はじめによんでください

ジェンダー・トラブル 第2章

Gender as one of sociological categories

ジェンダー・トラブルのポータルはこちらです!!!

解説:池田光穂

1999年版の序文"1/2 Butler's Preface of Bender Trouble (1999)"+"2/2 Butler's Preface of Bender Trouble (1999)" →pdf withpassword JB_GT_preface1999.pdf
第1章 セックス/ジェンダー/欲望の主体 One: Subjects of Sex/Gender/Desire
第2章 禁止、精神分析、異性愛のマトリクス の生産 Two: Prohibition, Psychoanalysis, and the Production of the Heterosexual Matrix
第3章 撹乱的な身体行為 Three: Subversive Bodily Acts
竹村和子あとがき(kazuko_takemura1999.pdf)with password

02 第2章 禁止、精神分析、異性愛のマトリ クスの生産 ch02_Butler_gendertrouble-2.pdf

【イ ンセスト概念についての誤解を解く】

イ ンセストは、近親姦と訳語することも近親婚と訳すことも間違いである——竹村和子訳の問題。インセストは、禁止された親族カテゴリーとの婚姻(社会的承認 された婚姻関係すなわち恒常的な性交関係)のことをさす。そのため、インセストは、定められた者以外との性交や、それにもとづく繁殖行為をさす。通常は、 恒 常的な性交関係が禁止されるものとは婚姻関係になく、社会的に承認されてもいない。そのため、文化人類学では、インセスト関係にあるものどうしの性交と婚 姻(後者は制度上ありえない)は区別すべきとされている。多くの社会で異母キョウダイをふくめてキョウダイ間での性交ならびに婚姻は禁忌(タブー)である が、古代エジプトの王家では、むしろ、それが定められる場合は(上掲の定義からみて)インセストとは呼ばない。

【ヘ テロセクシャルを異性「愛」とすることの不可能性】

ヘ テロセクシャルは、異性愛ではなく、異性性交性で、この場合の性交はインターコース(性器の挿入)ではなく、性の交わりであり性器の接触と理解すべき。せ いぜい、この性愛はエロス、あるいはリビドー(欲動)なので、姑息的な翻訳だが、ヘトロセクシュアルを異性エロス・異性リビドー・異性欲動とすべきか。

++ +++(消去不可)+++++

開 始時間:3:07:15 Two: Prohibition, Psychoanalysis, and the Production of the Heterosexual Matrix

ジャック・ラカン
Jacques-Marie-​ Émile Lacan, 1901-1981
「ジャック=マリー=エミール・ラカン (Jacques-Marie-Émile Lacan、1901年4月13日 - 1981年9月9日)は、フランスの哲学者、精神科医、精神分析家。 初期には、フランスの構造主義、ポスト構造主義思想に影響力を持った精神分析家として知られていた。 中期では、フロイトの精神分析学を構造主義的に発展させたパリ・フロイト派(フランス語版)のリーダー役を荷った。 後期では、フロイトの大義派(仏:École de la Cause freudienne)を立ち上げた。 新フロイト派や自我心理学に反対した。アンナ・フロイトの理論については、フロイトの業績を正しく継承していないとして批判し「アナフロイディズム」と呼 び、「フロイトに還れ」(仏:Le retour à Freud)と主張した。」ウィキペディア)
ジョーン・リヴィエール
Joan Riviere, 1883-1962
ジョーン・リビエール - Joan Riviereとも表現。She was a British psychoanalyst, who was both an early translator of Freud into English and an influential writer on her own account.
ジークムント・フロイト
Sigmund Freud, 1856-1939
フロイトの無意識の構造論
父の名
Noms-du-Père
「人間が、乳児から成長して自己を持つ にいたる課程において、母の乳房が詰まっている乳児の口から、やがて乳房が去り、そ こに欠如が生まれる。ラカンによれば、これは(1)想像界に安住する のを禁ずる父の命令を受け入れることであり、(2)社会的な法の要求を受け入れること、(3)社会という言語活動の場に引きずり出されること、(4)自分 が全能ではないという事実を受け入れることと同義である。 この父の命令にあたるものを、ラカンは、フランス語で同じ発音をもつ2つの言葉「non(否)」と「nom(名)」をひっかけて、父の名と呼んだ。/父 の名を受け容れる過程は、幼児の全能性である「ファルス」(仏:phallus)を傷つけることという意味で、去勢(仏:forclusion)と呼ばれ る。この去勢によって、人間は自らの不完全性を認め、不完全であるところの主体(仏:sujet)を逆に積極的に確立するのである」ウィキ ペディア「父の名」)。






第2章:ページ
パラグラフ
ch02_Butler_gendertrouble-2.pdf
※主たる禁止は近親姦であり、同性はそうではない、というモニカ・ウィテッグ「ストレートな精神」
77
1
・家父長制を撃破したい欲望のための、 家父長制「以前」を想定するフェミはまともか?

