はじめに よんでください

ジャレド・ダイアモンド『昨日までの 世界』問題集

Jared Diamond's Book, "The world until yesterday": Problems

池田光穂

この本の原著は、Jared Diamond, The world until yesterday : what can we learn from traditional societies? New York: Viking, 2012. です。

ここでは、この本の内容を文化人類学者である、私 (=池田光穂)の立場から検討した際に気づいた問題を指摘して、おなじように読書してきた仲間に審問するものです。各問題は、下記のリンクに繋げて各論と していますが、このページでは、以下の問題群をすべてこのページに集約してみました。

それぞれの問題集には、審問の加筆修正などがありま すので、以下のリンク先のものと微妙に異なっているものがあり、また、その修正点をここで訂正するものでもありません。

回数
タイトル(↓パスワードのない普通のリン クです)
ファイル(パスワード付き)
1
プ ロローグ:空港にて
Pro-World_u_Yesterday_JD2012.pdf
プロローグ:空港にて
2
第1章 友人、敵、知らぬ他人、そして 商人
01-World_u_Yesterday_JD2012-2.pdf
3
第2章 子どもの死に対する賠償
02-World_u_Yesterday_JD2012.pdf
4
第3章 小さな戦争についての短い話
03-World_u_Yesterday_JD2012-2.pdf
5
第4章 多くの戦争についての長い話(前 半)
04-World_u_Yesterday_JD2012-3.pdf
6
第4章 多くの戦争についての長い話(後 半)
(上に同じ)
7
第5章 子育て
05-World_u_Yesterday_JD2012-4.pdf
8
第6章 高齢者への対応——敬うか、遺棄 するか、殺すか?
06-World_u_Yesterday_JD2012-5.pdf
9
第7章 有益な妄想
07-World_u_Yesterday_JD2012-6.pdf
10
第8章 ライオンその他の危険
08-World_u_Yesterday_JD2012-7.pdf
11
第9章 デンキウナギが教える宗教の発展
09-World_u_Yesterday_JD2012-8.pdf
12
第10章 多くの言語を話す
10-World_u_Yesterday_JD2012-9.pdf
13
第11章 塩、砂糖、脂肪、怠惰
11-World_u_Yesterday_JD2012-10.pdf
14
エピローグ 別の空港にて
Ep-World_u_Yesterday_JD2012-11.pdf
15
さらなる読書のために
biblio-World_u_Yesterday_JD2012.pdf

【問題集】

昨日までの世界——復習チェック集

【プロローグ】空港にて

1.ポートモレスビーはどこにあるのか? ポートモレスビー空港での出来事はこの本を読解する上でなぜ重要なのか?
2.ファーストコンタクト(p.15)とは何か? 
3.コンタクト・ゾーンという文化史・文化人類学上の概念に、君は御存知か?
4.声調言語(トーン言語)と非声調言語の違いを説明しなさい
5.トク・ピシン語とは、どのような言語か? ——言語学上におけるピジンとクレオールの共通点と違いを説明できるか?
6.ニューギニアは「ある面では」、600万年におよぶ人類進化の歴史からみると「昨日までの世界」を映した窓と言える(p.19)におけ る、ジャレド・ダイアモンドにおける「ある面」という留保について簡潔に説明しなさい。
7.「昨日までの世界」「伝統的社会」「小規模社会」は、同義語であるが、どのようなニュアンスの違いがあるか、君自身のことばで説明せよ (p.21)
8.この本におけるWEIRDという頭文字省略語(アクロニム)を説明してみよう(p.24)
9.なぜ「過去を美化し、単純な暮らしをしていた時代」を懐かしんではいけないのか? ジャレド・ダイアモンドの主張をまとめなさい (p.25)
10.この本で採用されている、エルマン・サーヴィスの人間社会の〈発展・進度〉による4つのカテゴリーとそれに簡単な説明を加えなさい (pp..31-37)
11.進化論的アプローチとはなにか?(pp.39-40)
12.適応主義的アプローチとはなにか?(pp.40-)
13.伝統社会に対するこれまでの先人の研究者はどのようなアプローチをとってきたのか説明しなさい(pp.43-45)
14.この書物が、話題にしなかった研究テーマにはどのようなものがあるか、著者本人の言により列挙してみよう(p.46)

【第1章】友人、敵、見知らぬ他人、そして商人

1.我々は自分の行きたいところに自由にいける、という主張を通して、ジャレド・ダイアモンドは、この章で何を言いたいのでしょうか?
2.マウンテン・ピープルは、どうして、リヴァー・ピープルを怖れるのでしょうか?彼ら(=マウンテン・ピープル)の語り口と主張を通して描写してみま しょう(pp.60-61)。
3.山の民と川の民は、純粋に敵対関係にあるのではなく、「緊張感をはらんだ停戦状態のような関係」にある、とダイアモンドは記述しています (p.64)。この場合における「純粋な敵対関係」とは具体的にどのような状態をさすのでしょうか?
4.小規模集団は、自分以外の他人を「自分の友人・敵・見知らぬ他人」の3つのカテゴリーに分類するという。自分の友人には、どのような人たちが含まれる のだろうか?(p.81)
5.敵とみなす人たちには、どのようなものが含まれるだろうか? また、「見知らぬ人」とは具体的にはどのような人なのだろうか?(pp.81-82)
6.エヴァンズ=プリチャードが描く「見知らぬヌエル族どうし」が出会うと、彼らはまず何をしようとするのか、テキストからその様子を描き出してみよう (p.89)。
7.ファースト・コンタクトとは、どんなことを意味するのか?(p.94)
8.ニューギニア高地人たちは、ヨーロッパの白人と最初に接触した時に、なぜ「自分たちの世界観の既知の分類概念」に符合させようとしたのか?考えてみよ う(p.100)。
9.伝統的な小規模社会では、交易の範囲は近隣集団に限られているという(p.104)。なぜ、遠距離にわたる交易が認め難いのか?
10.物々交換による人の間の取引と、市場経済における貨幣を媒介とした取引の違いについて説明してみよう(pp.112-)。
11.伝統的な社会における交易品には、必ずしも生活必需品ではないような品物が含まれている(p119の表1-1)。それらの「贅沢品」には、どのよう なものがあり、また、どのような「目的」のために使用されたのか、記してみよう。
12.伝統的な取引におけるもっとも重要な目的は、「同盟関係の絆の強化」とダイアモンドは書く(p.129)。どうして、同盟関係の絆の強化に、商品の 取引が必要なのだろうか?——「政治的な配慮や社会的な配慮に重きをおく」(p.131)も参照にしつつ、考察してみよう。
13.我々がいう、土地の境界という概念は、我々が考えるどのような社会制度に根ざしたものであろうか?(pp.131, 他)
14.リヴァー(川の民)とマウンテン・ピープル(山の民)の間には、なぜ反目関係があるのだろうか?(pp.61-)

