ショートコメント「エスノセントリズム」
Short Comments on Ethnocentrism
解説:池田光穂
エスノセ ントリズムとは、複 数の民族的「他者」に対して、自己の民族とは異なった存在であり、かつ自 分たちのほうが他者よりも優 越する価値を有するという(集団がもつ)倫理的態度、すなわち価値判断のことを言います。自民族中心主義ともいいます。その英語は ethno-centrism, ethnocentrism, で、ウィリアム・サムナーが『フォークウェイズ』(Sumner, W. G. Folkways. New York: Ginn, 1906)の中で使ったのがその嚆矢(こうし、最初のこと)だと言われています。また、文化を担 うのは民族集団なので、自文化中心主義という表現もエスノセントリズムと同義にみてもいいでしょう(→「ウィリアム・サムナーとエスノセントリズム」)。
"Ethnocentrism is
the technical name for this view of things in which one's own group is
the center of everything, and all others are scaled and rated with
reference to it. Folkways correspond to it to cover both the inner and
the outer relation. Each group nourishes its own pride and vanity,
boasts itself superior, exalts its own divinities, and looks with
contempt on outsiders. Each group thinks its own folkways the only
right ones, and if it observes that other groups have other folkways,
these excite its scorn. Opprobrious epithets are derived from these
differences. "Pig-eater," "cow-eater," "uncircumcised," "jabberers,"
are epithets of contempt and abomination. The Tupis called the
Portuguese by a derisive epithet descriptive of birds which have
feathers around their feet, on account of trousers.17 For our present
purpose the most important fact is that ethnocentrism leads a people to
exaggerate and intensify everything in their own folkways which is
peculiar and which differentiates them from others. It therefore
strengthens the folkways." - Sumner, W. G. Folkways.(pp.13-15) |
エスノセントリズムとは、自分のグループがすべての中心であり、他のす
べてのグループはそれを基準にして尺度や評価を決めるという物事の見方の専門的な名称である。民衆的やり方(フォークウェイズ)はこれに対応し、内的関係
と外的関係の両方をカバーする。各集団は自らの誇りと虚栄心を養い、自らの優位性を誇り、自らの神格を称揚し、外部の者を軽蔑する。各集団は自分たちの民
俗を唯一の正しいものと考え、他の集団が他の民俗を持っていることを観察すると、それを軽蔑する。このような違いから、忌み嫌う蔑称が生まれる。「豚食
い」「牛食い」「無割礼」「ぺちゃくちゃ言う連中」などは、軽蔑と嫌悪の蔑称である。(南アメリカ先住民の)トゥピ族は(植民侵略者の)ポルトガル人を、
ズボンのせいで、足の周りに羽がある鳥の蔑称で呼んだ。現在の目的にとって最も重要な事実は、民族中心主義が、民族の民衆の中にある特有で他者と区別する
ものすべてを誇張し強化させるということである。したがって、それは民衆的やり方や思考法を強化する。 |
Sumner, W. G. Folkways.(pp.13-15) | www.DeepL.com/Translatorに加筆修正した |
エスノセントリズム(自民族中心主義)とは、なんらかの意図的に採用する政治的心情でもありませ んし、また、倫理的態度と言っても心理学が言うエゴセントリック(自己中心的態度)のことでもありません。倫理的態度といっても個人がもつ性向のようなものではなく、手段がもつ、他者の集団に対する優越感情を、説明する論理 のことを、エスノセントリズム(自民族中心主義)と言います。
ここでの民族的他者は、それぞれおなじ文化を共有しているという前提で話されることがあるので、 ethno(=民族の)centrism(=中心からの視座)である自民族中心主義はしばしば「自文化中心主義(じ-ぶんか-ちゅうしん-しゅぎ)」と呼 ばれ ることもあります。
自民族中心主義が、ナショ ナリズムや人種主義の中に組み込まれると、自国民中心主義となり外国人嫌悪や排斥 (xenophobia, ゼノフォビア)や、人種 差別思想につながり、特定の外国人や人種を排斥することが、自分たちのアイデンティティの よりどころとなるという暴力礼讃の生むことはよく知られています。
しかしながら、おしなべて我々はし ばしば自民族中心主義的な態度をとることが多く、とりわけ、他者の集団に対して恐怖を我々が つよく感じる時代には、集団的特性として極端なエスノセントリズム(自民族中心主義)に陥り がちです。その場合、自民族中心主義的な態度が問題なのではなく、排外主義的な態度をとっ て、相手の集団のことを極端に邪悪なものとして一般化したりすることが問題なのです(→「愛 国主義」)。
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文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
みんなのための喰人 入門; Cannibalism of the
People, by the people, for the people