メディア授業の導入で大学はどのように変わるか?
How do we change our smart campus with COVID-19?
多様な学生・院生の開拓
Agents | Needs for Smart
University (→Smart office, Smart University and Smart
City) |
Young students |
勉強だけでなく、バイトも、さまざまな活
動を思い切りしたい |
International
student |
一度聞いた授業を復習のために、もう一度
聞きたい。以前に使った論文や教科書にすぐにアクセスしたい |
working adult |
早朝や深夜、通勤時間にも受講し、働きな
がら単位や学位がとれる。若い人たちと勉強の交流したい |
students with disabilities |
障害に応じた最良の環境で受講したい。ICTでコミュニケーションの
ギャップを解消したい |
授業のタイプのちがい
授
業名称 |
英
語 |
そ
の意味 |
オンデマンド授業 | on demand lesson | いつでも、どこでも、必要とする人に供給 される授業。例)あらかじめ収録された録画を好きな時間にみて、期日までに課題に答える。 |
オンライン授業 |
online class
(or lecture) |
広義にはインターネットを経由する授業全
般を意味する。狭義にはリアルタイムで双方向の通信ソフトウェアを使う授業。 |
ハイフレックス
授業 |
high-flex
lesson |
「高い柔軟性」という意味。リアルな授業
とオンラインを組み合わせたり、複数の教室をインターネット(通信回線)で結ぶ授業。 |
ハイブリッド授業 |
hybrid class |
異種混交という意味があるので、上掲の授業を組み合わせる授業を主にい
う。ハイブリッドという言葉の適用汎用は広いために、リアル授業でも、実習・演習・実験・フィールドワーク・オンラインインタビューなど組み合わせるもの
もハイブリッドと言うことがある。 |
ブ
レンディド授業 |
Blended Education |
ブ
レンディド教育/ブレンディッド教育 (Blended eduction)あるいはブレンディド学習/ブレンディッド学習(Blended
learning)は、古典的(伝統的)対面教育(f2f
modes)と、オンライン教材による学習の併用による組み合わせ教育のことである。ウィキペディアには、"Blended learning is
an approach to education that combines online educational materials and
opportunities for interaction online with traditional place-based
classroom methods." とある。 |
対面授業 |
face-to-face lesson, f2f class |
教室でリアルタイムにおこなう授業。ただし、実習・演習・実験・フィー ルドワークも、教師と学生は対面状況のコミュニケーションを基調とするので、対面授業をオンラインにくらべて、過度に一般化するのは危険である。 |
多様な教員の用意
単位の互換制度をより広範囲に
大学の経営者:「多様な価値観が集まり大学発のユ ニークな社会変革力をもった情報を発信しつづけたい」
教育を受ける学生:「過剰満足どころか、満足すらさ せない大学教育ってアリなの?」
研究型大学院大学という高等教育のプレイヤー:1)インターネット経由で遠隔教育をする営 利企業、2)大学設置基準の外にある「大学」、3)企業内「大学」(=研修組織)、4)コミュニティカレッジ
《結論》大学経営者には「血も凍る話」であるが、
サービスを受ける側には「ウルトラな情報」である。
★ 新しいコンテクストとしての新型コロナの世界流行=パンデミック(2020年1月〜)
2020年当初からの新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の世界的蔓延のため世界の大学は遠隔教育あるいはオンライン授業に切り替わった(→「デジタル・ヒューマ ニティーズ」)。これまで北米の大学は遠隔教育(distance learning, online education)は流行以前から行われており、日本の大学関係者におけるその導入の騒ぎや混乱は無縁のようである。他方でこの劇的な変化を契機に、日 本の大学教育環境が抜本的に刷新する可能性も否定できない。(→「大学が真にオープ ンになるために」)
★★さて、以下の記述は大 学における多様なメディアを高度に利用した授業について(文部科学省)を引用、あるいは準拠している。
大学設置基準
◎「大学設置基準(昭和31年文部省令第28号) (抄) ※大学院設置基準において準用、短期大学設置基準において同旨規定。 第25条授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。 2 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業 を行う教室等以外の場所で履修させることができる。 3 大学は、第一項の授業を、外国において履修させることができる。前項の規定により、多様なメディアを高度に 利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる場合についても、同様とする。 4 略」
