リヴァースエンジニアリング:レヴィ=ストロース理論
Reverse
engineering of the Levi-Strauss' thories
解説:池田光穂
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構造主義と身体 | ・わしは構造主義者ぢゃねぇ!!! #構造主義者レヴィ_ストロースは鶏が泣く前に三度否定する ・デリダの批判は、わしゃ知らん(→レヴィ=ストロースにおける記号概念の無理解) ・遺伝構造とレヴィ=ストロースの構造概念の相同へのこだわり ・構造主義者はバイナリーロジックが大好き ・構造主義と遊戯の関係について真剣に考えた構造主義者はいない |
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神話と音楽 |
・ワーグナー好き(きちがい) ・主題と変奏曲 ・旋律と和声 ・音楽のメタファーへのこだわり(『生のものと調理されたもの』) |
3 |
解釈——パルジファル伝説 | ・パルジファル(Bühnenweihfestspiel "Parsifal" ))は問いただすことをしなかった=コミュニケーションの不足〈対〉犯人探求のために自分の近親相姦を知るオイディプスの破滅=コミュニケーションの過剰 |
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パルジファル伝説 |
・パルジファルと聖杯伝説。 ・パルジファル(Bühnenweihfestspiel "Parsifal" ))は問いただすことをしなかった=コミュニケーションの不足 |
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解釈——オイディプス神話 | ・犯人探求のために自分の近親相姦を知るオイディプスの破滅=コミュニケーションの過剰 |
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オイディプス神話 |
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神話に意味はあるのか? |
・神話のイメージはコード化にあり、それはシンボルの伝達の効率をよくすることだ。つまり、情報の圧縮がイメージの中で実現される 154 |
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神話と逆説 |
・神話学3,4巻では、自然から文化への移行は、調理行為ではない(神話学1,2巻)、自然から文化への移行は、衣装、装身具、商品交換によって実現する。 ・北米神話では、裸と着衣の対立が問題になる。 ・神話はパラドックスを解消しない |
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自然から文化へ |
・神話学1,2巻、すなわち南米先住民の間での自然から文化への移行は、調理行為(を通した変形)で表現される。 ・はちみつの中間的位置 ・火や熱の存在 |
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二項対立 |
・生のもの/調理したもの、新鮮なもの/腐ったもの、高さ/低さ:ゲーの神話では火の起源はジャガー、グアラニ-トゥクピでの火の起源は猛禽類:ジャガーはなま肉を食べ、猛禽は腐肉を食べる |
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隠れた調号(Key
signature?) |
・すべての神話は変形関係でむすびつく ・クウィエクェ(スワイフウェ)仮面とゾノクワ仮面 ・神話同士はコミュニケーションする ・神話の表皮の下に、隠れた調号(Key signature?)がある。調号とは、何々調(key)というような体系。 ・キーは、原理を示す ・体系が共時的にあらわれれば構造がある——この考え方はソシュール派の、通時性(パロール、発語)と共時性(ラング、言語) |
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ジャガーの占める位置 |
・ゲーの神話:人間とジャガーが協力して、火を得て調理するようになる。 ・ジャガーは火の主で、ゲーの神話だと、ジャガーは夜になると目が燃えるように光る ・神話の主人公は、ジャガーそのものである |
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ボロロ神話(M1) |
1)母親と近親相姦した息子が父に恨まれる 2)息子が逃げる 3)父は鳥の巣あらしに息子を誘う 4)父は息子を騙して絶壁に置き去りにする。 5)父は息子が死んだと思い去る 6)猛禽は息子を敵視したがやがて息子を助ける 7)息子が村に戻り祖母に保護される 8)暴風雨が村を襲う 9)村の火が全部消えたなかで祖母の家だけの火が残った 10)村の人はみな、祖母の家に火を借りに行く 11)息子は父親に復讐を企てる 12)鹿の角をつけた息子は父を突き、湖に落とす 13)父は食肉魚の霊にたべられてしまう 14)息子は村をでるが、村人を懲らしめるために、風と雨を村に降らす ・鳥の巣あらし→ボロロ ・タバコの起源→トバ、マタコ、テレノ ・野豚の起源→ムドゥクル、カリリ |
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神話研究の指針 |
・神話は構造そのもの ・構造は聞き手のなかで具現化される ・その意味で神話と芸術はよく似てる ・神話を理解するためには変形に通じていることが重要である。 ・神話それ自体は意味をもたず、神話間の関係が意味をもつ(=レヴィ=ストロースらしい神話観) ・神話のオリジナル原型を探し出すのは不毛である(=これもレヴィ=ストロースらしい神話観) ・なぜなら、神話は、あらゆる異型の集まりだからである。 ・レヴィ=ストロースの神話の議論は、異型の話から別の異型の話なので、理解することがとてもむつかしい。 ・つまりテロス=最終目的というものがないからだ。 ・つまりレヴィ=ストロースの異型の道筋は、変形の地図というメタファーで理解すべきである ・その地図は、変形をとおして、ブラジルの中央部から最終的には北米の北部西海岸にまで到達する |
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神話の例 |
・ブラジルのシパイアの神話(M178) 1)2人の兄弟と一人の妹が同じ家に住む 2)兄弟は身元をわからないようにして妹と通じた結果、妊娠した。 3)もうひとりの兄弟が、妹にチブサノキ(未熟果汁は青黒になり染まる)の染料で印をつけるように命じる 4)身元がばれたので、兄妹は空に逃れる 5)しかし、空で兄妹けんかをして、兄は妹を地上に落とした 6)妹は地上に落下してバクに変身し、兄は月になる 7)地上の兄は戦士になり、仲間をつのり、月に矢を射る。 8)成功した戦士はアルマジロであった 9)月からはさまざまな色の血が流れた 10)女は下から上に体を拭いたので、それ以来、月経を経験することになる。おとこは、上から下に拭いた 11)鳥が様々な色の血だまりで水浴びをしたので、さまざまな色の鳥がうまれた |
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神話とは何か |
・神話とは人間の思考である |
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アメリカ先住民の神話 |
・『神話学』執筆のエピソード |
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事物の隠れた構造 |
・アングルは天才である |
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類似品 |