2
・家父長制「以前」を想定するフェミ は、フェチ(物象化の蔑称)でもある——(ジュディス・バトラーのテーゼ)
・家父長制のフェチの解剖が、まず必要になる。
78
3
・「法の出現」という課題
・起源の捏造は、戦略である

4
・法の出現以前にユートピア的意味を投 影する人は、自己正当化の物語にどっぷり浸かっている。
79
5
・女のあり方に関するさまざまな起源神 話

6
・レヴィ=ストロースは、本当に助けになるのか?
80
7
・素材としてのセックスも、文化的道具としてのセックスもかなり怪しい

8
・ストラザーンやマコーマック批判
・男性中心主義への抵抗としての女性の意義を復権することは、その男性中心主義のイデオロギーを強化する。
・ギアツの立ち位置:自然は文化的概念だが、自然概念がもつ普遍的イデオロギーゆえに、つねに、文化的粉飾を解体する作用すらもつ。
・自然としてのセックスが政治的なものであるならば、構造主義人類学の自然と文化の概念は、最初から崩壊する
81
9
・家父長的な法の存在

10
・ジェンダー構築
83
11
7. 構造主義の危うい交換
・構造主義は法を単数とみなす傾向あり。
・L=S(レヴィ=ストロース)の議論は、人間関係を構成している構造化の普 遍的論理を前提にする
・レヴィ=ストロースの問題は、文化人類学者は文化の手触りにこだわるので、普遍化傾向が遠ざかるが、彼の場合は、再度、哲学に回帰した。
・ギアーツの「ローカル・ナレッジ」を批判の根拠にしているが、「文化の解釈」にも、L=S批判はある。
84-85
12
・イリガライのL=S批判は、「しるしをつけて排除」という男根ロゴス 中心主義のエコノミーに対するやむにやまれぬ批判

13
・言語の全体性と閉鎖性
・ソシュールのシニフィアンとシニフェ(→記号の世界
86
14
・L=S、男性的文化アイデンティティは、父系親族の差異化で確立でき る。
・それを可能にするのは、イリガライによると、ホモソーシャルな欲望
86-87
15
・族外婚=交換=ホモソーシャルな結束の手段(イリガライ・テーゼ)
87
16
・男同士の互恵関係は、男女における非互恵関係を条件づける(バト ラー)→これはちょっと無理があるかな…
88
17
・象徴界から排除されたセックスの領域?
・構造主義の法の検討
・法の中で性差がつくられること

18
・「トーテムとタブー」の信憑性のなさを指摘することが、フロイトを逆 に擁護してしまう

19
・L=Sを例にとり、インセストタブーを否認することへの「禁止」の大 きさを指摘。

20
・(母子のインセストタブーの上にたてば)欲望はなぜ異性愛(ヘテロセ クシャル)の男性の特権になるのか?

21

91
22
8. ラカン、リヴィエール、仮装の戦略
・ラカンの言語理論の目的が混乱する(ジェンダーを議論すれば……)

23
・ファルスであること
92
24
・象徴界(→ジャック・ラカン理論のスコラ的解釈)(→ウィキペディア「現実界・象徴界・想像界」)
「大 文字のS(エス)からa'(小文字の他者)を経由してa (自我)で顕された自我(moi)に到達する経路が、鏡像段階。鏡像段階では点線でしか示されていない。大文字のS(エス=超自我)から、自我(a)へは 実践も点 線もない。自我(moi)はA(大文字の他者)と、鏡に映った他者(a')すなわち、小文字の他者からの承認があって存在する。A(大文字の他者)は、超 自我(Es)にも部分的に投射している=この経路が無意識であり、大文字のS(エス=超自我)に完全に投射されていない。鏡に映った他者(a')から自我 (moi)に投射する経路が想像的関係(relation imaginaire)という。」
93
25
・もし、象徴界が意味構造なら→文化の構造であるこの事柄の、誰が、何 を、誰を意味付けるのか?
93
26
・男の主体は……見えているだけ
94
27
・ 女はファルスである。→ウィキペディア「父の名を受け容れる過程は、幼児の全能性である「ファルス」(phallus)を傷つけることという意味で、去勢 (castration)と呼ばれるわけだが、この去勢によって、人間は自らの不完全性を認め、不完全であるところの自己を逆に積極的に確立するのであ る」。