【第2章】子どもの死に対する賠償
1.マロの運転する車がビリーに撥(は)ねられた。このことの次第の説明するのが、ジャレッド・ダイヤモンドのこの章における課題である。——このような 解説は適切か?否か。それぞれの立場にたって、それらの理由を解説してみよう。
2.「伝統社会のなかには、人々が国家政府の正当な司法制度の枠外で実質的に生活している」とダイヤモンドは記している(p.136)。我々の日常生活に おいても〈国家政府の正当な司法制度の枠外〉というものは、見当たるだろうか? 考えてみましょう。
3.トク・ピシン語のsori money (Sorry money)(p.137)は、日本語の「賠償」よりも「謝罪金」に、その訳語は、ぴったりである。賠償金の思考と、謝罪金の思考の間にはどのような共通 点と違いがあるのか、考察してみよう。
4.マロが(ビリーを車で撥ねるという)事故を起こした後に、マロの会社の支店長(当時)のギデオンは、マロにどのような指示を与えたのか? その指示の 意味とはなにか?(p.138)
5.マロとギデオンの見解によると、「もし、マロが会社の車でなく、交通事故をおこし、犠牲者を出してしまった」ケースでは、どのように事故は、当事者間 で処理されるのだろうか? 説明してみよう(p.145)。
6.この種の交通事故の処理をめぐって、パプアニューギニアの司法制度と、伝統的な紛争処理解決では、どのような違いがあるのか、解説してみよう (pp.146-153)。
7.ニューブリテン島のカウロン族の子どもたちの遊びで、一房のバナナはどのように子供たちに分配されるだろうか。この情景を観察した、人類学者ジェー ン・グドールは、どのようにその情景を説明しているだろうか?(pp.155-156)——この解答のためのヒントはダイヤモンドの「ニューギニアの伝統 的社会では、個人の利得が優先されない」(p.156)ということにあります。
8.ブラジル・アマゾンのピダハンにおける社会的制裁とはどのようなものか、解説してください(p.160)。
9.スーダンのヌエル(ヌアー)族には、豹皮首長とよばれる紛争解決役がある。しかし「彼は部族の政治的指導者だが、政治的な支配の実権はなく、紛争や係 争の裁定を下す権限も、和解を強いる権威も有していない」と言われる(p.163)。そのような豹皮首長が、どのようにしてヌエル社会で紛争解決役として 機能できるのか? 解説してみよう(pp.164-165)。
10.近代社会において「個人をして私的暴力に訴えなくさせる方法」は2種類あるという:(1)国家権力を怖れさせ、その脅威により個人の武力行使を思い とどまらせる、(2)司法制度を機能させ、その処遇処理により信頼感を醸成し、個人が私的暴力に訴えないようにすること。その2種類について、解説し、我 々の社会でどのように、その方法が機能しているか解説してみよう(pp.167-168)。
11.なぜ、非国家社会にくらべて、国家社会は「相互の感情面での亀裂や対立の解消、友好関係の回復、あるいは相互の感情面での通じ合いの促進といったこ とを目的に、裁判がおこなわれることがない」のだろうか?(p.175)その理由を考えてみよう。——ナバホ族の紛争解決にヒントがあるかもしれない (p.176)。参照にしてみよう。
12.「国家社会の司法制度は、当事者間の人間関係や感情面の問題に関与すべきではない」とロースクール教授のマーク・グレーディは言っている (p.185)。マーク・グレーディの発言を参考して、君が、その主張の当否について考えみたまえ。
13.「司法的修復」とはなにか? (本書のみならずネット等で調べて)解説してみよう(pp.192-197)

【第3章】小さな戦争についての短い話
1.異部族間戦争と、部族内戦争の違いを述べてみましょう(p.209)。
2.1961年のダニ族の戦争と近代戦争を比較して、J.ダイアモンドは死傷者の数の問題ではなく、人口当たりの戦傷者の割合が問題なのだと主張していま す(pp.221-223)。具体的には、伝統社会における戦争(ないしは部族戦争)と近代戦争には、どのような類似点と相違点があるのでしょうか?

