(旧版)協働術A:アクションリサーチの理論と実践(旧版)
Art
of Collaboration A: Theory and Practice of Action Research
1.履修対象/Eligibility |
COデザイン科目(学部3年以上、大学院生)[→池田光穂の授業に戻る] |
2.開講時期/Schedule |
【変更です】http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/16_action_research.html |
3.講義室/Room |
【変更です】http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/16_action_research.html |
4.講義題目/Course Name |
協働術A(アクションリ
サーチの理論と実践)新自由学芸科目(新しいリベラルアーツ) |
5.授業の目的と概要/Course Objective |
この授業は、アクションリサーチの理論と実践、このリサーチがもた
らす最終的な
成果とはなにかについて考えます。この授業はアクションリサーチをさまざまな角度から考察することを目標にします。 |
6.学習目標/Learning Goals |
1.アクションリサーチの特性について理解し、それ以外の
リサーチ(調査)方法との違いや、それぞれ
の利点と弱点を、他者(同僚の学生)に説明することができる。 2.アクションリサーチについて、簡潔な定義を与えることができる。 また、アクションリサーチはどのような社会的文脈のなかで可能になるのか、どのような アウトカムを得られるかについて、他者に解説すること ができる。 3.具体的にアクションリサーチを考案することができ、対象となる集団をみつけだし、それに対してどのようなアプローチをとれば、アクションリサーチとな るのか、そして、アクションリサーチの可能性と限界について、他者に対してきちんと説明できるようになる。 |
7.履修条件・受講条件/Requirement;
Prerequisite |
参加型の授業のために、毎回出席し、また相互に見知らぬ受講生と積
極的にコラボレーションすることが受講の条件になります。 |
8.特記事項/Special Note |
特記事項/Special Note
シラバスをみていただき、事前にテーマを想像されたり、情報を入手しておくと、学習意欲向上のインセンティブになると思います。復習用の資料のダウンロー
ドや、スケジュールの変更などは、以下のウェブページからリンクする【アクションリサーチの理論と実践】のページなどでお伝えします。 |
9.授業計画/Special
Plan;(毎回)題目/Title;(毎回)内容/Conten 【→新版のほうに変わります】 |
-----6月15日----- 1.アクションリサーチとはなにか?:意味・歴 史・特性・ 理論 2.アクションリサーチの哲学と思想:PBLや CBPRとの関連性について -----6月22日----- 3.今日のアクションリサーチの変貌:コミットメ ントから共感的プラグマティズムについて(インターベンション・マッピングを含む) 4.アクションリサーチの設計:その1 -----6月29日----- 5.アクションリサーチの設計:その2 6.アクションリサーチの設計:その3 -----7月06日----- 7.アクションリサーチの実践:その1 8.アクションリサーチの実践:その2 -----7月13日----- 9.アクションリサーチの実践:その3 10.アクションリサーチの実践:その4 -----7月20日----- 11.アクションリサーチを振り返る:その1 12.アクションリサーチを振り返る:その2 -----7月27日----- 13.アクションリサーチを振り返る:その3 14.まとめ:研究プレゼンテーション -----8月02日(予備日)----- 15.まとめ:研究プレゼンテーション |
10.授業形態/Type of Class |
講義とワークショップ |
11.授業外における学習/Independent Study
Outside of Class |
復習用の資料のダウンロードや、スケジュールの変更などは、以下の ウェブページからリンクする【質的研究のデザインとエスノグラフィー】のページなどでお伝えします。 |
12.教科書・教材/Textbooks;著者名/Author;
教科書名/Title;出版社名/Publisher;ISBNコード/ISBN; |
・授業に使う教材は、《URL》から各人ダウンロードしてくださ
い。パスワードがかけてありますので、授業の際にお知らせするパスワードを入力して解錠してください。 |
13.参考文献/Reference |
・Lewin, K. (1946) Action
research and minority problems. J Soc. Issues 2(4):
34-46.(→K_Lewin_Action_research_minority_1946.pdf) |
