ターミネイターの時間構造
Chronological Structure of "The Terminator," 1984
解説:池田光穂
「歴史(Geschichte)
とは、理解することにおいて過去が体得されることであり、そうである以上。歴史そのものがどこまで捉えられるかは、解釈学的な状況の決定的な選択、その状
況の錬成がどれほど根源的であるかに懸かっている。要はひとつの現在がどれほどの覚悟性や解明能力を発揮しうるかであり、それに応じた分しか過去も自らを
開いてくれない」——ハイデガー「アリストテレスの現象学的解釈」
(高田珠樹訳)
●AI (スカイネット)の反乱としてのシンギュラリティ
電 子計算機の計算能力が人間の能力を超えるというディストピアは、『サイバネティクス』 (1948,1961)の作者ノーバート・ウィーナー(Norbert Wiener, 1894-1964)が、1950年に出版した, The Human Use of Human Beings. The Riverside Press (Houghton Mifflin Co.)のなかで描かれている。
爾 来、コンピューターの計算能力が進歩して、人間の能力を超えて人間を支配しようとする発想は、人類にとってお馴染みのテーマになる。私はこの機械に支配さ れ る二大サイエンスフィクション映画は「マトリクス」三部作と「ターミネイター」(The Terminator, 1984) につきると思う。そのうち、マトリクスは、我々が信じているリアルな世界は 電脳によって支配されている幻影にすぎないというわりとシンプルな主張であるが、ターミネイターは時間構造による復古あるいは反復のアイディアが込められ ている点でより複雑になっていると思う。
そ
して、バック・トゥー・ザ・パーストとして過去に遡り、現今の苦悩の歴史を変えようとするのはスカイネットの側のアンドロイドなのである。
ま
た核兵器による地球の危機と、その後の「新秩序」の誕生は"Nineteen
Eighty-Four: A Novel (1984)"にみられる。
.Stefan
Lochner, Last Judgment, c. 1435. Wallraf-Richartz Museum, Cologne//
Madonna of the Rose Bower, c. 1440–42. Wallraf-Richartz Museum, Cologne
●ターミネイターのシノプシス(ウィキペ ディアより)
「2029年に人類と機械軍の熾烈な戦いが行われているが、その最後の戦いは、過去に当たる今夜始まる。
ロサンゼルスのとある裏路地に、まばゆい電光とともに筋骨逞しい男性が現れ、片っ端から服や銃を強奪する。「サラ・コナー」
という名前と「ロサンゼルス」という住所だけを頼りに、電話帳に載っている同姓同名の女性を順番に殺していく。一方、遅れて現れた別の若い男性も、今ここ
が1984年5月12日木曜日のロサンゼルスであることを確認すると、悪夢にうなされつつ誰かを探し始める。
最後のサラ・コナー宅に侵入した逞しい男性は、サラと同居する友人ジンジャーとそのボーイフレンドのマットを殺害し、外出中のサラの顔と声の情報を入手。
ついに彼女が町のディスコにいることを突き止め、現地へ乗り込み殺害を実行しようと銃口を向けるが、やはりサラを追っていた若い男が間一髪で阻止する。一
緒に逃げるよう促され、事態が飲み込めず怯えるサラに、男(カイル・リース)
はリース軍曹と名乗り、襲撃者は超合金と人工皮膚でできたアンドロイドであり、サラを殺害するために未来から送り込まれ、彼女が死ぬまで狙い続けること、
カイルは彼女を守るために未来から現代へやってきたこと、カイルを現代に送り込んだのはサラのまだ見ぬ息子ジョン・コナーであること、などを告げる。
サラとカイルはパトカーを強奪したターミネーターに追われ、カーチェイスの末にターミネーターは損傷、サラとカイルは警察に捕まる。カイルは尋問を受け、
サラに説明したことと同様の内容やさらに詳細な歴史背景を録画カメラに向かい説明し、その録画をサラ・コナーも見る。
数年後に核戦争が起き、人口が激減した核戦争後の世界で、人工知能「スカイネット」の知能が人類の予想を超えて上昇し人類を敵と見なすようになり機械軍を
使って数十年間人類を攻撃し、人類は絶滅の危機を迎えた。しかし抵抗軍指導者であるジョン・コナーの指揮下、反撃に転じ、2029年には人間側の勝利は目前に迫っていた。脅威を感じたスカイネットは、
男性の姿をした殺人アンドロイドターミネーター・サイバーダインシステム・モデル
101(→T800)
を未来から現代へと送り込み、ジョンの母親となるサラ・コナーを殺害することで、ジョンを歴史から抹消しようと目論んだ。ターミネーターに続いて抵抗軍か
らも、自分カイル・リースが、サラの護衛という使命を帯びて未来から1984年に送り込まれた。ターミネーターとカイルは未来に戻ることができず、抵抗軍
がカイルを送り込んだ直後にタイムスリップ装置を破壊したため、「二人」に続いて1984年へ来る者はいない。
だが未来のことを過去形で語るカイルのこんな説明を誰も信じない。カイルは精神異常者だと見なされ拘留され、
サラのほうは警察から防弾チョッキを与えられ、その夜は警察署内で保護されることになった。しかしターミネーターは警察署を正面から襲撃し、サラは再び間
一髪のところでカイルに救われる。逃避行の中で、サラはカイルの話を信じ、心を開いていく。また、カイルも、サラは未来ではジョンを育てた偉大な母として
伝説になっていて、ジョンにサラの写真を見せられて以来、思慕していたことを打ち明ける。互いへの愛を抱いた2人は、潜伏先のモーテルで結ばれた。
休息も束の間、宿泊したモーテルの場所を突き止められて、更なる追撃を受けるサラ達。オートバイに乗るターミネーターに追われ、満足な武器もなく手製の爆
薬での応戦を余儀なくされ、銃弾を受けて傷付くカイルだったが、サラの手助けと励ましもあり、どうにか窮地を脱し、タンクローリーの隙間に爆薬を押し込ん
で爆破させ、ターミネーターを炎上させる事に成功する。しかし、燃えたのは表面の生体組織と服だけだった。ターミネーターは炎上する車の残骸から、超合金製の
骨格を露わにした姿で立ち上がり、さらに追いかけてくる。
サラと共に近くの工場へ逃げ込んだカイルは、再びターミネーターと交戦するが、堅牢なボディを持つターミネーターに全く歯が立たず、ターミネーターの攻撃
に瀕死の重傷を負ってしまう。カイルは最後の爆薬を使ってターミネーターの爆破に成功したものの、自らも爆発に巻き込まれて命を落とし、サラも片脚に重傷
を負う。カイルの死を嘆くサラに、上半身だけとなってもなお迫るターミネーター。サラはターミネーターをプレス機に誘導して超合金製頭蓋骨を押し潰し、つ
いに完全停止させる。
数か月後の11月10日、カイルとの子ジョンを宿したサラは、やがて訪れる「審判の
日(Judgement
day)」へ向けての戦いを決意し、メキシコへ旅立つ。サラは息子のために音声で記録を残し、父親カイルのことも語る。ガソリンスタンドで少年から買った
ポラロイド写真は、未来の世界でカイルがジョンからもらった写真である。」ターミネー
ター (映画)
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