臨床倫理
Clinical Ethics
right, A 12th-century Byzantine manuscript of the Hippocratic Oath臨床倫理とは、保健ケアとくに医療に関する倫理的事象(=医療倫理) のことである。臨床倫理学すなわち医療倫理学、医療のみならず、生物学、政治学、 社会学、文化人類学、法学、哲学などのさまざまな分野と関連性をもつ、学際的な研究分野である。生命倫理学(bioethics, バイオエシックス)と医療倫理学はテーマを共有することが多いので、医療倫理学あるいは臨床倫理学と「基本的に同じ」と判断しても間違いではないだろう。 私は、別項で生命倫理学を次のように定義した「人間を対象にした治療および実験に関する倫理・道徳、ひいてはそれらに関する諸研究」(→ 出典「生命倫理学と医療人類学」「医療倫理学」)
臨床倫理、すなわち医療倫理学は、医療倫理(リンク先はウィキペ ディア日本語)という歴史に先行する経験的事実と原則に依存する、すなわち先例拘束の原則(stare decisis)があるので、そのことを次に解説しよう(Weise, Mary Victoria, Medical Ethics Made Easy, 2016)。なおこのページは「医療倫理学」のページから独立したものであり、その内容は当該のページと重複していることをお断りしておく。
医療倫理の4原則というものがもっとも有名である。すなわち、1)自己決 定(Autonomy)、2)善行(Benevolence)、3)無加害(Nonmaleficence)、そして、4)配分上の正義(Distributive Justice)
☆人と人のあいだの倫理原則と感情労働
これは、社会的存在としての人間が「世 間」を渡っていくときに、個人が社会ととり結ぶ関係性について考察するものである。しかし、これだけでは まだ足らない「倫理」や「道徳」という課題がある。すなわち、(b)人と人の関係と、(c)個人の中の内面における価値や実践の倫理(マルチン・ブーバー の用語だと「我」と「汝」、ジョージ・ハーバート・ミードだと、アイ(I)とミー(Me))の関係である。
(b)人と人の関係
人と人の関係を規定する倫理は「コミュニケーションの 倫理」(正確にはinter-personal communication)でもある。医療倫理の4原則というものがもっとも有名である。すなわち、1)自己決 定(Autonomy)、2)善行(Benevolence)、3)無加害(Nonmaleficence)、そして、4)配分上の正義(Distributive Justice)
よくいわれる、医療倫理実践における原則(出典:バーナード・ロウ[2003:12-21])
バーナード・ロウ『医療の倫理ジレンマ』北野喜良, 中澤英之, 小宮良輔監訳、新潟:西村書店。
(c)個人の中の内面における価値や実践 の倫理
個人の中の内面における価値や実践の倫理 (マルチン・ブーバーの用語だと「我」と「汝」、ジョージ・ハーバート・ミードだと、アイ(I)とミー (Me))の関係である
「われわ れはみな、甲胃を身にまとい、われわれに生ずるしるしを近づけぬようにしている。 しるしはたえず生じている。生きていることは、語りか けられていることであり、われわれはただこのしるしに立ち向かい、これに耳を傾けることだけが必要である。しかしこの冒険はわれわれにとって非常に危険な ものである。音のない雷は、われわれに破滅の威嚇をなすごとく見え、それゆえ、われわれは世代ごとに防禦の備えを完全なものにしようとする。われわれの知 識は、つぎのような確信を与える〈落着きなさい、すべては必然的に起るべくして起る。何もあなたに向けられているのではない、あなたがねらわれているので はない。まさにこのようなのが世界である。あなたは自分で望むままに世界を体験することができる。しかしあなたが心の中でいつも思っていることは、すべて あなたから生ずるのである。あなたは何も要求されず、だれもあなたに語りかけず、すべては静かである〉と」(ブーバー 1979:189)。
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