◎「平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基 準第二十五条第二項の規定に基づく大学が履修させるこ とができる授業等)(以下、「メディア授業告示」) (抄) 通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の 多様な情報を一体的に扱うもので、次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第二十五条第 一項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。 一同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所 (大学設置基準第三十一条第一項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近 い場所を含む。)において履修させるもの 二毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該 授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用する ことにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関す る学生の意見の交換の機会が確保されているもの」
授業のタイプ
1)同時双方向
2)オンデマンド
単位修得の数の上限
1)【学部(通学制)】卒業要件124単位中、60 単位まで
2)【学部(通信制)】卒業要件124単位すべてを メディア授業により修得可
3)【大学院】卒業要件30単位すべてをメディア授 業により修得可。※ただし研究指導は別途必要
4)【短期大学】(a)修業年限2年の場合:卒業要
件62単位中30単位まで;(b)修業年限3年※の場合:卒業要件93単位中46単位まで(※修業年限3年以上の夜間学科等のうち、短期大学設置基準第
19条の卒業の要件の特例の対象となるものについては、卒業要件62単位中30単位まで((a)と同様))
授業時間の縛り→法令「大 学設置基準」(京都大学のサイトより)
「1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内 容をもって構成することを標準とすること(第21条第2項)/講義及び演習については、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって 1単位とすること(同第1号)」
その他の留意事項:「メディアを活用することによ
り、1度に多くの学生を対象にして授業を行うことが可能となるが、受講者数が過度に多くならないようにすること」平成10年3月31日文部省通知)
オンライン(MOOC等)の活用で、現行法令でできること
1)大学が自ら、あるいは外部機関等と連携し、 MOOC等を開発して、自らの授業科目として開設し、修了者に単位を付与。(卒業要件124単位中60単位まで)※メディア授業として開設。この場合、メ ディア授業の要件や留意事項(十分な指導を併せ行うこと等)を満たすことが必要。
2)自大学の学生が、他大学が自らの授業科目として 開設したMOOC等を科目等履修生として履修し、当該他大学から単位を付与された場合、当該単位を自大学の単位として認定。(卒業要件124単位中60単 位まで)※大学設置基準第28条第1項に基づく単位互換
3)授業の一部で外部機関等が開設したMOOC等を
「教材」として使用。あるいは、MOOC等を提供する外部機関等と連携協力して授業を実施*。
(例)教室において、授業担当教員が事前説明をした後、MOOC等を聴講させ、最後に授業担当教員が
まとめやきめ細やかな指導を行う。
※学生がこのような外部機関等のMOOC等を大学外で学修したことのみをもって単位付与するような運用は不可。
*大学が当該大学以外の教育施設等と連携協力して授業を実施する場合には、①授業の内容、方法、実施計画、成績評価基準及び当該
教育施設等との役割分担等の必要な事項を協定書に定めている、②大学の授業担当教員の各授業時間ごとの指導計画の下に実施され
ている、③大学の授業担当教員が当該授業の実施状況を十分に把握している、④大学の授業担当教員による成績評価が行われるなど、
当該大学が主体性と責任を持って、当該大学の授業として適切に位置付けて行われることが必要。(平成19年文科高第281号通知)
★ どうせ滅びるのなら、前倒しで潰してやろうという発想も ある
● 遠隔教育で大学はもっと栄えるという発想もある
2020年に物故されたクレイトン・クリステンセン 先生は、大学教育は典型的な無消費の構造をもつ市場なので、それこそ が「新市場創造型のイノベーション」を生むとという。ただし、それはこれまで我々が創造してきたあの懐かしい大学ではない!(→「スマート キャンパス」)。「新市場創造型のイノベーション」は「旧市場破壊型の イノベーション」であることは言うまでもない。
大学教育では「受けたい時に受けたい場所で教育を消費できない人は、無消費の状況にいる」とい う。彼/彼女らには、言うまでもなくメディア教育の破壊的イノベーションの恩恵をもたらす。
下記の私の職場(大阪大学)における顧客(=学部学
生と大学院生)は、過剰満足の顧客であるが、彼/彼女らにも、メディア教育の破壊的イノベーションの恩恵をもたらす。
「(1)私自身も今学期、メディア授業を 実施しました。そこで実感したのは、メディア授業の利点です。対話型の授業において、学生たちがむしろのびのびとしゃべっている、遠慮なしにしゃべってい る、ということが、私の授業でも起こっています。今までは時間があわなくて受講できなかったとか、自宅が遠方で参加できなかったという、参加したかったけ れど参加できなかった人たちが参加できるということもあります。授業の受講人数が昨年度に比べて大幅に増えたのには、私自身も驚きました」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
