剽 窃
On Plagiarism of
undergraduate students
剽窃とは、他人の考えや主張をことわりもなしに盗むことです。 漢字の剽窃は「ひょうせつ」と読ませます。
剽窃は、英語で plagiarism (プレイジャイズム/ プラジアリズム:発 音[Macmillan Dic.])と表記します。
泥棒が私的財産権の侵害として罰せられるのと同様に、学問の業 界では、他人の考え方や主張をことわりもなしに盗むことは禁じられています。
ただし、剽窃の場合、私的財産への侵害とは多少異なり、実際に 〈具体的な事物〉を盗むことではありませんので、事情が多少異なります。つまり、ある一定のルールのもとで、他人の考えや主張を受けながら、自分なりに発 展させ、学問の世界に寄与するという行為は、学問の世界では賞賛されるべき行為となるのです。
冒頭の〈ことわり〉とは引用のルールということです。引用の ルールについては類書を参照してください。
「剽窃は大きくいへば人類社会の共通現象である」——林達夫「いはゆる剽窃」(初出は
1933年1月22-25日、東京朝日新聞
私は、これに関しては、ウンベルト・エコ『論文作法』谷口勇訳、而立書房、 1991年(英訳How to write a thesis / Umberto Eco )が単なるマニュアルを超え て、剽窃の文化についてまで踏み込んだ、もっとも示唆に満ちた書物であると思います。慧眼なもう一人に我が国 の思想家である林達夫(はやし・たつお、1896-1984)がいま す。彼のエッセー「いはゆる剽窃」(初出は1933年1月22-25日、東京朝日新聞)は 岩波文庫の『林達夫評論集』;平凡社ライブラリー『林 達夫セレクション(I)』(鶴見俊輔監修)で読めます。エッセー「いはゆる剽窃」では、三木清を糾弾した板垣直子に反論を加えつつ剽窃文化というものの存在を指摘したからです。
ちなみに渡邉一民(わたなべ・かずたみ、1932-2013)は、その著書『林達夫とそ の時代』(岩波書店、1988)にて、林の「アミエルと革命」論が、そのエッセー「いはゆる 剽窃」での、三木清の「剽窃」よりもはるかに剽窃度が高いと指摘している(pp.89-96)。
林達夫(は やし・たつお、1896-1984)
コンピュータのない時代は、学生がおこなっていた剽窃とは、図 書館でしこしこと学術書を抜き書きすることでした。これは、今から考えていたら、抜き書きという手作業を通して(結果的に)勉強になったという副産物もあ りました。ちょうど、読書ノートを取るようなスピードで本を再読するようなものだからです。
ところが、インターネットの時代になって、学生はウェブ検索を かけて、ふむふむと該当個所をカット&コピーで、自分のテキスト画面に貼りつけるだけですから、その知的レベルの衰退は顕著です。
他方、元の電子テキストが十分に練られたものであれば、そのレ ポートをチェックする教師は、剽窃の事実を発見することが難しくなります。教師は、学生を信頼することを前提に授業をおこなっていますので、もし、平気で 剽窃をおこなう学生やその常習者がいると、たいへんこまったことになります(例:教師の側のモラル・パニックをおこして、過剰な反動を生む)。
したがって、学生のレポート、タームペーパー、卒業論文、報告 書類などに、剽窃の事実が判明した場合、それを厳罰に処していることをご理解ください。
「学問的仕事の剽窃と見なされるべきものとしてはむしろ,所定の実験を行わなければ得られな いような実験データーの使用。君の仕事以前には転写されたためしのない珍しい写本の筆写を横どりすること。君より以前には誰も収集したことのない統計的 データ一一一この典拠が挙げられていない場合にのみ,剽窃といえるのである(それというのも,論文はひとたび公にされるや,誰もがそれを引用する権利を持 つからだ)——を活用すること。以前には翻訳されたことがないか,もしくは別の仕方で翻訳されるかしたテクストを,君が苦労して翻訳したのに,それを勝手 に利用すること。こういう類のものである」——ウンベルト・エーコ『論文作法』谷口勇訳、P.56,而立書房,1991年
自
己剽窃→「過去に自分が書いたレポート・
論文またはその一部を、自分が書いた内容であるからという理由で適切な引用や註釈なしに、他の科目
のレポート・論文に使用することが、自己剽窃にあたります」(https://bit.ly/3jyFqHl)
クレジット:剽窃について(On
Plagiarism by undergraduate students):インターネット時代の学生の剽窃(ひょうせつ)について考える
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