【第4章】多くの戦争についての長い話
1.戦争とはいったいなんでしょう? ダイアモンドの議論を参照して、あなたなりの戦争を定義してみましょう(pp.224-227)。ちなみにダイアモ ンドは、さまざまな論者の戦争の定義を議論したあとで次のように戦争を定義しています:「戦争とは、敵対する異なる政治集団にそれぞれ属するグループのあ いだで繰り返される暴力行為のうち、当該集団の一般意志として容認、発動される暴力行為である」(p.228)。
2.「伝統的戦争に関する入手可能な情報は、大半が二次資料なのである」(p.230)。この場合の、一次資料と二次資料とは、どのような資料のことを指 すのでしょうか? それぞれ説明を加えなさい。
3.部外者による伝統的戦争の記録資料は「観察という行為が被観察対象を歪めて」しまうと、ダイアモンドは記述しています(p.232)。どうして、観察 そのものが「被観察対象を歪めて」しまうのでしょうか?説明してください。
4.伝統的戦争にはどのようなものがあるのか? みんなで整理してまとめてみよう(pp.236-241)。
5.伝統的戦争と近代戦争には、どのような類似点と相違点があるのか? これもまた整理してみよう(pp.245-255)。
6.伝統的戦争は、戦争を終結させることが、近代のそれに比べて「大変」つまり困難であるとダイアモンドは述べている(p.256)。それは、どうしてで しょうか? 考えてみましょう。
7.人類学者スターリング・ロビンズが報告するニューギニア高地のアウヤナの人たちは、植民地政府が自分たちが長年続けてきた部族戦争を終わらせたことを 感謝しています(pp.258-259)。植民地政府は、彼の報告によると、どのような手段で部族戦争をやめさせたのでしょうか? また、この説明はみな さんにとって信じるに足る説明でしょうか? みなさんの見解をお聞かせください。
8.近代社会との接触(→ファーストコンタクト)後に、伝統社会での戦争行為が以前のものよりもより苛烈になったのではないかという仮説をダイアモンドは 説明しています(pp-265.261)。いったいどのような要因で、伝統社会での戦争は苛烈になったのでしょうか?
9.ジャン=ジャック・ルソーの原始社会=平和で闘いをしらない社会、という見解にたいして、ジャレド・ダイアモンドは史実において正しくないと反論して います。ダイアモンドの反論にはどのような根拠にもとづいておこなっているでしょうか?(pp.228-236, p.265 を参照)
10.ダイアモンドの反論(→9.を参照)にかかわらず、多くの文化人類学者は、伝統社会民は近代社会の人々にくらべて好戦的ではないし、また戦争行為を おこなっていないと主張しています。そのような見解に対しても、ダイアモンドは反論しています。ダイアモンドの現代の文化人類学者に対する反論を簡潔にま とめてみましょう(pp.266-267)。
11.チンパンジーにおける「戦争」はどのようなものでしょうか? チンパンジーははたして「戦争」というものをおこなっているのでしょうか? ダイアモ ンドは、そうだ(=戦争している)と主張しますが、それは、ダイアモンドが定義した「戦争」の記述と合致するでしょうか、それとも合致しない(=齟齬[そ ご]を起こす)でしょうか?(→1.を参照してください)
12.生物学的要因が人間の戦争行為にかかわっている可能性をダイアモンドは否定しません(p.270)が、「人間社会のなかに、生得的もしくは遺伝的に 平和を好む人々の社会と、生得的もしくは遺伝的に戦争を好む人々の社会があるという主張はありえない」と述べています(p.272)。この一見矛盾するよ うな説明について、皆さんはどう思われますか?ダイアモンドの説明に問題があるのでしょうか? それとも擁護すべき別の説明があるのか? みんなで考えて みましょう。
13.伝統社会での戦争の要因を、ダイアモンドは、「捕虜にした子ども、牛、首級、馬、人体、土地、土地から産出する資源や土地の利用権、豚、栄誉名声、 タンパク源、奴隷、交易権、妻(女性)」が戦利品であり、それらの獲得をめざすものだと言われています(pp.273-274)。しかし、別の箇所(例、 第3章、p.211)では、「豚祭りに出席するために近隣の部族に住む親戚を訪問していたグテル部族同盟に属する集団」の男女が殺害されたいたことが、1 か月後の戦争を引き起こした遠因としてあげている。この矛盾を君はどのように説明することができるのだろうか?
14.戦争の究極要因が説明できない理由としてダイアモンドは、究極要因は当事者が、それを自覚しているとは限らないということをあげています (p.279)。これまでのダイアモンドの解説を通して、我々は人類がおこなう戦争の究極要因——例としては土地などの資源の獲得(p.280、参照) ——をどのようにすれば、明らかにできるのでしょうか? 究極という数限られた要因で説明しようとするダイアモンドの姿勢の当否も含めて検討してみましょ う。
15.ルイス・リチャードソンの近代国家間の戦争に関する、統計にもとづく経験主義的な研究についてまとめてみてください(pp.285-287)。
16.近代戦争や伝統的戦争にかかわらず、戦争行為を考察する要因として「復讐心」について、戦争について考察を深めたい現代人はより深く考えるべきだ と、ダイアモンドは主張しています(pp.291-296)。これらの言及箇所を読んで、君自身が考える「戦争と復讐心の関係」について考察してくださ い。

