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「持続可能性」イデオロギー入門

Ideology of the UN's SDGs concept

解説:池田光穂

21世紀に入ると「持続可能性(sustainability)」というスローガンは、環境保護 派マイノリティの専有物ではなくなり、およそそれとは無縁とは思われていた企業や政府などが、堂々とこの用語を標榜するようになった(→「国連の持続可能な開発目標とグローバル・イシューズ」)。世は「持続可能性」 であることは錦の御旗であり、あたかも社会正義の徴であるかのように喧伝されている。

しかし、誰もが胸に手を当てて次のように考えるべきである。それでは、ファシズムや「虐待」も持 続可能性であるべきなのか? 時々は常軌を逸した者たちが犯罪を起こし、その反社会性がなんであるかを知らしめるためには、反面教師としての「虐待」が 「虐待のない社会」の持続可能性にとっては必要になるという馬鹿な機能論で屁理屈を捏ねることも可能だ。だけど、これはなにか変だ!

当たり前である。持続可能性とは、そのシステムの永続性についての言明のことであり、これじしん に価値判断を込めたことから、このような馬鹿なことがおこる。

もし「持続可能性」という用語を発したとたん、誰もがその用語に革命的警戒心(?!)を抱かず、 よきイメージをもち、その概念の妥当性につき、それ以上の反省を加えないという社会的機能があるとすれば、それは持続的可能性という用語そのものがイデオ ロギーとして機能していることに他ならない。

「持続可能性」イデオロギー入門とは、そのような概念じたいを批判することが目的ではない。その 概念にどのような価値判断を加えているかという分析を主眼にする。価値判断とは真空の中で決まるものではなく、社会のなかで慣習的に決定されるものであ り、それらはそれを生みだす人間にとって時空間の制約を受ける。

つまり、「持続可能性」イデオロギーの分析とは、徹頭徹尾、、「持続可能性」を標榜している個々 の社会現象に即して、その用語法の具体的検討をおこなわねばならない。

 プロジェクト研究と関連リンク [サイトマップ]

その名は「定常型社 会」 「利益率の低下は繁栄がもたらす自然な結果であり、産業に投じられる資 本が増加したことの自然な結果である」——アダム・スミス「ストックの利益について」(第1編9章『国富論』)
環境主義(用語説 明) 環境保護主義ともいう。自然環境を保護することが重要であるという主義 や主張。自然保護思想と深く関係して いるが、自然保護が環境を人間にとって住み易く快適であるように維持管理すべきであるという考え方であるのに対して、環境主義はそこに住む人間よりも人間 以外の生物や環境の保護のほうが大切であるという考え方に主眼がおかれている。鬼頭秀一(1996)によると環境主義は、動物解放論、自然の権利論、 ディープエコロジーという3つ思潮に歴史的起源をもつが、これらはみな人間中心主義からの脱却をはかるものである。
生態系(用語説明) 生物群集と無機的環境からなりたつエネルギーおよび物質のシステム。外 来語とし てエコシステムとそのまま呼ぶ こともある。
地球環境問題と地域 社会 先進開発地域の住民の視点から地球環境問題を論じる場合と、後発低開発 地域(いわゆる第三世界や第四世界)の住民の視点から論じる場合で は、自ずからギャップがあることを我々は容易に想像することができます。では、具体的には、どのような点が、どうして異なるのでしょう?
費用の外部化 資本主義システムが、生命系システムに対して破壊的な効果をもたらして いる説明のひとつが、新古典派経済学のいうところの「費用の外部化」 である。
エコ・ツーリズムの4つの顔 「‥‥もともとわれわれは、新し物好きの、一時のお調子に乗り易い國民 であるから、或る一 箇所が鉦や太鼓でヂヤンヂヤン囃し立てると、どツとその方へ寄り集まつて、餘所の土地は皆お留守になつてしまふ。そこで、そのコツを呑み込んで、宣傳の裏 を掻くやうにする、一方へ人が集まつた隙にその反對の方向へ行く、と云ふ風に心がけると、面白い旅をすることがある。」谷崎潤一郎「旅のいろいろ」(昭和 十(1935)年)
保健プロジェクトの持続可 能性の研究 本研究目的は、医療人類学の立場から、保健協力プロジェクトの持続可能 性に関する評価手法 を開発し、それを具体的な保健開発プログラム(インドネシアならびにホンジュラスにおける保健プロジェクト)と具体的な開発手法(保健医療部門における青 年海外協力隊活動)において適用し、その有効性(=可能性と限界)を明らかにするものである。本年度の目的は、医療人類学の立場から、保健協力プロジェク トの持続可能性に関する評価手法の文献的レビューとそれらに関する予備調査をおこない、次年度にむけての研究データベースを確立することにあった。
「持続可能性」の意 味 経済人類学者のクリス・グレゴリーは、1970年代にそ の隆盛を誇っていた文化経済学や経済人類学における「適応」(adaptation)という用語と概念が、今日ではすっかりその権威を失い、それに似て非 なる「持続可能な」(sustainable)=サステイナブルという言葉が、社会科学研究パラダイムの中で大手を振って流通していることを指摘している (Gregory 2005)。
貧困研究の文化人類 学 システムの全面的改廃(例:革命)などの選択肢は予め念慮されない。議 論の中心は、社会の改造に関する技術論(=改良主義)に修練する傾向があり、批判理 論はつねに周縁化されている。
開発文化論演習 この授業は、一方的な物資の扶助(支援)だけでは解決できない、社会的 包摂のためのコミュニ ティ形成のための活動つまり支縁(しえん)を実践状況のなかでおこなうものである。具体的には、い まや貧困と高齢化社会の縮図であり「福祉の(云々)」となった大阪・釜ヶ崎でのフィールドワークを、そこで支援と支縁の両方のサービスに関わる実践家を訪 問し、またそれらの活動に関わることで、支縁の意味を考察し、体験したことをもとに方法論の錬成などめざす。
開発研究用語集 This simple diagram by Benedetto Bordone dating from 1528 is the first map of Japan printed in a Western manuscript, and draws on the written account of Marco Polo, as no European had visited Japan at the time.

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