・類似品は、美術の根源 |
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部分に先んじて全体をみる |
・見えない全体をみる |
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美術に縮尺する |
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シンボルと縮尺模型 |
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仮面の役割 |
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仮面と化粧 |
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仮面の意味 |
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連鎖の体系 |
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仮面の美術 |
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美術と言語の関係 |
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モダンアート |
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西洋美術におけるプリミティズム |
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記号と模倣 |
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レヴィ=ストロースの美学 |
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円としての時間:冷たい社会 |
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線的時間としての歴史:熱い社会 |
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ゲーム・儀礼・分類 |
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冷たい社会はどのようにして、変化に抵抗
するのか |
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文字の勉強 90 |
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文字と社会階層 |
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39 |
熱い社会と冷たい社会 |
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レヴィ=ストロースとプラハ言語学派 |
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記号の操作 |
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ブリコラージュ |
・ブリコラージュという概念についてのデリダの批判 ・ |
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未開科学の仕組み 76 | |
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具体の論理の仕組み |
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類推(アナロジー)による思考 |
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具体の論理 69 |
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思考とはなにか |
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分類体系の特性 61 |
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分類あるいは分類法 |
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人類学は心理学 |
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知識を欲する本能 |
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思考の本質 |
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種と体系 |
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トーテム演算子 L-S' totemic operator and Kovave masks, Orokolo, Papua New Guinea, 1911. |
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トーテミズムの解釈 |
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排除と分類 |
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トーテミズムとヒステリア |
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トーテミズムの興亡 39 |
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59 |
トーテミズム |
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インセストタブーのルール |
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インセストタブー(Incest taboo) |
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親族関係はコミュニケーション |
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ソシュールのモデル |
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基本単位とはなにか |
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外婚と内婚 |
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交叉イトコ婚 |
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モースと互酬性 |
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人類学の先駆者たち——マリノフスキー |
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生い立ち |
1908 11月28日ベルギーのブリュッセルで生まれる(Nov.18)。
祖父は音楽家のイサーク・ストロース、父は肖像画家のレーモン、母エンマ(旧姓レヴィ)