【第5章】子育て
1.ダイアモンドがニューギニアで出会った、エヌという少年の行状は、私たちにとって、どのような点でユニーク(特異的)なのでしょうか? 君たちの身の 回りにいる少年・少女とどのような点で、異なっているのか列挙して整理対照してみましょう(pp.298-299)。
2.私たちは、なぜ伝統社会の子育てに注目すべきなのでしょうか?(pp.299-301)
3.WEIRDと呼ばれる社会はどのような特徴をもつのでしょうか? それぞれの頭文字の英語の原語と、それに対する和訳をつけて説明してください (p301)。
4.いわゆる「理想的な出産」というものが、近代社会と伝統社会とでは異なるように、伝統社会の中でも、それぞれ異なるものとみなされているようだ (pp.303-305)。どうして、それぞれの社会で「理想的」と見なされているものが、お互いに異なるのか? また、その理由はなんでしょうか?
5.嬰児殺し(えいじごろし)とは、どのようなことをさすのでしょうか? また、伝統社会ではどのようなときに嬰児殺しが実行されてきたのでしょうか?
6.近代社会においても——もちろん日本社会でも!——嬰児殺しなどについて報道されることがあります。伝統社会の嬰児殺しと、近代社会における嬰児殺し はどのように違うものとみなされているのでしょうか?
7.採集狩猟民が、定住農耕化の生活を強いられるようになると、出産間隔が短くなるようです(p.309)。その理由は、なぜでしょうか?
8.伝統社会では一般的に、乳児への授乳期間が長く、また乳児が欲求すると比較的自由に哺乳できるようです(pp.311-314)。なぜ、そのようなこ とがおきるのでしょうか? ダイアモンドの解説に即してまとめてみましょう。
9.乳児とオトナ(親を含む)の間のスキンシップについて、伝統社会と現代社会——とりわけ米国のそれ——は異なるようです(pp.314-319)。ダ イアモンドの解説に即してまとめてみましょう。
10.アロペアレンティングとはなんでしょうか?(p.321) ダイアモンドは、アロペアレンティングが伝統社会で頻繁であり、かつ有益な子育ての一種 であり、また、アロペアレンティングが少なくなった近代社会では、復活させてもよいのではないかと提唱しています(p.355-356)。どうして、アロ ペアレンティングは有益で、また、近代社会では復活したほうがよいと考えられるのでしょうか? 解説してみましょう。
11.伝統社会では、体罰を容認する社会と、近代社会よりもはるかに体罰を禁止することに熱心な社会があるようです。体罰の多様性は、体罰をどのように考 えているのかについての社会の考え方の反映のように思われます。体罰現象の多様性について、事例を交えながら解説してください(pp.330-336)。
12.子ども自律性と遊びは、子どもの教育「制度」や「発達」にさまざまな影響を与えているようです(pp.336-353)。君が興味のあるテーマを選 んで、それらの関係について論じてみましょう。

【第6章】高齢者への対応——敬うか、遺棄するか、殺すか?
1.フィージー諸島ビティレブ島の男性は、なぜ「アメリカって国は、年寄りを捨てたり、自分の両親の面倒をみない国なんですか!」って、この著者ジャレッ ド・ダイアモンドに怒ってみせたのでしょうか?(上:p.358)
2.高齢者の社会的処遇における問題のひとつに、何歳をもって「高齢者」とみなすのかという定義が一律で定められていないという問題があると述べられてい る(上:p.360)。なぜ、世界統一基準で高齢者を定義する年齢が定められないのか?とりわけ伝統社会における「高齢者像の多様性」に着目して論じてみ ましょう。
3.高齢者の社会的処遇における問題の別のひとつに、高齢者の生存状況の多様性がある(→2.の課題を参照)。ダイアモンドは、その多様性を生む理由に (α)社会の物質的な側面における相違、と(β)社会の文化的価値観の相違、という2つのものをあげている(上:p.361)。このことにつき、第6章で あげられたさまざまな事例をあげながら、〈このように高齢者の生存状況の多様性は、高齢者の処遇の物質的な理由と高齢者処遇の文化的価値観の相違に根ざす のである〉と結論づけられるような、論述を完成させてみなさい。
4.高齢者に対する処遇の「楽観主義的理想論」とはどのようなものか、まとめてみなさい(上:pp.362-363)。
5.高齢者に対する処遇の「楽観主義的理想論」に対して、ジャレッド・ダイアモンドは、「人はみな、高齢者だろうとなかろうと、子どもに快適な暮らしをさ せ、自分もまた快適に暮らしたいと願う」のだとまとめている。このような主張がなぜ、「楽観主義的理想論」と相反するのか、簡潔にまとめてみなさい(上: pp.362-364)。
6.「子どもがダーウィン流の考えの道筋にそって行動すると」子どもが年老いた親の面倒をみるべきである、という見解を、ダイアモンドは「自然淘汰の原 則」をもとにそれを批判している。では、ダイアモンドが批判して止まない、「子どもがダーウィン流の考えの道筋にそって行動すると、子どもが年老いた親の 面倒をみるべきである」という〈誤った推論〉は何が間違っているのか?検討しなさい(上:pp.362-364)。
7.なぜ移動型の狩猟採集民は、子どもが親のケアを放棄してしまう。棄老してしまうことが多いのか?その理由を考えてみよう(上:pp.364- 365)。
8.棄老が移動型の狩猟採集民を中心にすることの他に、そのような生業に従事する人びとの生息環境について、ダイアモンドは指摘している。そのような環境 とはどのようなものか?(上:p.365)
9.上掲の質問(8.)で指摘された環境に住む人びとでも、棄老が起こり難いこともあるのはなぜか?(上:p.365)
10.棄老の様式についてジャレッド・ダイアモンドは次の5つの方法を述べている。その具体的な方法について、それぞれ簡潔に解説しなさい:(1)ネグレ クトあるいは放置死(上:p.366)、(2)意図的な置き去り(上:pp.366-367)、(3)自殺の教唆(上:pp.367-368)、(4)自 殺幇助あるいは嘱託殺人(上:pp.368-369)、(5)当人の同意なしの殺害(上:p.369)。
11.陰惨な棄老の事例に紹介したあとに、レイテ沖海戦の日本側の責任者であった日本海軍の栗田健男(1889-1977)元中将に対するウィンストン・ チャーチルの言「同じ試練に耐え抜いた者だけが、彼を審判することができるだろう」を、ジャレド・ダイアモンドはなぜ引用したのだろうか?考えてみよう。
12.ダイアモンドによると、採集狩猟社会において、高齢者ができるサービスは、(α)どの世代でも提供できるサービス、と(β)高齢者ならではサービス の2つに分けている(上:pp.370-374)。そのことにつき、解説してください。
13.伝統的な社会における「適応主義の観点」とはなにか?説明をしなさい(上:p.370)。
14.ジャレド・ダイアモンドが、ソロモン諸島レンネル島で経験した、その社会の老人の言う「フンギケンギの後だけ食べる」ということは何のことなのか?  フンギケンギとは何であるのか?またこの社会における老人の「価値」についてダイアモンドが何を言おうとしているのかについて解説しなさい(上: pp.374-375)。
15.現代アメリカにおいて高齢者の地位が低い理由を、ダイアモンドはつぎの3つの観点から説明している:(α)労働論理の価値観、(β)アメリカ特有の 価値観、(γ)若さへの礼讃(上:pp.380-385)。それらのことについて具体的に解説しなさい。
16.伝統社会における高齢者が尊敬(リスペクト)される状況について、ダイヤモンドは、(1)食の禁忌(タブー)、(2)若い女性への性的な禁忌(タ ブー)、(3)所有権がもたらす影響、の三点について解説している。それぞれ、事例を交えて解説しなさい(上:pp.387-391)。
17.ジェロントクラシーに対する反対語は何というのか?
18.エンプティネスト・シンドローム(空の巣症候群)とはなにか?説明しなさい(上:p.396)。
19.ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「祖父母としての伝統的役割の再認識と、その役割の復活」について説明しなさい(上: pp.401-404)。
20.ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「急速な技術革新と社会的変化への対応」について説明しなさい(上:pp.402-404)。
21.ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「加齢にともなう心身の変化、心身の強みと弱みの変化を理解し、活用すること」について説明し なさい(上:pp.404-406)。