14.成績評価/Grading Policy |
平常点(60%)とレポート(40%)を基礎にして平常点(=発言
を通した授業への貢献)を加味して総合的に判断します。 |
15.コメント/Other Remarks |
|
16.キーワード/Keywords |
質的研究、フィールドワーク、エスノグ
ラフィー(民族誌)、ジャーナリズム、表象倫理 |
17.受講生へのメッセージ/Messages to
Prospective Students |
関連授業として、質的研究の理論をじっくり学ぶ「質的研究のデザインA」が、また質的研究を通して制作されたエスノグラ
フィーを読
んでゆく「質的研究のデザインB」という授業があります |
■アクション・リサーチの伝統におけ るナイーブなプラグマティズム
クルト・レヴィン(Kurt Zadek Lewin, 1890-1947)は、ロシアの心理学者ブルーマ・ツァイガルニク(Bluma Wulfovna Zeigarnik, 1901-1988)が主張した「目標が達成されない目標行動に関する、未だ終わっていない課題については、すでに終わっ た課題よりもよく覚えているものだ」という主張にもとづいて、「人間はそれを望んで目標に立ち向かう時には、緊張感をもつが、その目標が達 成されるとその 緊張感は薄れてしまう」ということを心理実験として示し、それを提唱者の名前を冠して「ツァイガルニク効果」と名づけた。(未完成の課題を与えられると) 人間は目標にむかって集中してい る時には、お互いに協力し、その問題に取り組もうとする。それらの目的は、参加者たちが自発的に選んで、またその問題解決に興味をもつほうが効率的に取り 組むことになる。このことをさらに敷延すれば、人間は、独裁的な強制下にあるよりも、民主的な参加状況により、より積極的に相互に協力するということにな る。
研究や教育の現場は、みんなが目的意識を共有している、集団で課題に取り組んでいるときに、参加者たちがもっとも積極的に関与しうるし、集 団がもつパワーを発揮す る(Lewin 1946)。そして、その集団が課題に取り組む、現場(=場)の状況というものは、各人の動き・意識・思考・相互作用に多大な影響力を与える。クルト・レ ヴィン は、「場の理論」あるいは「グループ・ダイナミクス」と呼ばれる理論を提唱した、ゲシュタルト心理学者である。
このようなレヴィン流のアクションリサーチが、1940年代から50年代のアメリカ合衆国で受け入れられたのは、その土地や文化ならでは、 北米のプラグマティズムの伝統がある。曰く、理論的な説明よりもまず眼の前 にある問題に対してその時点における最適だと思われるような方法は、その理屈がどのようなものであれ、まず採用してみよう。不都合があればどんどん実践的 に改良を加えればよい。誰にも分からないような高度な理論を提唱して満足するよりも、理論的説明が後知恵でアバウトなものであっても、有効性をもたらすの であれば、まず使ってみよう。人が抱えている問題にどんなことでも解法への糸口を見つけることができれば、それはよい方法である。……これらの、現在の社 会で、よく言われかつ推奨されることの多い、「理論的説明よりも行動原理の優先だ!」「問題を見つけ出し、それに対して解決方法を求め、それを実践してみ ること(=高度汎用力[higher capability])」 などの課題と通底する。
これらのわくわく感が、ある特定の学問が、教室という空間において学生を鼓舞するには、てっとりばやい方法になる。なぜなら、この問題は、 容易には達成されないために(ツァイガツニク効果により)、それなりに緊張感をもって課題が記憶されるものだからである。
■ツァイガルニク効果 (Zeigarnik effect)
「中断された課題、あるいは未完 の課題が、気持ちに引っ掛かり、幾度となく思い起こされやすい現象。……人間の無意識は、事物が閉合して完成にいたることを求めており、未完の完成は完成 に至るまで、意識に残り続ける。したがって、中断された課題や未完の課題は。達成済みの課題よりも想起されやすい」(Lindewell, et al 2015[2015]:310[150]))[ ]が原著。
ツァイガルニク効果の例:テトリ スのパズルがやめられないような状態(=テトリス効果)
映画『ノーカントリー(No
Country for Old
Men)』で、元ベトナム帰還兵の登場人物ルウェリン・モス()がメキシコ麻薬マフィアの組織の瀕死のメンバーが「agua,
agua,..(水が欲しい)」と言ってモスに助けを呼ぶが、モスは「no agua
(水はない)」と言って立ち去る。その場を離れたモスが、その後、札束を手にする。自宅に戻った彼は、夜中に起きて、水をもって危険な現場に立ち戻り、そ
こからマフィアに追跡され、彼の人生は完全に逃亡し、マフィアにおわれるものに大変化する。モスにおけるツァイガルニク効果とは、瀕死のマフィアに水をや
れなかったこと(=モスに水を持って遣る道義的責任はない)である。
■クルト・レヴィンによるアクション リサーチとは?