28
・ファルスであることは、父の法により意味づけられる
95
29
・男はファルスをもっているが、ファルスであるわけではない。

30
・女はファルスである——ファルスを具現化し、支える欠如
・(ラカンからの引用)

31
・異性愛の非現実性と、男性主体の見せかけの現実性を、ラカンは指摘。

32
・異性愛の喜劇=女に強制されているファルス

33
・バトラーの帰結
1)セックスの存在論を、パフォーマティブに生産すること。あることと納得させる(しかけ)。
2)男根主義のメカニズムで表象不可能とされている、アプリオリな女性(のオントロジー)を前提とした女の欲望
・イリガライの処方箋「仮装は女がおこなう。それは男の欲望に参与するため。その時 に、女は自分の欲望を断念するという犠牲を払っている
98
34
・バトラーによると、この2つの方向性は互いに排除しない。なぜなら、 見せかけは胡散臭いものになっているから。
・リビエールはかつて「仮装としての女らしさ」を論じた。
・仮装は、つねに、否定されるべきものとしてあり続けるのか?
(バトラーはいくつもの審問をおこなう)
98
35
・ラカンの引用→女性の本質性(=仮装をつづける存在)を否定しても、女はファルスになる。この場合の、女は ファルスであるという意味は、他者の欲望のシニフィアン(=意味するもの)になる
・女が愛されると同時に欲望されることを望むのは、ただ、女がそうでないもののため(=男のためではなく、それ自身。引用者)である。
・女は自分自身の欲望のシニフィアンを、自分が愛の要求をむける相手の身体の中に見出す(=女の身体は他者としての男を内包する存在になる)
・この名づけ得ない器官としてのペニスは、ヘブライ語のヤハウェのように発話してはならないものであれば、なぜ、それを忘れるのか?(バトラーのラカン批 判)
・女性=ファルスの欠如というラカン説批判が展開される
99
36
・ラカンと仮面。
・仮面の機能は、愛の拒絶を解決する手段としてのアイデンティフィケーション(同一化)
・仮面はメランコリーの体内化戦略だという
・「結果的に二重に喪失されたものをメランコリーによって吸収することで、アイデンティティの構造を二重にする、二重の否定がなされる」(99)→ヘーゲ ルの否定の否定を思い起こす。

100
37
・女性の同性愛と、ラカンの仮面の議論
・ラカンは、仮装を性の位置の喜劇としてとらえる(102)

38
・ ラカンは、女性の同性愛が絶望した異性愛から説明するが、(メランコリーと同一化の議論という共通の地平からは)バトラーは、異性愛こそが、絶望した同性 愛からも説明できると主張(こは、本章の末尾にでてくるゲイル・ルービンの性的欲望の管理と社会参画への包合という論証の議論に接続する)。
101
39
・ラカンは、代名詞の位置を自在に動かすことで、誰が誰を拒絶するのか を曖昧にした。

40
・仮装としての女らしさ(1929)論文
・アーネスト・ジョーンズの説明:女のセクシュアリティは、ヘテロセクシュアリティか、同性愛かの形態にどちらかに発達していく。
・リビエールは、中間タイプ
・「セックスの特徴」+「欲望」+「性指向」
前 列左から右に:Sigmund Freud, G. Stanley Hall, Carl Jung, 後列左から右に:Abraham A. Brill, Ernest Jones, Sándor Ferenczi,(1909年クラーク大学[Massachusetts]にて)
102
41
・リヴィエール:2つのジェンダーの属性をあわせもつことの意味=「闘 争の相互作用」
・フィレンツィーを引用するリヴィエール「同性愛の男は自分の同性愛を「防御」するために異性愛を誇張する。……男らしくありたいと望む女は……女らしさ の仮面をつける」(102-103)
103
42
・文化的ステレオタイプのゲイと、ゲイの内実は異なる、ということだ が、私には、2タイプあるように思えるが、どう説明するのか?
・ゲイ男性は異性愛男性と違わない(103)