【第7章】有益な妄想
1. 私(=池田)は、この章をまとめて解説するときに「我々はみなニューギニア人だ!」とまとめることがあります。どうして、私は、この章を読んで、このよう な叫びをするにいたったのでしょうか?みんなで考えてみましょう!
2. ダイアモンドのニューギニア人助手はなぜ「あの巨木の幹の脇で寝るのは嫌だ」と言ったのでしょうか?(p.13-14)
3. 「建設的なパラノイア(constructive paranoia)」と、形容詞の付かないふつうの「パラノイア」には、どのような違いがあるのでしょうか?(p.14)
4. リスクが低くても、頻繁におこなう「建設的(構築的)なパラノイア」にはどのような意味があるでしょうか?(p.14)
5. 君たちにとって、ハイリスク・ハイリターンな行為、ハイリスク・ローリターンな行為、ローリスク・ハイリターンな行為、ローリスク・ローリターンな行為、 の事例をそれぞれ、ひとつずつあげて、ハイ/ローリスク、とハイ/ローリターンの要素が何であるのかを抽出してごらんなさい。
6. 著者ダイアモンドが経験した、建設的パラノイアに関する3つの事例(「真夜中の訪問者」pp.17-24、「カヌーの転覆事件」 pp.24-39、「地面に突き刺さった枝」pp.39-55)のうち、ひとつを選んで、何が「建設的なパラノイア」の思考であり、ダイアモンドならびに ニューギニアの人は、どのようなリスクを結果的に「低減」することに成功したのだろうか、説明しなさい。
7. ホッケー選手ウェイン・グレツキーは「打たないシュートは100%入らない」と言いましたが、この警句は、ダイアモンドに対してどのような意味をもたらし ているのでしょうか?(p.56)
8. 人類学者ロナルド・ベルントの報告する、ジェムとその子供の強姦殺人事件に関して、登場人物の親族関係の図式を完成させ、この図式にもとづいて、事件の概 要を説明しなさい(pp.58-59)。
9. ダイアモンドは、第7章を閉じる際に、会話をおこなうことが、さまざまな人間関係におけるリスクを回避するのみならず、ベネフィット(便益)をももたらす と述べています。会話がもつ、リスク回避等の役割(=ポジティブな機能)について解説しなさい。
10. シングルマザーであったサラは、どのようにして幸運を得たのでしょうか?——その物語を、第三者にもわかるように説明してください(pp.63-64)。

