医学生のための医療人類学入門
いがくせい の ための いりょうじんるいがく にゅうもん
Man Lei_a Organa
講師:池田光穂
■ 概要
この授業は、文化人類学の面白さを受講生(特に医学 生)に理解してもらい、この学問を修めることがいかに有意義であるかをご紹介します。またこの学問の学習と実践を通して、皆さんにもっとも身近な問題であ る医療の実践的課題に答えるべく、医療人類学についてのAからZまでについての伝授をおこないます。
文化人類学や医療人類学について聞きかじったことの ある学生、この学問の名を全く知らなかったけれども、がんばって勉強に取り組みたいと思う学生、そして楽してサバイバルの技を身につけたい、ちょっともの ぐさな学生にも是非受講されることをお奨めします。
授業は教科書を使った講義のみならず、ビデオ視聴、 討論、発表など体験型の学習形態をとりいれるよう努力しますので、ものおじせずに発現し、他者と協調精神をもって課題に積極的に取り組める受講生を歓迎し ます。
■ 学習目標
1.文化人類学と医療人類学に ついての必要かつ最小限の知識と実践を習得する。
2.学んだ医療人類学の知識と思考法によって、身の回 りにおこっている文化と社会に関わる諸問題を発見する。
3.諸問題の解決や解消に向かって、具体的な方策を立 てそれを実践することができる。あるいは、未来において生じうる問題や困難を予測し、それを回避しつつ、当初の目的を敢行することができる。
■ 教科書(自学自習人は必ず購入してください)
■ 授業計画
1年次、集中講義
■ 授業内容の記載(→リストのみを表示)
回
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主題
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授業のタイプ
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内容
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1 | 文化は思考のエンジンである | 講義 | 現代社会において文化を考える意義、文化が焦点となる社会問 題、医療と文化 |
2 | 医療人類学入門 | 講義 | 医療人類学の鍵概念、具体例、歴史 |
3 | 医療人類学の諸領域 | 講義 | 自然人類学、心理とアイデンティティ、民族医療、国際公衆衛 生 |
4 | 健康の開発史 | 講義 | 植民地科学と熱帯病対策、ロックフェラーミッション、応用医 療人類学、プライマリヘルスケア、開発人類学 |
5 | 制度的医療論 | 講義 | 世界システム医療、近代医療とは何か、民族医療の構築、近代病院の民族誌、EBM(EBM) |
6 | 医療的多元論と医療のダイナミズム | 講義 | 文化的多元論、近代医療の土着化、伝統医療の近代化 |
7 | 途上国における村落保健 | 講義 | 村落保健の実例:中央アメリカを例として、医療援助される側の論理 |
8 | 民俗疾患概念 | 講義 | 途上国における医療協力と民俗疾患概念の把握の重要性 |
9 | 食生活 | 講義 | 身体と食生活、栄養の化学的概念と文化的概念 |
10 | 自己投薬行為 | 講義 | 自己投薬行為の社 会的背景、自己投薬のプラス面/マイナス 面、多国籍製薬企業 |
11 | 疾患の文化的解釈 | 講義 | 民俗疾患概念をどのように理解するのか:下痢性疾患を例とし て |
12 | 健康の概念 | 講義 | 健康の概念をめぐる世界システム医療の展 開、グローバル化し た健康の概念、ローカル化した健康の概念、身体の現在 |
13 | コミュニティ参加の現代医療 | 講義 | コミュニティ動員の社会学的理由、プライマリヘルスケアと共 同体、プライマリヘルスケア論争 |
14 | 医療と文化 | ティーチインとグループ討論 | 医療と文化を考える |
15 | 医療実践をとおした人間形成 | 講義と討論 | 医学生のアイデンティティと人間生活、これからの高知 医大生とは誰のことか? |
■ 小猿のリスト
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[以下は上掲の表のテキスト表現です]
1. 主題 文化は思考のエンジンである
講義:現代社会において文化を考える意義、文化が焦 点となる社会問題、医療と文化
2. 主題 医療人類学入門
講義:医療人類学の鍵概念、具体例、歴史
3. 主題 医療人類学の諸領域
講義:自然人類学、心理とアイデンティティ、民族医 療、国際公衆衛生
4. 主題 健康の開発史
講義:植民地科学と熱帯病対策、ロックフェラーミッ ション、応用医療人類学、プライマリヘルスケア、開発人類学
5. 主題 制度的医療論
講義:世界システム医療、近代医療とは何か、民族医 療の構築
6. 主題 医療的多元論と医療のダイナミズム
講義:文化的多元論、近代医療の土着化、伝統医療の 近代化
7. 主題 途上国における村落保健
講義:村落保健の実例:中央アメリカを例として
8. 主題 民俗疾患概念
講義:途上国における医療協力と民俗疾患概念の把握 の重要性
9. 主題 食生活
講義:身体と食生活、栄養の化学的概念と文化的概念
10. 主題 自己投薬行為
講義:自己投薬行為の社会的背景、自己投薬のプラス 面/マイナス面、多国籍製薬企業
11. 主題 疾患の文化的解釈
講義:民俗疾患概念をどのように理解するのか:下痢 性疾患を例として
12. 主題 健康の概念
講義:健康の概念をめぐる世界システム医療の展開、 グローバル化した健康の概念、ローカル化した健康の概念、身体の現在
13. 主題 コミュニティ参加の現代医療
講義:コミュニティ動員の社会学的理由、プライマリ ヘルスケアと共同体、プライマリヘルスケア論争
14. 主題 医療と文化
ティーチインとグループ討論:医療と文化を考える
15. 主題 まとめ:医療実践をとおした人間形成
講義と討論:医学生のアイデンティティと人間生活、 これからの高知医大生とは誰のことか?
