On Smart office, Smart University and Smart City: Concepts and Plans
池田光穂・松浦博一・宮本友介
◎ このページは、ダイキン工業株式会社による「基礎検討フェーズ報告書・研究テーマ提案」から「2020年度共同研究委受託研究」のフィージビリティ調査研究である。調査研究班は、池田光穂・松浦博一(大阪大学COデザインセンター教員)と宮本友介(大阪大学大学院人間科学研究科)である。
命
題07:理想のスマートキャンパス
スマート・キャンパス(smart
campus)とは、IoT(アイオーティー)を媒介(メディア)にして、大学がおこなう教育・研究・社会貢献などを実現している新しい大学キャンパスと
キャンパスの中での学び方・働き方のことである。したがって、スマートキャンパスは、物理的な大学のキャンパス(敷地)のことをさすのみならず、そこを舞
台に活躍する学生・大学院生・教職員と、彼/彼女/クイアらが接続するさまざまなデバイスから構成される仮想空間までがスマートキャンパスに含まれる。
いきなり私企業のホームページからの引用で心苦しいが、スマート・オフィスの思想を示唆する洒脱な表現があったので引用させてもらおう:(意訳)
「あるスマート・オフィスは、心のなかにひとつのことをデザインするだけで生まれます:つまりあなたの仕事の現場の可能性を最大限に引き出すということで
すね。それは高度に複雑奇怪な科学(rocket-science)というものではありません。要するに(just)、あなたの職場の人たちの必要性に
フィットするためにあつらえた、イノベーティブな発想と新しいテクノロジーのことなのです。さあ、スマートになりましょう!」
以上のことから、もしスマート・オフィスに哲学や思想があるとすれば、それはおよそ次のようなことからなりたつ。(1)仕事の場をよくしたい(効率良く
運営する、高い生産性、ストレスがない、愉しい、など)という思いや気持ちがある。(2)「私たちが考えるかのように」("As we may
think")職場が改善されたいという志向性にもとづいた具体的アイディアがある:"As we may think"はVannevar
Bushの言葉である。(3)それらの発想や具体的アイディアを支える/支えようとするテクノロジーがあり、それらに支えられている。このテクノロジーと
は手順やプログラムなどのソフト・テクノロジー(柔らかい技術)とICT端末などに代表されるハード・テクノロジー(固い技術)の両方がある。(4)1か
ら3までの手順を包括し、スマート(手早くという意味のほかにかっこいいという意味がある)にするための「美学」がある。つまり、スマート・オフィスに
は、効率性を追求しながらも、かっこよさを失わない、いわゆる「情熱の美学(estetics of your own
passion)」が満ちあふれている。
スマート・ビジネスと言う言葉が、スマート・フォン(smartphone)と関連づけられた使われるように、スマート・オフィスに携帯型のICT端末は 欠かせない。それは、その現場(クルト・レヴィンの用語では「場=フィールド」)にいない人とのコミュニケーション、あるいはインターネットあるいはアク セス可能なクラウドデータベースなどの情報資源などが、有機的に繋がって、旧来のファクトリー(工場)型のオフィスとは水と油ほど異なる、開放的で自由な オフィスのこと指すのである。まとめよう。スマート・オフィスとは、ICT技術を最大限に使い、創造的な仕事や開発(研究も含まれます)をストレスなく、 自由に愉しく、かつ有意義に過ごせる場所、と言っても差し支えないだろう。
しかし、批判力や反省にもとづく判断力は重要である。例えば、クラウドリソースを前にした社会学者の教師は、学生に対して、そのソースの信頼性の担保をど こに求めよと教育するだろうか。クラウド技術のインターネットアーキテクチャーを教えるべきだろうか、あるいはグーテンベルグ以来の書物という情報の蓄積 の歴史とデジタル化について一コマを割いて教育すべきだろうか。さらには、文献批判・資料批判によってテキストの確からしさの方法をきちんと身に付けるべ きだろうか。最大の問題は、クラウド・コンピューティングの時代を空気のように吸っている学生の世代と、それを若いときに経験したことがない教師のICT 理解の方法が根本的に変わっているかもしれない。
スマート・オフィスやスマート・キャンパスという定義を、市井の人々の生活の場に展開すれば、子供でも猿でも自明になるが、スマート・シティの定義とは、
ICT技術を最大限に使い、創造的な仕事や生活をストレスなく、自由に愉しく、かつ有意義に過ごせる市民の居場所としての街のことになる。したがって、
キャンパスの中だけをスマートにして、門からでれば、そのICTリソースを利用できない、あるいは、キャンパスでかからなかった無料な環境が、ハゲタカの
ような通信会社の餌食にされてしまうことであれば、そのスマート・キャンパスの思想は、一国社会主義と変わらない。スマート・オフィスからスマート・キャ
ンパスそして、スマート・シティ、スマート・アーバン、スマート・ルーラル、そしてスマート・グローバルな環境は、つねにシームレスであるべきなのだ。
●ク
レジット:07:「空 気と空間づくり」から考えるイノベーション・キャンパスの実現:理想のスマートキャンパス
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