【第8章】ライオンその他の危険
1.文化人類学者のメルヴィン・コナーが、カラハリの小さな町に、コマと呼ばれるクン(族)の男性を連れてきたときに、なぜ、コマは、自動車が通ることも まれな道路を横断することに、脅えたのでしょうか?(p.65)
2.コマの感じた恐怖はイリアンジャヤのファユ族と一緒に生活していたドイツ人宣教師の娘キューグラーさんが、スイスにおいて17歳の時に、親元を離れて 暮らした時に感じたものと同じような体験なのでしょうか? アフリカのカラハリ砂漠と、イリアンジャヤの熱帯雨林は全く異なる環境なのに、二人の経験の共 通点と相違点について考えてみましょう!(pp.65-67)
3.アメリカ(合衆国)における、外科手術と殺虫剤はどちらが危険でしょうか? それぞれの危険の「具体的な内容」について簡潔に述べなさい。
4.我々の社会における(1)環境上の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険なのか具体的内容をあげて みましょう。
5.我々の社会における(2)人の暴力行為の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険なのか具体的内容を あげてみましょう。
6.我々の社会における(3)感染症と寄生虫疾患の危険、にはどのようなものがある/あったでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険なの か/だったのか具体的内容をあげてみましょう。
7.我々の社会における(4)飢餓の危険、にはどのようなものがある/あったでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険なのか/だったのか 具体的内容をあげてみましょう。
8.「昨日までの社会」(=伝統社会)における(1)環境上の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険な のか具体的内容をあげてみましょう(pp.77-82)。
9.「昨日までの社会」(=伝統社会)における(2)人の暴力行為の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で 危険なのか具体的内容をあげてみましょう(pp.82-92)。
10.「昨日までの社会」(=伝統社会)における(3)感染症や寄生虫の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意 味で危険なのか具体的内容をあげてみましょう(pp.92-98)。
11.「昨日までの社会」(=伝統社会)における(4)飢餓の危険、にはどのようなものがあるでしょうか? それぞれ列挙した後、どのような意味で危険な のか具体的内容をあげてみましょう(pp.101-105)。
12.コミュニティが周期的に直面する飢餓の危険に対して、スーダンのヌエル族の人たちは、どのようにして、そのリスクを回避してきたでしょうか? (p.106)
13.コミュニティが周期的に直面する飢餓の危険に対して、カラハリのクン・サン族の人たちは、どのようにして、そのリスクを回避してきたでしょうか? (pp.108-109)
14.家族が周期的に直面する飢餓——ジャガイモの収穫の不安定さ——の危険に対して、アンデスのチチカカ湖周辺のクージョ地方の農民たちは、どのように して、そのリスクを回避してきたでしょうか?(pp.110-114)
15.(ここで)アンデスのチチカカ湖周辺のクージョ地方の農民たちに対して、世銀や国際通貨基金を背景にする農業プロジェクトは、分散した農地をまとめ る農地改革案を呈示したとします。このような「近代化」や「開発」は、彼らにとって、どのような生存上のリスクをもたらすでしょうか?(pp.114- 115)
16.ジャレド・ダイアモンドは「時間平均の投資収益率を最大にすることと、利益が致命的なレベルを下回らないようにすることの違いを理解しておくことは 重要」と述べています。これは、本章の内容に即してみると、いったい何を言おうとしているのでしょうか?この文章における、我々が学ぶ「教訓」とはいった い何のことでしょうか?
17.ハーバード大学の資金運用の失敗の教訓について、まとめて、私たち(=中学生・高校生を想定)にわかるように説明してみましょう!(pp.115- 116)
18.伝統社会における、周期的にかつ季節的に生じる食料不足に対して、どのような3つの対処法があったでしょうか? 説明してみましょう(pp.118 -126)。
19.ダイアモンドは、〈リスクの内容とその大きさ(=例:死傷者の数)を理解したら、我々はリスクを回避するようになる〉という素朴な前提に対して、5 つの理由から、それ(=前提)を批判しています。この5つについて列挙し、それぞれ簡潔な説明を試みなさい(pp.130-134)。

【第9章】デンキウナギが教える宗教の発展
1.チンパンジーは(人間と比べて)「宗教を持たない」と言われる(pp.139-140)。人間とチンパンジーのどのような違いが、その宗教の有無を決 定づけているのか、説明してください。
2.なぜジャレド・ダイアモンドは「宗教は、現代社会において伝統的なものが衰えをみせずに存在している唯一のものである」と断言するのか? (p.140)現代社会において、それが衰えていない「具体例」をあげて説明してみなさい。
3.宗教(ないしはその教団)の特徴として、「多くの場合において、信者に、貴重な時間と資源の投下を求める」とあります(pp.140-141)。その 具体例をあげて解説しなさい。
4.世の中に——とりわけ西欧世界では——「宗教が人間社会に遍在的に存在するのは、事実として神が存在するからであり、宗教の役割や便益をあえて発見す る必要はない」と主張する人がみられます(p.141)。このような「強い信念」を持つ人にも、納得できるように、今こそあえて私たちが「宗教を(社会学 的に)研究する意義があるのだということを、説明してみましょう。ここでの説明は、神の実在の有無ということを問わないでも、宗教は研究するに値する—— つまり社会的意義のある——大きなテーマであると説得することにほかなりません。これは、社会学を学ぶものにとっては極めて重要な主張(=説得)です。こ ころして答えてみましょう。
5.私が授業で説明したように、ジャレド・ダイアモンドは、「デンキウナギの誕生は進化論で説明出来ない」という〈神による万物創造派 (creationists)〉を、「デンキウナギの誕生は進化論で説明できる」という論駁方法を使って、「宗教の存在理由を科学で説明できない」という 〈宗教は人間であることの本質である派(religious essentialists)〉の論法を、「宗教の存在理由を科学で説明できる」で論駁する(=打ち負かす)ことができると信じているようです。従って ジャレド・ダイアモンドは「宗教の存在理由を科学で説明できる」という立場をとります。では、なぜ宗教は人類社会に遍(あまね)く存在するのでしょうか?  ダイアモンドが宗教が人類において存在する理由を、いったいどのような根拠をもって説明しているのでしょうか?(p.155, pp.159-166)
6.ジャレド・ダイアモンドが宗教は5つの特徴がみられると主張(p.151)していますが、我々が把握することができる範囲では3つの要素で十分である と思われます——そのことは授業で説明しました。宗教を説明する、必要不可欠の形態上の3つの要素とは、(1)教義があること、(2)信徒集団(=信者) があること、(3)宗教実践があること(=儀礼を実践すること)であるように思われる。しかし、これだけでは、倫理や道徳、あるいは慣習的実行と、宗教を 区分することができない。この3つの要素に加えて、そして3つの要素に通底する、信念の要素はいったい何であろうか? そのことを加えて、皆さんの宗教の 定義を完成させなさい(p.147, pp.147-151, pp.166-172)。
7.ウィリアム・ジェームズは、宗教的生活とは、どのようなものであると考えたでしょうか?まとめてみましょう(p.145)
8.エミール・デュルケームは、宗教をどのように定義したでしょうか?まとめてみましょう(p.146)
9.クリフォード・ギアツは、宗教をどのように定義したでしょうか?まとめてみましょう(p.146)
10.日本人に多いと言われる、アグノスティック(agnostic, 不可知論)やエイシスト(atheist, 無神論者)とは、どのような信念の持ち主なのでしょうか? 解説してみてください(用語の初出は p.148)。
11.ダイアモンドが考える宗教の機能に、我々が与える(さまざまな社会的)説明に「適している」からだと言って次の7つの機能を説明します:(1)超自 然なるものの説明、(2)儀礼を通した不安の解消、(3)苦痛や死を癒す、(4)制度的組織、(5)政治的服従、(6)同胞や他者への寛容性、(7)異教 徒への攻撃の正当化。これらのことについて、それぞれ、具体例を与えて説明しなさい(pp.176-209)。
12.11.で指摘した7つの宗教の機能について、ジャレド・ダイアモンドは、紀元前5千年から現在までの影響力の盛衰をダイアグラムで示しています (p.211の表9-3)。これらの中で、私たちの時代において、もっと減衰したものは何でしょうか? そして、現代においてもそれほど衰退せず十分な機 能を果たしてものは何でしょうか? これらの2つの機能を説明してください。