43
・女のホモセクシュアルと、男のホモセクシュアルは同じ(あるいは対称 的ではない)。男女の非対称に由来する。
・「同性愛の男は去勢を望むと同時に恐怖することによって、思わず知らず、自分自身に報復しているのである」——同性愛の男は「自分の同性愛」を理解して いない。
・では、女性の同性愛は、自分の同性愛を理解しているということか?
104
44
・リヴィエールは女の同性愛を理解しているのか?(104) ——バトラーの主張では、わかっていない、というふうに読める
・精神分析の「歴史的伝統」のなかに、レズビアンは「無性」のもの、セクシュアリティを否定したものとして位置付けられている——ホモセクシュアルでもレ ズビアニズムの「多様性」は、精神分析ならびにバトラー先生はどのように理解されているのか、聞きたいところである。
・リヴィエールが、我々に理解させようとしているのは、仮装した女の同性愛は、そうでない女の同性愛にも異性愛にも還元できない。
・隠されているのは「怒り」である→ここで、私(池田)は、サンダカン八番娼館の木下クニのことを思い出した。クニさんのことは「山崎朋子『サンダカン八番娼館 : 底辺女性史序章』研究ノート」 で。

105
45
・男性どうしのホモエロッティクな交換は去勢を意味する(105)
・「男同士のホモエロティックな交換は去勢を意味するので、同性愛の男に「防御」の必要性を感じさせたのと同じ報復の恐怖をおんなも感じることになる」 (105)
106
46
・仮装により隠されているのはなにか?
・リビエールの結論:両性のあいだに差異なし

47
・スティーブン・ヒース「ジョーン・リヴィエールと仮装」=本物の女性 性は、それを演じるものまねであり、仮装である」(106)

48
・女性性は、男への同一化を押さえ込み、解決する仮面となる
107
49
・リヴィエールの解釈をめぐって
・リビエールは、自分の男根主義をおそれているのではないか?
・リビエール自身が、自分がファルスに同一化していることが明らかになることを恐れている?

50
・バトラーのリヴィエール批判:女性性を恐る

51

109
52
・ラカン派の分割の概念

53
・同一化には幻想がつきもの
110
54
・言説の前にあるものは不可能
・法は禁止すると同時に産出する

55
〈想 像界=I〉=(承前)。〈現実界=R〉=「現実とはけっして言語で語り得ないものであるが、同時に人間は現実を言語によって語るしか ない、という一見逆説的なテーゼが成り立つ」ような世界。〈象徴界=S〉=「人 間存在を根本的に規定する言語活動(langage)の場のこと。また、数学などもこれに含まれ、言語活動によって形成される人間のつながりを大文字の他 者(A)と名づけている。これは、自己と他者をつなげる共通の第三者 としての言語を指している。大文字の他者も言語活動の一部であることから、象徴界に属する」ウィキペディア「現実界・象徴界・想像界」)


56

112-113
57
・ラカンの理論は、奴隷の道徳律である
114
58
9. フロイトおよびジェンダーのメランコリー
・イリガライ、フロイト、クリティバ

59 ・フロイト「悲哀とメランコリー」

60


61


62


63
【テキストとは無関係の解説】
・エディプスコンプレックス(Oedipus complex):「精神分析の用語。男子が母親に性愛感情をいだき,父親に嫉妬する無意識の葛藤感情。広義にはエレクトラ・コンプレックスも含む。人間 は乳幼児期から性愛衝動をもち,無意識に異性の親の愛情を得ようとし,同性の親に対しては嫉妬するが,この衝動は抑圧されている。このことを十分理解して なんらかの方法で解放しないと,一種のしこりないし屈折となり,のちに神経症を発症することがあるという考え方。父親を殺し母親と結婚したギリシア神話の エディプス (オイディプス) 王にちなんで名づけられた」ブリタニカ)。女児は、去勢コンプレックス=男根への羨望から、エディプスコンプレックスがはじまる。男児は去勢コンプレック スへによりエディプスコンプレックスが終わる。
・エレクトラ・コンプレックス(Electra complex):(ユング派)「精神分析の用語。女子が父親に性愛衝動をもつと同時に母親に嫉妬と憎しみをいだきながら,これを無意識のうちに抑圧し, 屈折した異性願望を形成する心的状況をいう。広義にはエディプス・コンプレックスに含まれるが,特に女子の場合に限って,男子の母親に対する愛着と対比さ せて用いる。」ブリタニカ)
118
64
・一次気質とはなにか?

