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人工知能と宗教:総合知からのアプロー チ(2単位)


Georges Rouault (1871-1958)

池田光穂・井上大介

このページは、現在、井上大介が代表者として計画中 のプロジェクト研究「総合知はどのようにして機械の心と対話できるのか」に関する情報提供を目的としている。その目的は「改正された科学技術・イノベー ション基
本法及び「創出の活性化に関する法律」の二法とそれらの「基本計画」で謳われる「総合知」を大学教育の中に実装するためのモデルシラバスの理論構築にむけ た実証調査を実施する」ことにある。そして、その成果を、大学の教養課程の学生にたいして「AIと宗教」を総合的に学ぶためのモデルとなるカリキュラムの 中に位置づけ、総合知が、日本の科学技術とイノベーション創発に貢献できることを最終目標としている。

授業担当者:
(「AIと宗教」教育研修を受けた複数 の教員)
履修対象/Eligibility
教養教育・一般教育の初学者、大学院生
開講時期/Schedule

講義室/Room

講義題目/Course Name
人工知能と宗教:総合知からのアプロー チ(2単位)
授業の目的と概要/Course Objective
この授業は、大学の初学者が学ぶべき 「総合知」を学修するために、現代喫緊の課題になっている「人工知能と宗教」の共存という課題について学びます。なぜ「AIと宗教」が問題になるのでしょ うか?日本ではまだ気がつきませんが、北米の大学ではキリスト教創造主義と生物進化論が激しく対立する側面がみられます。また、イスラム教圏では、宗教と 科学や、宗教と政治は、調和的になるような研究が大学で続けられています。日本では、人工知能が人間の計算や推論能力を凌駕する時代がくるというシンギュ ラリティ仮説はSF的興味や生活が便利になるというイメージでしか語られませんが、欧米では人間を超える存在は「超越論的存在」と呼ばれ。社会的に大きな 関心をもたらします。すなわち汎神論における「自然の復権」や唯神論での「神の凋落」を意味しますので、社会的大問題になります。このことはグローバル化 した日本人が、海外で勉強したりあるいはビジネスや社会活動に参画する時には、十分に留意すべき点になります。そのため、みなさんが大学においてはじめて 学ぶ教養教育のなかで「人工知能と宗教」について知ることは、さまざまな世界の知識を動員する意味で、重要な学修課題になります。この授業での課題は、 AIと宗教の専門家の教員からなるワークショップ型の実習も組み込まれています
学習目標/Learning Goals
1. 人工知能についての理工学的な知 識を習得し、プログラミングの基礎を知ることができる
2. これまでの宗教についての歴史や宗教学あるいは宗教哲学について興味をもつことができようなテーマを自分で見出すことができる
3. 欧米のシンギュラリティ仮説がどうして欧米で議論になるのかについて、非欧米(日本やイスラム圏など)と対照することで、理解することができる
履修条件・受講条件 /Requirement; Prerequisite
教養教育・一般教育の初学者が対象。た だし、他大学で類似の授業を受けていない大学院生も選択必修のひとつになります
特記事項/Special Note

授業計画/Special Plan (回)題目/Title:内容/Content
1回の授業は、休み時間を挟み2コマ連 続でおこないます(全8回:最終回は1コマ)。最初の20分は講義、その後はグループにわかれて、平均2回のワークショップ課題に取り組みます。
1)人工知能入門:情報科学からのアプローチ:プログラミングの基礎:機械学習のタイプ(ワーク1回)
2)宗教史からみた宗教の多様性:宗教がもつ排他性と包摂性:他者の信念をどのように知るか:認知科学と宗教(ワーク1回)
3)人工知能研究史:世界の人工知能研究者:ロボット倫理(ワーク2回)
4)宗教哲学:現代思想と宗教:人工知能の哲学:科学技術社会論(STS)(ワーク2回)
5)人工知能と宗教の共存課題にとってのシンギュラリティ仮説(ワーク2回)
6)「AIと宗教の共存」に関する研究発表会のための事前ワーク:1)課題選定;2)テーマのあぶり出し;3)次週までの準備分担;(ワーク3回)
7)グループ別、「AIと宗教の共存」に関する研究発表会
8)振り返りの講義
授業形態/Type of Class:
講義とワークショップ