【第10章】多くの言語を話す
1.声調言語とはどのような言語でしょうか? また、そうでない言語(非声調言語)とはどのような言語でしょうか?——ウィキペディア等で調べてみましょ う。
2.ダイアモンドによると「西暦2100年までの、地球上の言語が95%まで完全に姿を消す」(p.215)と言われています。地球上の言語が、消失する ことが〈なぜそれほど深刻なのでしょうか?〉考えてみましょう。
3.「西暦2100年までの、地球上の言語が95%まで完全に姿を消す」という上掲の指摘と、地球上で話されている言語のうち「上位1%の言語が、世界人 口の約80%の人々で第1言語として話されている」(p.218)ということは、いったいどのようなことが言えるのでしょうか? 言語の種類の多さと、言 語人口にはどのような関係があるのでしょうか?簡単にまとめてください。
4.「世界の言語の一般的な話者数を推しはかる場合には平均値ではなく中央値を求めたほうがよい」(p.218)とは何のことを言っているのでしょうか?
5.言語間における、「コミュニケーションの非対称性の問題」(p.219)は何を指しているのでしょうか?
6.世界のローカルな生活空間のなかで生きている人々(=「昨日までの世界」の住民)の言語や方言の多様なあり方に対して、BBC, CNN, NHK, 中央電視台、アルジャジーラというメディアが言語使用にどのような影響を与えるのでしょうか?(p.211)
7.他者の言語を、流暢に話すということの「社会的意義」はなんでしょうか?(p.225)
8.言語の分布に影響を与える環境的要因を、ダイアモンドは次の4つに分けています。これらの間の関係は、相互に関係しているのでしょうか?それともそれ ぞれ、独立変数とみなすべきものなのでしょうか?考えてみてください:1)緯度の高低、2)気候変化や季節変化、生物的生産性(環境の生産性)、4)地域 特有の環境(pp.227-235)。
9.ジャレッド・ダイアモンドは、「ヨーロッパの多言語主義は最近のものであ」り、「高等教育の大衆化、第二次大戦後の経済的・政治的統合、英語を使用す るマスメディアの広がりの結果」だとしています(p.237)。しかし、フランスには、国家語としてフランス語が確立する以前には、数百年のオーダーをと ると、かつて数十から多く見積もると数百にまで及ぶ異なった言語や方言が話されていたといいます。学識あるダイアモンドは、なぜこのような初歩的なミスを したのでしょうか? あるいは、確信犯的にあえてこのような表現を使ったのでしょうか? EUの政策としての多言語主義と、歴史的事実としての「ヨーロッ パと呼ばれる地域における多言語使用」の実態について論じてごらんなさい。
10.オーストラリア・アボリジニー(アボリジナル)のキールウィール岬地域における多言語使用の様子を描写してみましょう(pp.238-240)。
11.アマゾンのバウペス川流域の多言語地帯において、住民はどのようにしてさまざまな言語を学ぶのでしょう?——我々のように外国語の教科書のない地域 での先住民の言語の学び方について解説してください(pp.240-241)。
12.かつては、米国において子どもをバイリンガル状況におくと、子どもがどちらの言語の学習も中途半端になりそれぞれに流暢に言語が話せなくなるという 「俗説」が流布していました。このような俗説は、日本のニューカマーの移民の社会においても、言語学研究に明るくない非専門家がしばしば述べるものとして 聞くことができます。ダイアモンドによると、どうしてバイリンガルの人は、そのような(単純なメカニカルな)混乱がおこらずに、バイリンガル状況を生き、 時には、モノリンガルの人と変わらない能力を身に付けることができるのでしょうか?(pp.242-248)
13.アルツハイマーの予防にバイリンガルは本当に効果があるのでしょうか?(pp.252-255)
14.少数民族民が使う言語がこれまで消失したり、亡びてきたりすることは、よく知られた事実ですが、それには、社会的に言って避けられない要因と、少数 言語の使用を抑制する政策という人為的な要因の2つがありそうです。北米先住民言語や琉球語などを事例にとって、それらの実態について解説してください (pp.261-263)。
15.言語の多様性は、コミュニケーションの齟齬をきたし人々の協力の妨げになるという主張があります(=これは、旧約聖書の逸話に基づき仮に「ポスト= バベルの塔的な主張」と呼ぶことができます)。しかし、ジャレド・ダイアモンドは、複数言語の使用はそのような事態を生み出さないと主張します (pp.268-270)——「言語の存続に有害なものは何もない」(p.271)。この考え方をまとめてください。
16.言語の使用が、社会の成員のコミュニケーションのツールになるばかりでなく、アイデンティティの共有や場合によってはアイデンティティの「強化」に 繋がるのでしょうか?(pp.271-277)
17.(存亡の危機に面している少数)言語を維持し、進展してゆくためには、当事者のみならず、地球社会が取り組むために、ダイアモンドは3つの処方せん を提唱しています。その3つの処方せんについてまとめなさい(pp.277-280)。