65


66


67
・フロイト「自己非難は、愛する対象に向けていた非難が方向を変え、自 分自身に向けられたものである」(120)

68
・メランコリー

69

121
70
・ジェンダーアイデンティティの内面化=心の内部に自我の理想像を構築 すること

71
・ジェンダーアイデンティティの強化

72

123
73
・「ジェ ンダー・アイデンティティは、同性愛タブーを一貫して採用することによって、つまり、明確に区分されたセックスのカテゴリーにしたがって身体を形成するだ けでなかう、性的欲望を生産し、それをディスポジション(気質としての配置)することによって、アイデンティティは構築され、維持される」 (123)

74


75
・気質(形成)は、プロセスの結果(→M・ミードの女性と男性の性差の形成に関するモデルとその問題

125
76
・一次気質は法の結果(125)
・快楽を想定する抑圧仮説(125)

77
・「気質」概念という起源
127
78
10. ジェンダーの複合性、同一化の限界
・これまで、ラカン・リビエール・フロイトを議論してきた。
・ファルスであるか、ファルスをもつか……

79
・フェミ批評と同一化の問題
・母への同一化

80


81
・父の法の、文化多元的定義

82


83
・インコーポレーションは幻想、プロセスではない(129)

84
・イントロジェクションは、悲哀の作用に寄与するプロセスだ(130)

85


86
・ジェンダー・アイデンティティの構造を、メランコリーの構造と考えよ (131)

87


88
・抑圧の二重の波——イリガライ

89
・イリガライは、フロイトを嘲笑するために、せっせと引用する (132)

90
・homosexual the matter ... にそろそろ疲れてくるころである(池田)

91


92
・幻想を保持する、とはどういうことか。
・ペニス、胸、膣が、快楽の源泉でそこから全身に発散する、という「自然化」


93
・トランスセクシュアルと身体(=自然化言説への抵抗?)→"deep throat"

94
・身体の二重性(想像の身体/現実の身体)
・身体はすでに文化の記号

95
・「メランコリーによって獲得された異性愛」
・バトラーさんの「アンドロジニー?」(135-136)
・ペニスと《対象としての女》《記号としての女》
137
96
11. 権力としての禁止の再考
・基礎付け主義(Foundationalism) に対するフーコーの批判=系譜学
・「信念が正当化されるのは基本的な信念によって基礎付けられることによってである、という考え方(認識論)」「倫理的判断が正当化されるのは基礎的な倫 理判断によって基礎づけられている場合である(倫理学)」
・フェミニズムの理論は、性差に関する精神分析理論に依拠。
・フェミニズム2つの理論的挑戦:「異性愛」と「インセスト(近親姦)」
・ゲイル・ルービン(Gayle S. Rubin)「女の交易(The Traffic in Women)」 ——ジェンダーとは社会的に強要されたセックスの分割である(ゲイル・ルービン)
138
97
・禁止の法
・昇華(sublimation)の生産効果:In psychology, sublimation is a mature type of defense mechanism, in which socially unacceptable impulses or idealizations are transformed into socially acceptable actions or behavior, possibly resulting in a long-term conversion of the initial impulse.
・フロイト「文明とその不満」→セクシュアリティの昇華は、不満をうみだす。
・マルクーゼ「エロスと文明」→昇華行為こそが人間的で解放されるべき
・フーコー:禁止の法ではなく、生産の法に着目する。(禁止の法とは、権力のなかにどっぷり浸かっているのに、隠しおおせるとおもっている自分自身の物語 生産である)
139
98
・インセストタブーは二重の禁止:性交=セックスと出産=再生産を禁じ る(ゲイル・ルービン)。このことは、インセストタブーが性対象の選択を領域を可能な性交の相手と、そうでないもの。
・文化の再生産とアイデンティティは保持されなければならない=族外婚と族外婚の異性愛
・インセストのタブーの前に、同性愛のタブーがある(ルービン)→これは民族学上の事実とは齟齬。男性では、儀礼的同性愛の実践が多くある。
・いずれにせよ、性愛的対象は、異性愛としてがデフォルト。
139
99
・ルービンの主張は、セックスとジェンダーの制度は、女の交換や異性愛 の推奨など文化的制度により秩序づけられる。
・エディプス・コンプレックスは、インセストのタブーを説明するものではなく、インセストタブーを文化的に説明し、タブーを執行するものだと、ルービンは いう。
140
100
・セクシュアリティの存在に先行して、法が先に存在している可能性があ る(=文化人類学的には首肯できる考え方)
・バトラーによるとセクシュアリティはファンタジーそのものなので、セクシュアリティは法によるファンタジーであり、法はセクシュアリティと同様な禁止の ファンタージーを産出する。