1914 父は招集され、母方の祖父(ユダヤ教会の首長)のベルサイユ家に転居。
1918 パリに戻り、16区ジャンソン・ド・サイ高校に学ぶ
1924-1925 マルクスに熱中。社会主義学生連盟で活躍
1927 パ リ 大学法学部に入学、同時に哲学を学ぶ(ca.1928)。セレスタン・ブーグレの指導で「史的唯物論の哲学的諸前提」で学士論文
1928 哲学教授資格試験の受験勉強
1929 パリ大学法学士
1931 アグレガシオン(哲学教授資格)に合格。同期に、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ。 この年エメ・セゼールは、成績優秀であったため奨学金留学生としてマルチニークからフランス本土へ渡航した。
1932 パリとストラスブールで兵役。ディナ・ドレイフュスと結婚。
1932-33 フランスの中学校(リセ)で教鞭をとる。
1933 ロバート・ ローウィ(Robert Lowie, 1883-1957)『未開社会』を読む
1934 高校時代の恩師ブーグレ から、サンパウロ大学の社会学講師の招聘をうけて、承諾、翌年渡伯。
1935 サンパウロ大学(社会学)教授(〜1938)カドゥヴェオとボロロの調査。1936 「ボロロ・インディアンの社会組織研究への寄与」論
文1937
1938 クイアバからマデイラ河への踏査旅行(〜1939)
1939 フランスに一時帰国した後、1940年まで招集、その後フランスの敗北、反ユダヤ政策 のためアメリカに亡命(1941)する。
1940 兵役を解かれ、高校の教師となるが、ユダヤ人のため失職する。
1941 ダーシー・トムソン(Thompson, D'Arcy Wentworth, 1860-1948)『生物のかたち(On Growth
and Form, 1915)』を読む。エメ・セゼールはマルチニークでtropiquesを創刊。
1941 (ロックフェラー財団学者救済計画)アメリカ亡命(アンドレ・ブルドンらも乗船)/自
由フランスの科学派遣団として在米。北西海岸の仮面を買い漁る
1942 ニュースクール・フォ・ソーシャル・リサーチ(New School for Social Research)教授(〜1945)。
親族の基本構造の内容に関する授業をおこなう。ローマン・ヤコブソンと知り合う。のちに『音 と意味についての6章』の序文を書く
[在職中のエピソード]
1945
在米フランス大使館文 化顧問/あるいは参事官。ディナと離婚、ローズ=マリー・ユルモと結婚
1946 在米フランス大使館文化顧問(cultural attach)
1948
「親族の基本構造」主論文「ナンビクワラの家族と社会生活」副論文で文学博士(→フランス人 類学博物館:Musée de
l'Homme)。ジャック・ラカン宅で、モニク・ローマンと出会う。
1949 『親 族の基本構造』[→「自然と文化」の読解]
1950 パリ大学高等研究院教授(Director of Studies at the Ecole Practique des Hautes
Etudes):無文字民族比較宗教学講座
1952
「民族学におけるアルカイスムの概念」[関連内容]。
1954 ローズ=マリーと離婚。モニク・ローマンと結婚。「悲しき熱帯」の原稿執筆。
1955 『悲しき熱帯()』絶賛を浴びる。
1958 『構造人類学』
1959 メルロ=ポンティの尽力で、コレージュ・ド・フランス教授(社会人類学、〜1982)
1961 雑誌『ロム』の創刊に関わる
1962 『野生の思考』(→J-P.サルトル批判)
1964 『神話学(第1巻)』(〜1971)
1971 『神話学(第4巻)』
1975 『仮面の道』(1975, 1979)
1979 アカデミーフランセーズ会員
1982 コレージュ・ド・フランス定年退職
1983 『はるかなる視線』
1985 『やきもち焼きの土器作り』
1990 Mauro W. Barbosa de Almeida, Symmetry and Entropy: Mathematical
Metaphors in the Work of Levi-Strauss. CURRENT ANTHROPOLOGY Volume 3I,
Number 4, August-October I990
ABSTRACT; "Levi-Strauss's structuralism is here considered as part of
an intellectual trend that gained currency during the first half of
this century a trend towards greater concern in the mathematical,
physical, and biological sciences for invariance and structure that is
characterized by the importance of the concept of the transformaion
group. Levi-Strauss has introduced the essence of this trend, more at a
stylistic level than by means of definite demonstrations into the human
sciences. Basic mathematical structures, the principal one being that
of the algebraic structure of the transformation group, underlie all
the models he has examined. It can be argued that his anthropology
leads to the conclusion that the human mind operates in different
cultures according to these basic structures that they are universals.
But Levi-Strauss is also concerned with processes of change, decay, and
evolution in structures. The effort to combine the structural approach
with an inter est in disorder and change is a neglected but essential
aspect of his theory."
1991 『オオヤマネコの話』
1992 『見る、聞く、笑う』
1994 『ブラジルへの郷愁』
2009年10月30日 死亡 |
Ruth Landes
(1908-1991) with Claude Lévi-Strauss and other researchers at the Museu Nacional
in Rio de Janeiro, 1930s
Lévi-Strauss’ Bororo informant who met the
Pope (Lévi-Strauss 1936) ※ボロロのインフォーマント(調
査協力者)※中公クラシックス版(II巻37ページにある).
リンク
文献
レヴィ=ストロースに関係する人物や理論
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099
Claude Levi-Strauss como Anakin Skywalker
「リーヴァイ・ストラウス(Levi Strauss,
1929-1902)は「ストラウス」が姓、クロード・レヴィ=ストロースは「レヴィ=ストロース」が姓に当たり、全く別の姓である」(ウィキペ
ディア「リーヴァイ・ストラウス」)