【第11章】塩・砂糖・脂肪・怠惰【エピローグ】別の空港にて
1.「昨日までの世界」は、「今日の世界」に対して、非感染性の疾患と伝染性疾患の比率(シェア)の分布はどのように異なっているのでしょうか? 〜の世 界は、〜がより多いという命題の形で表現しなさい。
2.ジャレッド・ダイアモンドは、非感染性の病気の蔓延と西洋の生活様式の普及には関連性があると主張しています(pp.284-285)。そのような現 象がみられる社会や人々について、彼は4つの集団の区分分けを提唱しています。その4つの区分(グルーピング)について述べてみましょう。
3.ボイド・イートンらの研究(「パレオダイエット(石器時代の食生活)」)によると「非感染性疾患という文明病は、われわれの遺伝子構成と、現代の食生 活と生活様式のミスマッチからきていると指摘」しています(p.286)。これを、(1)塩分摂取による高血圧、(2)食塩の摂取量の長期的な変化、 (3)人間が進化的に獲得した塩分保持のための遺伝子の保存、という3つの点から説明しなさい(pp.299-302)。
4.なぜ人類の生活向上のなかで、人類は塩分を「過剰」に摂取するようになったのでしょうか?
5.なぜ、加工食品において、商品の原価コスト減のために食塩が、以前よりも多く使われるようになってきたのでしょうか?(p.304)
6.塩分による原因を含め、高血圧や脳卒中など防ぐことが、公衆衛生政策において重要とみなされるときに「労働力の喪失」を防ぐことを目標に掲げられるこ とがあります。そのようなタイプの病気を防ぐことがなぜ「労働力の喪失」を防ぐことに繋がるのでしょうか?(p.305)
7.DASHダイエット(Dietary Approaches to Stop Hypertension)とは、どのようなダイエットのことをさすのでしょうか?(p.306)
8.世界の糖尿病患者の数は3億人強、毎年2.2%で増えているそうです。単純に計算しますと10年後には3.9億人、20年後には4.9億人になります が、糖尿病患者の成長率は成人人口の成長増加率の2倍に相当するといいます。なぜ糖尿病患者は増えてゆくのでしょうか?糖尿病の病気の定義や、そのタイプ の区分も踏まえて増加の原因を考えなさい(pp.309-311)。
9.西洋化した先進国に移民した人のあいだに糖尿病が多いのはどうしてでしょうか?(p.315)。このことと、ダイアモンドの言う糖尿病の発症リスクの 三大要因(肥満、座りっぱなしの生活、糖尿病の家族歴——p.316)と、どのように関連づけて説明できるのか?考察しなさい。
10.ナウル島の人を事例にして過去1世紀の間に、どのようにして生活習慣病が蔓延し、また、そのような病気と生活水準の変化について考察しなさい (pp.318-320)。
11.「倹約遺伝子」(仮説)の存在は、伝統的な生活から、現代的なカロリー過多の食生活において、どのような弊害を引き起こしつつあると言えるのか?  人間にとってある環境(=倹約遺伝子が有効に働く環境)が、別の環境において、逆の有害な機能をもつとはどのようなことか、説明しなさい(pp.328- 329; pp.334-335)。
12.現代のヨーロッパにおいて糖尿病の罹患率が低いことについて、ダイアモンドは「倹約遺伝子」の保有少ない——かつてあった倹約遺伝子が人口集団のな かで淘汰されて残っていない——からだと説明しています。なぜ、ヨーロッパでは、倹約遺伝子が少ないのでしょうか?(pp.336-338)
13.ダイアモンドによると、今後とも、人類にとって非感染性疾患は多いに脅威になるだろうと、不吉な予測をしています。それはどうしてでしょうか? (pp.340-342)

【エピローグ】
14.伝統社会にくらべて現代社会がすぐれている点をダイアモンドは数多く指摘しています(pp.347-350)。その中で、あなたがもっとも、優れて いると思われる点について、2,3点(ないしはそれ以上)をあげて、解説してください——主観的な感想ですので、正答はありません。むしろ、あなたがあげ た要因のあいだの相互連関による説明のやり方について、この授業の評価者は興味があるからです。
15.他方、ダイアモンドにとって、伝統社会の魅力は、節のタイトルのように「西洋社会から失われた」ものが多いように思われます。問題は、それが現代社 会において「復権が可能か否か」という点にあります。ダイアモンドが指摘するポイントについて、一部あるは全部について、その可否についてコメントしてみ ましょう(pp.350-355)。
16.ダイアモンドの伝統社会がもつ魅力を取り戻す方法(pp.355-363)は、ロハスの生活実践に通じるものがあります。ロハスの生活について、イ ンターネット等で調査して、ダイアモンドの処方せんと比べてみて、それらの類似点と相違点を整理しましょう。


【追加の問題集】

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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2014-2019

池田蛙  授業蛙  電脳蛙  医人蛙  子供蛙

Georges Condominas, We have eaten the forest, 1977[1957]