「(2)学生が物理的に登校を禁止されるという不可 避的な状況が、先生たちをしてオルタナティヴな授業を工夫させるようになったと、私は現状を前向きに捉えています。今後、状況が落ち着いて学生がキャンパ スに戻って来たとしても、この経験を活かしつつ対面授業とメディア授業を併用していくのが良い、と考えています」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
「(3)私の授業には、他大学の文化人類学系 の研究者が参加することがあります。授業の合間に、自然発生的に私とその研究者との間で専門家トークが行われたりするのです。学生たちは、そのトークを、 横で、というか、イヤホンで、なんとなく聴いている、という状況になります。専門家たちがいったい何を考えているのか、裏話も含めてさりげなく聴くことが できるわけです」(→「知 識は一生ものだから……」の再掲です)。
「(4)こういった状況は、非常に文化人類学的だと 思います。文化人類学のフィールドワークに おいて、研究者は現場に入っていき、そこで「君は何も知らないんだねぇ」などと現場の人たちに言われながら、様々なことを感じ取り、学んでいくわけです。 医療の現場をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんね。部屋の中央で患者と医師が話をしている。それを取り巻いているのは助手たちで、そのさら に外側、部屋の隅には、医学生やそれ以外の人たちがいて、患者と医師の話に耳をすましている。徒弟制度ではそういった仕組みが今も機能していますし、我々 の日常生活のなかにもそういう風に物事を学ぶ場面がありますね。一方、学校ではそういう経験はなかなかできません。私は学生たちが「現場に埋没して学ぶ」 という経験をするのに、このようなメディア授業は良い機会なのではないか、という捉え方もしています」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
「(5)授業では、私はまるで深夜ラジオのDJのよ うに講義をしているのですよ。そういう意味では、受講生みんなが私を観察している、という風にも捉えることができます。たとえ私の話を漫然と聴いているよ うであっても、知らない間に、この人が言いたいことは何なのか、とか、この人は何をしようとしているのか、とか、そういうことを考えているはずなのです」 (→「知識は一生ものだか ら……」の再掲です)。
「(6)私は、「じわじわと」大学の外に出ていくよ うな授業をしたい、と考えています。ここからここが大学、とはっきりとした線をひい てしまうのではなく、気がついたら授業を受けているのは大学の外だった、というような状態をつくりだしたい。大学の外の人も、なんだか気が ついたら授業に参加してしまっていた、という状態が、学ぶ環境として良いのではないか、と考えています」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
韓国・延世大学(YONSEI
University)のスマート大学構想(画像でリンクします)
「(7)知識というものは「一生もの」なのだから、今だけ学ぶ、この時期だけ学ぶ、というものでは ないのです。学びは一生続いていくものであり、大学という場所にはいつでも入って来ることができるし、いつでも帰って来ることができる。そういう環境をつ くることが大切だと考えています」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
「(8)授業を行う人、授業を受ける人、そして、授 業を管理する人の「倫理」が非常に重要になると思 います。最低限これは守る、ここは大切にする、というものを整理しておく必要があります。そしてもし、そこからはみ出るようなことがあれば、いつでも相談 できる体制づくりも必要でしょう」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
「(9)メディア授業を経験したことで、かえってや りやすくなった人、モチベーションがあがった人が、必ず存在するはずです。それはどういう人たちなのか。どのような理由でそうなったのか。そのような経験 を糧にして、ウィズコロナ、ポストコロナ時代を迎えるべきだと考えています」(→「知識は一生ものだから……」 の再掲です)。
★用語解説
「MOOC, Massive Open
Online Course
(ムーク:大規模公開オンラインコース)とは、オンライン(インターネット)上でなんら受講制限をもうけずに、希望する人が受講できる大規模公開のオンラ
インの受講コース(授業やプログラム)のことである。2012年ごろから米国ではじまった。/"What Is a MOOC? - A massive
open online course (MOOC) is a model for delivering learning
content online to any person who wants to take a course, with no limit
on attendance." - EDUCAUSE.」
リンク(教育とコスト)
リンク(池田光穂の関心など)
リンク(法令)
文献
その他の情報
ここまで真面目に読んでくださったみなさま方ありがとう ございます。きゃりーぱみゅぱみゅの「演歌なとりうむ」で疲れを癒してください。