蘭由岐子『「病いの経験」を聞き取る——ハンセン病者のライフヒストリー 』ノート
On Colonial
Imagination in Literature by Hansen's disease sufferers
蘭由岐子さんは、なぜハンセン病療養所入所者の聞き取りするようになったのか、次のように述べています。
「ふたつ目のきっかけは、帰国後暮らしていた熊本で、明治中頃からハンセン病救済に尽くした英国人女性、ハンナ・リデルとエダ・ライトの顕 彰記念催事に出くわしたことであった。1993年の春のことである。その催事で上映された、ハンセン病に対する偏見・差別の様態を描いた映画『あつい壁』 がとくにわたしの興味を喚起した。映画のモチーフとなった「事件」は、わたしの勤め先の看護学校が付属する療養所、菊池恵楓園(きくちけいふうえん)で 1954年に起こった事件であった。入所者の子弟(ハンセン病患者でない)がハンセン病者への偏見ゆえに地域の小学校への入学を拒否されるという「黒髪公 校事件」(加筆:昭和29年)であった。しかし、この映画を見て、わたしはこの映画の主題である「ハンセン病をめぐる偏見・差別」について考える前に、そ のもととなったハンセン病という病気についてまず知りたいと思った。それは、映画の中ではハンセン病が「所与のもの」——説明なしでも当然皆が知っている もの——として描かれていて、詳細が明らかになっていなかったからである。また、発病後入所する療養所についてもあまりはっきりとは描かれていなかった (ように思えた)。そこでどんな生活が行われているのか。療養所は、ひとつの囲われた空間として存在し、そのなかに何百人もが暮らしているのだ。ひとつの 下位社会として存在しているはずだ。しかし、わたしはその「現在」も知らなければ、「事件」のあった「過去」も知らない。わたしを含め一般の人たちほとん ど知らない療養所、じゃあ、「調査」してみたらいいのではないか、と単純に考えたのだ」——出典:蘭由岐子「ハンセン病療養所入所者のライフヒストリー実 践」、好井裕明・桜井厚編『フィールドワークの経験』(pp.82-100)せりか書房、2000年、p.85(引用はこちらからです)。これは生活書院・文庫版(2017:19-20)にも同様な記述がある。
しかし、本書の、もっとも重要なことは、それよりも冒頭の第1パラグラフにあると、私(池田)は思います。
「ハンセン病問題が現在のように認識されていなかったこと——といってもたった数年前のことであるが、「わたしはハンセン病療養所の研究を
している」とある大学院生に話したところ、「ああ、そうですか。そういう人たちがいらっしゃるんですね」と感心しつつ、「ところで、インタビューするとき
はマスクとかするんですか」と聞き返された。私はびっくりしながら、ひとしきりハンセン病という病気について説明することとなった」」——生活書院・文庫
版(2017:12)
■蘭由岐子さん『「病いの経験」を聞き取る——ハンセン病者のライフヒストリー 』,皓星社,392p.2004年を精査する(情報源:http://www.arsvi.com/b2000/0404ay.htm)および「ハンセン病文学とコロニアリズム想像力について」
第1部 ライフヒストリーを聞き取るということ
序章 フィールドに出る、ライフヒストリーを聞き取る—「わたし」の経験 3
第一章 ハンセン病者研究の方法論的視座 37
第2部 ハンセン病者の「病いの経験」
第二章 ハンセン病者にとっての「家族」 79
第三章 「悔い」を生きる 105
第四章 「正直に」生きる 129
第五章 「六つの名前」を生きる 177
第六章 「社会」に生きる 197
第七章 「訴訟期」を生きる 253
第八章 「訴訟期療養所」というフィールドで 273
むすびにかえて 309
補遺
ハンセン病政策史の概要 323
文献一覧 357
資料
あとがき 386
書誌
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文献
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