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異文化を把握する方法

Concept of Transcultural Nursing, 02/10

池田光穂

異文化を把握する方法

異文化を把握する方法にはどのようなものがあるだろうか。地域研究、文化人類学、そして国際看護などにおける異文化研究のための方法として(1)フィールドワークと、(2)民族誌(エスノグラフィー)の作成という2つの方法があると先に述べた。

フィールドワークとは、「研究対象となっ ている人びとと共に生活をしたり、情報を提供してくれる人びとである人々つまり「インフォーマント(informant)」と対話したり、インタビューを したりする社会調査活動のことである。民族誌とは、フィールドワークにもとづいた、人びとの生活に関する記述であり、文化人類学者はその調査記録である民 族誌著作や民族誌論文のことである。

インフォーマントとは、調査において調査 者に情報(information)を提供してくれる人のことである。インフォーマントには、対価を支払う/支払わない、友人である/ないにかかわらず、 調査のプロセスで接触するすべての人々が含まれると考えてもらってよい。現地の人と出会い、話し合うことを通した自分の活動を反省的にみれば、調査者自身 もまた相手にとってインフォーマントとなりうる資格をもっている。同時に看護師を含む現地の医療スタッフや患者の家族、現地の人々も調査者にとってイン フォーマントになる。いずれのケースでも、インフォーマントと調査者の間に、十分な信頼関係(=ラポール)がとれていることと、インフォーマントの言った ことをきちんと他の情報源から確証をもてる情報に鍛え上げることが重要である。

インタビュー技法には、大きく次の4つが ある。つまり、1)構造化インタビュー、2)半構造化インタビュー、3)非構造化インタビュー、そして4)フォーカス・グループ・インタビューである。ま た、非構造化インタビューには、デプスインタビュー(深層インタビュー)と、民族誌的インタビュー、の2つに下位分類される。それぞれの方法論の特徴と説 明は参考書等にてチェックしてほしい。

続いて、エスノグラフィー(=民族誌)とはなにかについて説明しよう。エスノグラフィーと は民族について書かれたものを意味し、フィールドワークという経験的調査手法を通して、人々の社会生活について具体的に書かれた「体系的体裁によって」整 えられた記述のことである。ただし、写真やスケッチなどの映像資料、現代にまで続く旅行記、さらにはメディア技術の発展を通して動画(フィルムやビデオ映 像)による映像記録なども、エスノグラフィーに含まれる。民族とは、ある土地に住み集団を形成し、そして同一の言語を話す人びとのことである。このように民族を定義すると、民族はそれぞれの文化の担い手であり、文化が複数形で表現される事実をよく理解することができよう。

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

看護人類学入門

池田光穂