地域研究・エリアスタディーズを 学ぶ人のために
Studing for Regional Studies and Area Stuies 解説:池田光穂
Unidentified Native Man (Carrier Indian) (possibly Steward's
informant, Chief Louis Billy Prince) and Julian Steward (1902–1972) ,
Outside Wood Building, 1940
【地域研究の定義】
地域研究(regional studies, area studies)とは地球上の地域に関するさまざまな情報を整理、統合する学際研究のことである。また別の意 味の個別の地域研究、つまりエリア・スタディーズ(area study, area studies)地域研究では、地球上の表面を大きな諸地域(アジ ア、アフリカ、北米、中南米、ヨーロッパ、オセアニア 等々の大区分あるいは、北アジア、東アジア、中米、南米、ミクロネシア等々のより細かい地域 の小区分)にわけておこなう、それぞれの地域別の研究分野領域がある。これも文化人類学、地理学、政治学、経済学など の「地域を研究対象にする経験的あるいは実証的な諸学問分野が集合した総合科学」である。地 域研究をおこなっている機関は、大学の研究所や国立あるいは私立のシンクタンクなどにある。(→「地域 科学・地域研究・国別研究等」)
これは、地域研究をおこなうことに具体的な目的があるからである。世界の諸地域の動向を知る ということは、政治ならびに経済に大きな支配力を行使することができるからである。第二次大戦中から言語研究から始まった地域研究が、第二次大戦後には、 現状研究(comtemporary studies)に力点をシフトしながらアメリカ合州国で大きく発展したのもこのことによる。
1950年に『地域研究:理論と実践』というきわめて実践的な地域研究(ただし彼はarea research)の教科書を書いた文化人類学者ジュリアン・スチュアード(Steward, Julian H)によると地域研究(Area research : theory and practice, 1950)には次の大きな4つの目的があるという。
1.世界の重要な地域について実践的価値のある知識を 提供する
2.研究者に対して文化相対主義に関する意識を促す
3.各地域の社会的・文化的総体についての解釈を提示する
4.普遍的な社会科学の発展を促す
この目的を達成するためスチュアードは地域研究の3つの方法論上の特徴について指摘する。
アメリカ合州国での地域研究の流行は1960年にピークを迎え、60年代末から70年代初頭にかけて地域研究と軍部の結びつきが指摘され、 研究者や市民により批判された後、70年代以降随時衰退して、1990年代には地域研究の火はほとんどなくなる。
日本では1960年にアジア 経済研究所(通産省所轄:1998年JETROと統合し独立行政法人となった)発足、1964年東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所、 1965年には京都大学東南アジア研究センターが生まれ、今日に至っている。また1994年には地域研究企画交流センターが国立民族学博物館に附設する形で発 足し、2004年地域研究企画交流センター、京都大学東南アジア研究所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、そして北海道大学スラブ研究セン ターが連携した、地域研究コンソーシアム(JCAS)を形成した。
地域研究コンソーシアムの加盟団体は、 2019年5月現在、104組織におよぶ。別途の「地域研究」にて、米国の地域研究の 隆盛の原因は(軍事的覇権主義を背景にした)冷戦であると主張したが、日本のそれは、冷戦が終焉しても、いまだ健啖を吐いているという点で、軍事的覇権主 義の代わりの、戦後の、国際協調主義ないしは日本流の「国際化や多文化共生」の理念がいまだ息づいているタイプの「地域研究」のあり方かもしれない。
また、地域研究学会連絡協議会(Japanese Council of Area Studies
Associations, JACSA)は2003年7月6日に地域研究に従事する15学会が参加して発足し、2015年8月現在では世界中のすべての地域をカバーす
る20学会が参加している。その内訳は「アジア政経学会、現代韓国朝鮮学会、日本EU学会、日本現代中国学会、日本中東学会、日本南アジア学会、ラテン・アメリカ政経学会
、アメリカ学会、
東南アジア学会、
日本オセアニア学会、
日本スラブ東欧学会(JSSEES)、
日本ナイル・エチオピア学会、
日本ラテンアメリカ学会、
ロシア・東欧学会、オーストラリア学会、
日本アフリカ学会、
日本カナダ学会、
日本台湾学会、
日本マレーシア学会、
北東アジア学会」である。
●地域研究は学際研究でもある
学際研究を継続させる要因とは何か、をご覧
ください!
●マルチサイト研究は、地域研究を複合化する試み です!
マルチサイト民族誌と古典的民族誌の位相: Multi-Site Ethnography means using dynamic approrch or Traveling Ethnographic Approarch ("field concept" in the Transnationality Studies in Japanese)
●学際研究(例:文化人類学)とは、フィール ドとその分野の下位領域の研究テーマが交錯するところにあります!
この続きは、「地域科学・地域研究・国別研究・戦略情報・地政学」で!
■地域研究・批判(critique of area studies)
"The crisis of "area studies" is the crisis of old borders, be they nation borders or civilization borders. It also the crisis of the distinction between hegemonic (discipline-based knowledge) and subaltern (area-based knowledges), as if discipline-based knowledges are geographically disincorpotaed" (Mignolo 2000:310)
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◆ 関連リンク
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