"Lewin,
then a professor at MIT, first coined the term “action research” in
about 1944, and it appears in his 1946 paper “Action Research and
Minority Problems”.[13] In that paper, he described action research as “a comparative research on the conditions
and effects of various forms of social action and research leading to
social action” that uses “a
spiral of steps, each of which is composed of a circle of planning,
action, and fact-finding about the result of the action” (this
is sometimes referred to as the Lewinian spiral)." - Wiki, Kurt Lewin.
レヴィンのレヴィンのスパイラルはこのページの冒頭のスキームとして掲げたものに表現されており、現在の経営学手法としてはPDCAサイクルに類似する。それらの哲学もまた、北米のプラグマティズムの伝統に適合的であ る。
「社会実践のために必要な研究は社会管理または社会工学(social
engineering)のための研究としてよく特徴づけられる。それは一種のアクション・リサーチ、つまり、社会的行動の諸形式の生ずる条件とその結果
との比較研究であり、社会的行動へと導いてくれる研究である。書物以外のものを生み出さない研究は満足なものといえないのである」(Lewin
1946:35)[末永俊郎 1959年の翻訳を参照した]
"The research needed for social practice can best be
characterized as research
for social management or social engineering. It is a type of
action-research, a
comparative research on the conditions and effects of various forms of
social
action, and research leading to social action. Research that produces
nothing
but books will not suffice."(Lewin 1946:35)
■アクション・リサーチおよびアドボ カシー・アプローチ(池田 1989)
アクションリ サーチ(action resarch)あるいは唱道的アプローチ(advocacy approach)はプロジェクトを施行する側と住民(行政モデルではしばしばクライアントと呼ばれた)を明確に区別せず、住民の主体的な発展を促すため に人類学者がプロジェクトに参画しながら調査を行なうというスタイルのこと(池田 1989)。
「合理的社会管理はしたがってそのひとつひとつのステップが、計画、行動、および行動の結果 についての事実発見という循環的過程からなるところの螺旋として進行してゆく」
"Rational social management, therefore, proceeds in a spiral of steps each of which is composed of a circle of planning, action, and fact-finding about the result of the action." - (Lewin 1946:38)
Figure : Action research cycle (Source: http://www.leeds.ac.uk/educol/documents/3292g1.gif)
■アクション人類学(action anthropology)
アクション人類学とは、文化人類学の具体的な検討を通して、たんに人
類学の応用的活動における貢献を試みるだけでなく、人類学が研究対象となる
当事者と共に意思決定プロセスに関わる実践的学問である。従って、アクション人類学とは、臨床的実践のことでもある。アクション人類学は、フォックス・イ
ンディアン(the
Mesquakie)の居留地に、ソル・タックスが学生を引率して調査する研究から始まった。最初は、参与観察を通してフォックス・インディアンの社会や
文化を理解することから始まったが、彼らに対する周囲の「白人の視点」がもつ偏見や、彼ら自身が内面化しているように思われた、自己に対する偏見、とりわ
け、開発から「遅れたインディアン」についての意識調査と、彼ら(=クライアント)自身がそれをどう考えているのかということに対する、人類学者とクライ
アントの間の対話が始まるようになった。アクション人類学は、現地社会に対する応用や「干渉」ないしは介入から入るのではない。まずは、純粋な研究から出
発することが肝心である。 そして、対象になっている人たち(the people in
question)が望まないような概念ないしは他者表象を放棄していくような、ある種の人類学がもっている表象化の減算主義を特色とする点で興味深い
——なぜなら民族誌研究は、データの解釈の上にさらにデータ収集をおこなうという加算主義的な表象戦略をとるからである。[→アクション人類学]
■アクション人類学の解説
■リンク
■文献
その他の情報
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