授業外における学習 /Independent Study Outside of Class

教科書・教材/Textbooks
(現在選定中)
参考文献/Reference
(現在選定中)
成績評価/Grading Policy
グループワークの総合点(50点);毎 回のワークによる自己ポートフォリオ管理(30点);レポート報告(20点)
コメント/Other Remarks
この授業は、SDGsのうち、目 標4:質の高い教育をみんなに、目 標8: 働きがいも経済成長も、目 標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう、目 標16: 平和と公正をすべての人に、に関わるものです。各人のSDGs履修ポイントに配慮してください。

キーワード/Keywords
人工知能、宗教、総合知、科学技術・イ ノベーション基本法、
受講生へのメッセージ/Messages to Prospective Students
この授業シラバスの二次元コード

https://bit.ly/3mQEN05

ここで用語法を整理しておこう。

日本語
英語
定義と説明
総合知が必要とされる文脈
the social context for requirement of new schematized integrated knowledge
総務省国際戦略局・技術政策課「第6期 科学技術・イノベーション基本計画 について(2021.04.20)」によると、国内外の状況変化、政策上の問題や課題も山積している、そして今般のコロナ禍、この3つの現象は、日本社会 や日本政府に対して、1)「グローバル課題への対応」と、2)「国内の社会構造の変革」という二大課題を突きつけている。Society 5.0では、1)国民の安心安全を確保する持続可能で強靭な社会と、2)ひとりひとりの多様な幸せ=ウェールビーイング(端的に福祉であるが)が実現でき る社会、という2つの社会目標をもっている。以上の課題と社会目標から、来るべきSociety 5.0では、次のような3つの直接目標をもつ:1)持続可能で強靭な社会変革、2)「知」の創造、3)人材育成、である。それらを可能にする社会的図式と は、A)総合知による社会変革と、B)知・人への投資、が必要で、それらは《好循環》するはずである(→「科学技術イノベー ション基本計画と総合知」)
総合知
integrated knowledge, new schematized integrated knowledge さまざまな社会的困難を乗り越え、社会 変革をもたらすことが期待されている科学技術に関する知的領域を総合知と呼ぶことができる。AI技術、バイオテクノロジー、量子技術、マテリアル、宇宙、 海洋、環境エネルギー、健康・医療、食料・農林水産業等のイノベーションには、総合知による知的動員が不可欠である(→「科学技術イノベー ション基本計画と総合知」)
機械の心
Artificial mind and body
クラウド環境と接続したコンピュータ ネットワークが、人間のコミュニケーションと「対話」し、それにもとづいて自律的に制御システムを管理できたときに、私たちは「機械に心がある」と皆し て、そのシステムとインタラクティブな「対話」が可能となる。これはシンギュラリティ時代におけるチュー リングテストの拡張版と考えることができる。
AI・人工知能
Artificial intelligence
計算科学からみれば、人工知能とは、連合学習 (Federated learning)を機械におこなわせることである。また、社会学的には、(1)人間の知性・知能を計算機によって作り出すこと、(2)作り出され た〈実体〉、あるいは、(3)このことに関 する学問分野や実践、さらには欲望など、を指す複雑な言葉である。
宗教
religion
宗教の定義は、研究者の数だけある。そ のために、宗教に関する議論をおこなう時には、それぞれの研究者がもっとも適切だと思う研究者とその定義をあげてから議論すればよい。我々の宗教の定義 は、クリフォード・ギアーツのそれである。宗教とは、「(1)象 徴の体系であり、 (2)人間の中に強力な、広くゆきわたった、永続する情調(mood)と動機づけ を打ち立てる。(3)それは、一般的な存在の秩序の概念を形成し、(4)そして、これらの概念を事実 性(factuality) の層をもっておおい、(5)そのために情調と動機づけが独特な形で現実的であるようにみえる」ものである(→「宗教」)。

カリキュラム仮説(井上大介と池田光穂による)

井上と池田は、上掲の総合知の定義である「さまざま な社会的困難を乗り越え、社会変革をもたらすことが期待されている科学技術に関する知的領域」に関連するものとして「高度教養教育」「知 の理論(TOK)」「実践知」「現場力」「高度汎用力」「高度汎用力教育における産学共創」などと呼び、研究を重ねてきた(それぞれの項目にハイパーリンクしている)。

ここで、大学の初学者に「AIと宗教(電脳レリギオ)」ないしは「人工知能と宗教」という授業が行われるために は、「対話型対 話論理)」の授業が基本であり、グループワークをとおして、コミュニケーション力を陶冶し、かつ、プロジェクトや問題に即した学 修すなわち、「問題に基づく学習(PBL)」や「プロジェクトに基づく学習(PjBL)」が有効であると考える(用語解説は、それぞれの項目にハ イパーリンクしている)。