101
・インセストタブーのセックスの禁止と(セックスの)区分は、文化シス テムを通して、ジェンダーに変容(=メタモルフォーゼ)させ、法に先行したその男女の区分というものを「存在論的な現実」だと、錯認させる。
・セックスとジェンダーには、その成立秩序に順序がある。このようにして、ジェンダーの秩序がセックスの区分に組み込まれていく。
141
102
・両性愛の源泉は、男女の親によるケアのもとで生まれる
・同性愛の革命が生じるためには、男女の両親によるケアから育てられない養育のシステムからうまれる——「女の交換」の廃止。
・ルービンによると、異性愛の強制的側面が解体されるためには、ジェンダー区分そのものを解体しなければならない。
・(池田による解説)その可能性を拓くためには同性婚ならびに同性のカップルが人類共同体の仲間の補助(=次世代育成能力の付与)により次世代の男女を育 むことが不可欠になる。日本の同性婚の権利を擁護する法律家やアクティビストは、ここまで考えているのだろうか? ルービンは、ある意味で同性愛理論の カール・マルクスなみのスケールをもつ。
・ルービンのほのめかし(141)
142
103
・法が結果的に転倒する可能性を示唆(141)
・ルービンは「あと」の議論かかわっているが、それは「まえ」の存在様式をユートピア的に想像することとは異なる。
・バトラーさんは、「理想的なセクシュアリティ」の措定せず、構造主義の前提を受け入れないのなら、セクシュアリティと法の関係について、ルービンはちゃ んと指摘していないと批判。
142
104

・『性の歴史』1巻の、抑圧仮説批判:1)構造主義の法は権力のひとつ の編成。2)法はそれが抑圧している欲望を生産し、それを産出する。

143
105
・ インセストタブーは、ジェンダー主体性を構築していく法制的な法(143)とあるが、これは文化人類学的にはナンセンス。上掲の、【インセスト概念につい ての誤解を解く】をごらんください。ただし、次節で、タブーが法を産出することを指摘と断っているので、ここでの主張も許せる。

106
・フーコー流の、抑圧仮説と、法の生産からみれば、インセストを軸とし て思考することは可能である
144
107
・精神分析はインセストタブーには生産的機能があると主張。
・インセストタブーは、意図するようなジェンダーや抑圧をすぐにうむものでもない。
・両性愛(バイセクシュアル)と同性愛(ホモセクシュアル)は一次的リビドー気質、異性愛(ヘテロセクシュアル)は、骨の折れる構築物。
145
108
・バイセクシュアルは、外部構築
・両性愛(バイセクシュアル)と同性愛(ホモセクシュアル)は、ヘテロセクシュアルな秩序から排除されるが、それは「まえ」に存在するものとして位置付け られるからである。
146
109
・欲望は法を通じて制定される——ラカン。
・撹乱→遅延説(147)

最 後の晩餐ならぬ、最初の晩餐、あるいはヲトコ時代の終わり(フェミズムの夜明け), The First Supper 1988 acrylic on panel, 120 x 240 cm by Susan Dorothea White


シ スジェンダー(Cisgender)とは、性 自認(自分の性をどのように認識しているか)と生まれたときに割り当てられた性別が一致している人のことを指す。

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

軍艦ですら船のジェンダーは女性

Andy Warhol, Marilyn Monroe, 1967./Andy Warhol, Brillo Box (Soap Pads), 1964(MoMA)

Columbia, personification of the United States, wearing a warship bearing the words "World Power" as her "Easter bonnet" on the cover of Puck, 6 April 1901.