書評:花渕馨也『精霊の子供――コモロ諸島における憑依の民族誌』横浜:春風社、2005年
『文化人類学』71巻2号、Pp.266-269、2006年9月 による変奏エッセイ
15.0 最後に、なんとか著者の議論についていくことができた読者(私)からの我が儘なお願いが著者に対してある。それは索引と簡単な用語集をつけてほしかったということだ。書物は一般的には線形的に読まれる。読者は前の箇所の重要なことをきちんと頭に叩きこんでいたり、ノートをとっていれば、現地語読みで記された重要な用語に詰まることはないだろう。だが本書は、憑依される人とジニの世界が織りなす複雑な民族誌である。それも人々のジニ(憑依霊)の人称帰属の区分と統合的理解に挑戦した格闘の戦記でもある。そうであるならなおさら著者の洗練されたアイディアと修辞上の戦術を効果的に読者に伝えるためにも、索引と用語集という啓蒙的補助手段は欠かせない。本書の面白みは実に細部に宿っている。私はもっともっとこれについて議論したい。しかしどうやら紙幅の縁に、つまりダラオ儀礼(pp.226-36)における海岸の近くに、到達したようだ。エドマンド・リーチの名著に対するレイモンド・ファースの序文のごとく、私の冒頭の宣伝文が功を奏し、今後より多くの読者を獲得することができ本書が将来増刷されることを望む。その時には索引と用語集の件は、是非とも実現してほしい。それが本書評における最後のメッセージである。
書評:花渕馨也『精霊の子供――コモロ諸島における憑依の民族誌』横浜:春風社、2005年、『文化人類学』71巻2号、Pp.266-269、2006年9月
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