日本語
英語
定義と説明
高度教養教育
liberal arts education for adults
高度教養教育とは、学部高学年と大学院 生 ならびに社会人を対象としたリベラルアーツ教育のことである。学部低学年(入学後1-2年)のそれは一般教養あるいは教養教育と呼ばれてあるが、教育のコ ンテンツの中身には差がなく(=誤解をする教育専門家が多いのは嘆かわしい事態だ)、教師は学生の熟度により、より高いパフォーマンを持つように指導する ことが求められる教育である(→「大人のための知の理論」)。
知の理論(TOK)
Theory of Knowledge, TOK
「知の理 論」あるいは「知識の理論」(Theory of Knowledge) とは、国際バカロレアの学士入学(ディプロマ; baccalaureate とはフランス語で学士号の意味)プログラムにおける必修科目のことであり、それ以外の認証システムにおける大学では、通常「認識論」や「認識論入門」に相 当す るものである——正式な日本語訳は「知の理論」。知とはプラトンによる「知的」伝統を汲み「正当化された真なる信念」のことである(『テアテイトス』『メ ノン』)。
実践知
 Jissen-Chi (practical wisdom)
実践知とは、人が与えた現場で適切な判 断をくだ すことができる認識と能力の総体のことである。
現場力
Genba-ryoku, empowerment faculty and sensibility in practice
現場力(げんばりょく)とは、実践の現 場で人が協働する時に育まれ、伝達することが可能な技能で あり、またそれと不可分な対人関係的能力などの総称のことをさす。
高度汎用力
higher transferable skills
高度汎用力は、その3つの概念を社会的 に実装するときに、論理的かつ時系列的に進む、《課題を発見》 し、《課題の解決》を模索し、そして、 それを《社会に実践》するということである。これを「高度汎用力のリニア適用モデル」である。これが基本形。
高度汎用力教育における産学共創
Industry-Academia Co-Creation in Advanced General Competence Education
URA&IR「入門・概論」「基礎演習」「特 論」の3つのレベルの教えるためのモデルカリキュラムを開発する。そのために、先行する大学経営マネジメントやURAを専門に研究組織のヒ アリングや、実際の授業参観を通して、このカリキュラム作成をめざす。
ワークショップ技法
dialogic workshop
参加者が専門家の意見・助言を聞きながら、ある特定の問題解決のために おこなう共同研究(会)をワークショップ(WS)という。
対話論理
dia-logic, dialogic reason
対話状況が生み出すコミュニケーションの際に複数の主体に共有される理 性あるいは共通感覚のこと
コミュニケーションのパワー
Power of Communication
人は産まれながらにコミュニ ケーション能力がある/ないのではない。人は、コミュニケーション過程を 通して、すなわち場数を踏んで、コミュニケーション能力をつけていくのである。
問題にもとづく学習
PBL, Problem Based Learning
学習者じしんが中心となり、「問題シナリオ」が学習者のグループに定期 的に示され、反省的反復の作業をともないながら、実践される少人数グループの 教育手法ことを、「問題にもとづく学習」(あるいは問題に基づく学習)とよぶ。PBLとは, Problem Based Learningのアクロニム(頭文字による略記法)である
プロジェクトにもとづく学習
Project-Based Learning, PBL, PjBL
学習者じしんが中心となり、反省的反復の作業をともないながら、実践さ れる少人数グループの教育 手法のうち、具体的な学習課題を立てて少人数グループでプロジェクトを完遂させる学習手法を、「プロジェクトにもとづく学習」ないしは「プロジェクトに基 づく学習」( Project-Based Learning )という。英語による問題に基づく学習(PBL)と区別して、ピー・ジェイ・ビー・エル(PjBL)と表記する方法もある。
教育におけるPDCA
PDCA in Education
PDCAとは、品質管理の経営学におけるエドワード・デミング(W. Edwards Deming, 1900-1993)とウォルター・シュハート(Walter A. Shewhart, 1891-1967)の提唱したマネジメントサイ クルのモデル。PDCAサイクルともいう。PDCAとは、計画(Plan)・実行(Do)・点検(Check)・改善の実践(Act)の頭文字を順に並べ たアクロニム のこと。

モデルシラバス

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