はじめによんでください

メキシコにおける資本主義の発展:概観

Outline of Capitalism in Mexico

池田光穂

☆メ キシコにおける資本主義の発展は、複雑な歴史的経緯と国際情勢の影響を受けて形成されてきた。主要な発展段階は以下のとおりである(→「メキシコの歴史」)。

1. 植民地時代の基盤形成(16-18世紀)
・スペイン植民地支配下で鉱業(銀生 産)と大土地所有制(アシエンダ)が確立
・カトリック教会が金融機関として機能し、資本蓄積の原型が形成
・メスティーソ(混血)人口の増加が労働市場を形成
2. 独立後の自由主義改革(19世紀)
・1857年憲法で教会財産没収と自由 競争原理導入
・ベニート・フアレス政権下で土地私有化推進(レルド法)
・鉄道建設(1880年代に総延長20,000km達成)と鉱業開発が外国資本を誘引
3. ポルフィリオ・ディアス時代の近代化(1876-1911)
・「秩序と進歩」を掲げた独裁政権下で 外国投資を積極導入
・石油産業(1910年時点で世界第3位の産油国)と繊維産業が急成長
・農村部の土地集中が進み、農民の94%が土地なし層に転落(1910年)
4. メキシコ革命後の国家資本主義(1917-1982)
・1917年憲法で地下資源国有化と労 働権保障を明文化
・1938年の石油国有化(ペメックス設立)でエネルギー産業を国家管理
・1940-1970年の「メキシコの奇跡」期に年平均6%の経済成長達成
5. 新自由主義への転換(1982年以降)
・債務危機(1982年デフォルト)を 契機にIMF構造調整プログラム受入
・1994年NAFTA発効で北米市場統合が加速
・製造業輸出(特に自動車産業)がGDPの30%を占めるように
現代の特徴と課題
・モノカルチャー経済化:自動車・電子 機器輸出が輸出総額の80%超(2025年現在)
・所得格差:ジニ係数0.48(OECD加盟国中最悪レベル)
・インフォーマル経済:労働人口の56%が非公式部門で従事
・ドル化現象:企業貸付の60%が米ドル建て
先住民コミュニティとの関係
・資本主義の発展過程で、先住民コミュ ニティの共同体経済(エヒード制度——1991年サリナス大統領がNAFTAの加盟と同時に廃止)と の緊張関係が常に存在し、自然資源管理を巡る対立が持続的開発の課題となっている。
・近年はデジタルプラットフォーム経済の急成長(2025年時点で配車アプリ市場規模3.2兆円)が新たな資本集中を生んでいる。






リ ンク

文 献

そ の他の情報

CC

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099