語としてよく膾炙した。この言葉には、言語学の有節発音や子音、解剖学の関節、通信分野における明瞭度 など、ある2つの異なったものがつながり、個々のものがつながることで新たなあるいは、それ以上の働きをなすことを意味している。[→本文にもどる]
***オー プンスペース:
広い場所のことである。これは机の上を整理するとか、誰も使っていない図書館の机を 占有することで、学習者に対して新規の事業に参入する気分にさせる。異なった2つ以上のプロジェクトをもつ場合は、それらの作業をする机の場所や部位を変 える必要があるのはこのことによる。スペースと知識の占有は、ヨーロッパの知識の歴史にとっては重要な隠喩的連関をもつものだと指摘されている(フランセス・A.イエイツ著『記憶術』青木信義[ほか]訳、東京:水声社、1993年参照)。[→本文にもどる]
****慨 読(がいどく):
アウトラインを読む、あるいはアウトラインとして読むという、私の新語。決して害毒 にはなりません(ジョーク!)。[→本文にもどる]
コーンハウザー、A.W.(D.M.エナーソン改訂)『大学で勉強する方法』山口栄一訳、玉川大学出版 部、1995年、より
1 勉強にはどんな意味があるか
2 効率的な勉強のためにまず何が必要か
3 集中するための好ましい条件とは何か
4 勉強のためのシステムと継続性をどう作るか
5 読み方を効率的にするにはどうするか
6 どう聴けばよいか、ノートをどうとるか
7 記憶力を高めるにはどうすべきか
8 知識の詰め込みに意味はないか、試験をどう受けるべきか
9 あなたの知識を使えるようにする
10 効果的な勉強のためのルール—まとめ
【参考文献】このウェブページの作成において参考にしたもの
コーンハウザー、A.W.(D.M.エナーソン改訂)『大学で勉強する方法』山口栄一訳、玉川大学出版部、1995年
理術については慶田勝彦さん(現・熊本大学教授)より、その知識を授けていただきました。記して感謝いたします。
●クレジット:〈旧版・フルテキスト版〉勉強のやり方・指南(How to disguise yourself as a smart student!!!!)→〈新版・勉 強のやり方=珍独習編〉
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099