■履修の認定
授業中に課されるさまざまなテストや試練による平常 点と、授業における質疑やコメントの評価点、ならびに事後レポートの点。以上の総合点により判定します。
■注意事項
くり返しになりますが、ものおじせずに発現し、他者 と協調精神をもって課題に積極的に取り組める受講生を歓迎します。
■教科書
■参考書
多数あります。以下のURLをポータルとするサイト で紹介しています。
◎ 文化人類学入門
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試験問題
■ 第1回 試験問題
氏名________________________ 学生番号 ____________________________
問題:
次の3つの論題より2題を選んで答えなさい。
I) プライマリーヘルスケアとは何か。また、プライマリーヘルスケアの具体的施策をめ ぐって、その技術効力評価をめぐって1970年代末期からくりひろげられた論争についてまとめ、最後に君の考え(=評価)について触れなさい。
II) 開発途上国——あるいは低開発地域——における下痢性疾患対策が、なぜ地域の保 健医療施策にとって重要となるのか。また西洋医療とは一見無関係な現地の人たちの身体観(pp.215-229)についての把握が、医療施策にとって必要 不可欠な知識となるのか、具体例をあげて説明しなさい。
III) ホンジュラス西部の高地農民にとって同じ下痢性疾患についての議論(第12 章)がなぜ、ディアレイアとクルソという2つの名前で呼ばれるのか。この2つの用語を使い分ける理由について説明しなさい。
※試験実施要項
午前9時〜10時 場合により20分延長可能
退出:試験開始45分後より可能、それ以前は無効
(次の授業は午前10時半より開始)
■ 第2回 試験問題
氏名________________________ 学生番号 ____________________________
問題:
次の4つの論題より2題を選んで答えなさい。
IV) イマヌエル・ウォーラスティンによる世界システム論(p.63)について説明し なさい。また、君が感じている身近な文化的・社会的事象から事例をあげて、世界システム論から解説しなさい。
V) テキスト「第13章 健康の概念」(pp.254-278)で使われている分析 は、中央アメリカの事例が使われているが、世界のさまざまな地域や文化における個別事象に適用できそうである。あなたが身近に感じている地域——例えば日 本あるいは東アジアの事例[もちろんそれ以外でもかまわない]——について、同様の分析を試みなさい。
VI) 今回の一連の授業においては、「かつて西洋世界では西洋医療のみが唯一無二の 『医療』というものであった。それが、やがて複数の『医療』というものが存在するという社会認識が登場し、やがて、同一の社会の中で複合的な『医療』実践 がおこなわれていることが研究者のあいだで常識になった。このような実態を指し示す言葉とは何か。またそれについての説明、さらに、この見解の意義につい て論じなさい。
VII) プライマリーヘルスケアとは何か。また、プライマリーヘルスケアの具体的施策 をめぐって、その技術効力評価をめぐって1970年代末期からくりひろげられた論争についてまとめ、最後に君の考え(=評価)について触れなさい【再出 題】。
※試験実施要項
午前10時半〜11時半 場合により20分延長可能(〜11時50分)
退出:試験開始45分後より可能、それ以前は無効
● クレジット
このページはもともと、高知医科大学:集中講義の授業(2002.7.10-13)「文化人 類学」を改め、
医学生のための医療人類学入 門
としたものです。