Dialogue between Medicine and Religion
池田光穂
呪術(宗教)は本当に(病気治療に)効くので しょうか?——これに真面目に答えようとするのがこの授業です!(→「宗教人類学と医療宗教学のあいだ」)
このヴァーチャル授業は、専攻が決 定されていない1年生の学生を主な対象とする宗教人類学の講義です。宗教と医療 は、近代社会においては、それぞれ別の社会的機能をもつ制度であると社 会学理論は、私たちに教えます。すなわち、宗教は何らかの心の平安をもたらす制度、そして、医療は心身の不調(=病気)を自然科学的な方法——臨床検査、 手術、投薬、生活管理など——で治してくれる制度だからです。
しかし、人類の歴史を 遡れば、このような社会的分業が発達したのは近年であることが一目瞭然です。私たちが日頃使う言葉の中にある「癒し」に着目しましょう。宗教がもたらす癒 しは「心が平安になる」ことを意味しますが「傷が癒される」とか、「心身が癒される」と表現すると、それは病気や病苦から治ることを指します。「癒し」に は、宗教的なものと医療的なものの2つの意味があるように思われます。
他方、伝統的な社会 (=「昨日までの社会」)では、呪い(=呪術)が人を苦しめたり病気にしたりするという思考法は当たり前のようにあります。そのような病苦からの解放され るには「まじない」や儀式——文化人類学では儀礼と呼びます——が不可欠なこともよく知られています。伝統的な社会のみならず近代においても、呪術あるい は呪術的思考法について研究する文化人類学者は、しばしば、学生から「呪術は本当に効くのでしょうか?」「まじないで人を傷つけたり殺したりすることでで きるのですか?」としばしば聞かれます。この授業は、端的に、これらの素朴な私たちの問いに、学問的に真面目に答えようとするものです。さ
どのような宗教でも、 (a)人間の病苦に関する教義による説明と、(b)それを「癒す」ための具体的な方法があります。先に、かつて宗教と医療は同じ社会的機能をもっていたと 記しました。宗教と医療は鋭く対立するものとする見方でも、これらの間には対応概念があります。医学理論では、それぞれ(a)病因論、(b)治療法と呼ぶ ものがこれです。現代社会における宗教の働きや実態を、具体的に取り上げながら、それを分析する方法として、伝統的な医療を研究する文化人類学の方法論 ——医療人類学と言います——を用います。私たちが持つ宗教のイメージを解体し、心身を「癒し」たり「苦し」ませたりする技法——「臨床実践」と言います ——という観点から宗教がもつ古くて新しいイメージと機能について、一緒に考えましょう。
学期が終わって、みな さんが「呪術は本当に効くのか?」について、納得のできる解答を与えることができれば、この授業はとても楽しくて有意義なものになっているでしょう!
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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
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