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分析哲学に「検閲」の文字なし: 芸術と社会の係留点に関する社会学的考察

(予稿原稿)

There Isn't Censorship in Analytic Philosophy: A sociological study on relations between art system and society


池田光穂


クレジット:「分析哲学に「検閲」の文字な し:芸術と社会の係留点に関する社会学的考察」【本編はこちら】(池田光穂・大阪大学COデザインセンター)第94回日本社会学会大会;テーマセッション「芸術は社会の変容を予言する」落合仁司座長:2021年 11月13日09:30-12:30

目的;

バウムガルテンやカントでは、各人 の美的判断は個人の真正性の反映であり、社会の秩序などとは独立したものであり、美的趣味判断は共同体(社会)が決めるものではなく、個人により判断され るものであった。美的趣味判断の社会集団における差異は、ブルデュ(1979)が明らかにした通りであるが、彼はそのような境界が維持されるのは「域圏 (=界)」 を維持しようとする卓越化をめぐる闘争だと説明する。階級に属する個人の資源としての資本の種類で定義される具体的な趣味判断にそれぞれ家族的類似性の差 異が存在するだけだからである。ダントーによると芸術とは具象化された意味や思考であり、それは社会をみる遠近法に他ならないという。新しく生まれつつあ る芸術(=真正性の美的判断)は、それゆえ社会の変容を予見する。問題は、現今の芸術性がどのように維持されているのか、また社会(の価値判断)はいかな るメカニズムを通して芸術の真正性を保証しようとするのかであり、それを論証するのが本報告の目的である。

方法;

社会が芸術の真正性に介入する方法 には包摂と排除の二つのやり方があり芸術の真正性と非真正性の間の境界維持に象徴的によくあらわれる排除の方法に着目する。芸術の真正性からの包摂と排除 には芸術システム内における真贋の鑑定があるが、それよりも現在のポスト真理の時代と社会を揺るがしている、政治的な作品の排除や、猥褻性の検閲に誰が権 限を与えているのかということこそが、芸術が社会の変容を予見する典型例である。そのため社会関与芸術(socially engaged art)の実践と社会的コンフリクト、および個人がSNSで発信する表象への政治的「検閲」とその社会的背景について公開された報道やSNSなどの議論を 通して明らかにする。

分析美学があり検討が進んでいる。ただし 管見の及ぶ範囲では、社会関与芸術領域への政治的関与に関する考察はあるが、政治的な作品の公権力や世論による排除や、猥褻性の検閲についての議論が少な い。まるでNHKの日曜美術館でそれらの問題が取り上げられないのと同様に、忌避による排除メカニズムによって議論が回避されている。キム・ウンソンとキ ム・ソギョンによる少女像をめぐる国際的世論の議論とSNSにおける女児ヌードの検閲を通した排除などにみられるように、多くのデリケートな問題とはジェ ンダーイッシューと共通するものが多いと判断された。(Perle Hessing, 1908-?)

結論;

本報告が明らかした政治的にデリ ケートな作品の排除や猥褻性の検閲の社会的効果とは、問題になった作品が「もはや/もともと芸術ではない」という判定がなされ、政治と芸術という保護と被 保護の政治的関係を意図的ないしは被意図的に忘却を促すものであることが示唆される。このような境界領域における排除メカニズムは、芸術とは何かという中 核領域における議論における非政治的な議論を今後とも担保することに貢献することが予測される。すなわち、芸術が社会の変容を予見するという表現は正確で はなく、芸術から(あるものXを)排除するメカニズムの様態こそが来るべき社会の未来像を予見するのである。

●積み残したこと:「グランマ・モーゼス/塔本シスコPerle Hessing, 1908-2001/[Perle_Hessing.jpg] /ARTISTS' RESPONSES TO THE HOLOCAUST」「欅坂48のナチ衣装// パリのヒトラーたち」「ヴァルター・ベンヤミン」(日本語で読めるベンヤミンの著作)

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