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異文化とはなにか?

Concept of Transcultural Nursing, 01/10

池田光穂

異文化とはなにか?

異文化理解(understanding of other cultures)とは、世の中には複数の「文化」が共存していることを前提にして、自分が所属する文化とは「異なる文化=異文化」を、理解したり、解釈したりしようとする努力のことをさす。

異文化を理解するためには、自分が分かろうとしてい る「異文化」ないしは「文化」が輪郭をもった具体的な集合体であることを認識することが重要である。文化とは、「人間が後天的に学ぶことができ、集団が創 造し継承している認識と実践のゆるやかな体系のことである」と定義する。これは19世紀の人類学者エドワード・タイラーにさかのぼる文化の概念の古典的な 定義のひとつである。文化を表す英語は、耕作の意味に由来するカルチャー(culture)であり、欧米では単数形(小文字、大文字)と複数形で表現する 方法がある。とりわけ、耕作ではない人間の文化を表現する時には、単数であれば人類が共通に有する普遍的な性質を意味し、複数の場合には文化の多様性を前 提としてそれぞれの民族集団ないしは社会集団のなかに、複数のタイプの文化が存在しているという立場を意味することに注意しなければならない。

異文化を理解するために、さまざまな学問があるが、 最終的に、自分がどのような方法論に依拠するのかについて、自覚していることが重要になる。ここでは、文化人類学や看護人類学の学問的枠組みをつかって異 文化理解について考えてみよう。文化人類学の基本的方法は、(1)フィールドワークと、(2)民族誌(エスノグラフィー)の作成に支えられている。フィー ルドワークをするためには、現地語の習得と、その地域について書かれた民族誌(報告書や論文)を事前に読み理解しておかねばならない。

調査者は、他者の文化(=異文化)について記述する ことを通して、文化の記述にはときに誤解や間違いがあることに気付くようになる。そして自分の理解と他者の理解の記述を、相対的にかつ冷静に比べることに 専念する。また、異文化理解の方法を、私たちは自文化に対してむけることも可能である。その場合は、自分自身があたかも「他者の文化の住民であるか」のよ うな考え方に到達できるかどうかが重要になる。

このように文化概念を理解すれば、自文化と異文化の区別には細心の注意が必要であり、また共通点も安易に見逃してはならないことの重要性が、皆さんにもお分かりになったと思う。

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

看護人類学入門

池田光穂