アイデンティティによる政治入門
Introduction to politics of identity
解説:池田光穂
アイデンティティ・ポ リティクス(Identity politics)とは、民族、人種、国籍、宗教、宗派、性別、性的指向、社会背景、カースト、社会階級などの 特定のアイデンティティに基づく政治である。 この用語は、アイデンティティに基づく移動性を規制する政府の移民政策や、国家や民族の他者を排除する極右ナショナリストの政策な ど、アイデンティティ・ ポリティクスとして一般的に理解されていない他の社会現象も包含する可能性がある。このため、この用語のいくつかの定義を論じているクルツウェリー、ペレ ス、シュピーゲルは、アイデンティティ政治は分析上不正確な概念であると主張している。
このページは、 マイケル・ケニー『アイデンティティの政治学』の解説を中心に、「アイデンティティによる政治」は可能か?また可能であるならば、どういった点で可能か?不可能なら、何を克服すれば可能な条件に近づけるのかを考えてみたい。
■ マイケル・ケニー『アイデンティティの政治学』藤原孝ほか訳、日本経済評論社、2005/The politics of identity : liberal political theory and the dilemmas of difference / Michael Kenny, Cambridge : Polity , 2004
This book provides a comprehensive and critical assessment of the ways in which Anglo-American political theorists have responded to the emergence of a politics of identity in democratic society. It examines the merits and weaknesses of the ideas associated with the major schools and thinkers in contemporary philosophical liberalism. It also provides a critical exploration of the arguments of their pluralist rivals, including advocates of multiculturalism, 'difference' and recognition. Kenny illustrates how debates over such concepts as identity, difference, recognition and culture are intertwined with political theorists' characterizations of democracy, citizenship and civil society. In an analysis that juxtaposes normative political theory with the study of social movements and change, the author challenges two widely held ideas about the relationship between liberal democracy and culturally based groups. He questions the assertion that there is no place for identity based political argument in the public life of a democracy. And he challenges the pluralist conviction that the re-emergence of collective identities signals the demise of liberal culture and political thought. Written in a clear and accessible style, The Politics of Identity is intended for students, scholars and general readers interested in contemporary political and social thought, political ideologies, and political culture.
本書は、英米の政治理論家たちが民主的社会におけるアイデンティティ政治の出現にどう対応し てきたかを、包括的かつ批判的に評価するものである。現代の哲学的リベラリズムの主要な学派や思想家たちに関連する考え方の長所と短所を検証している。ま た、多文化主義、差異、承認の擁護者を含む、多元主義のライバルたちの議論についても批判的に探求している。ケニーは、アイデンティティ、差異、承認、文 化といった概念をめぐる議論が、政治理論家による民主主義、市民権、市民社会の定義とどのように絡み合っているかを明らかにしている。規範的な政治理論と 社会運動や社会変化の研究を並置する分析の中で、著者はリベラル民主主義と文化に基づく集団の関係について広く受け入れられている2つの考え方に異議を唱 えている。著者は、民主主義の公共生活においてアイデンティティに基づく政治的議論 の余地はないという主張に疑問を投げかけている。また、集団的アイデ ンティティの再出現はリベラルな文化や政治思想の終焉を意味するという多元主義者の考えにも異議を唱えている。明快で読みやすい文体で書か れた『アイデンティティの政治学』は、現代の政治思想や社会思想、政治イデオロギー、政治文化に関心のある学生、研究者、一般読者向けに書かれている。
1.アイデンティティの政治の性格とそ の起源
2.自由主義政治理論におけるアイデン ティティの政 治
3.シティズンシップ・公共理性・集合 的アイデン ティティ
4.市民社会とアソシエーションの道徳 性
5.アイデンティティの政治の公共面
6.運動におけるアイデンティティ:社 会運動の政治 倫理
7.自由主義と差異の政治
8.自由主義と承認の政治
9.結論 |
sa
●倫理的態度の軸と、リベラル=ポピュリストとリ バータリアンの軸
リンク
文献
その他の情報:【出典】インディオ・メスティソ・ラサ:ラテンアメリカにおける人種的
カテゴリー再考(研究ノート)
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